シャローヴァナルとの建国祭午後⑪
羞恥心というのはなかなかどうして不思議なものだ。現在の俺たちの状況は、俺とシロさん以外の時間は止まっているので、それこそ俺やシロさんがなにをしたとしても周囲の人たちには見えないし気付かない。
そのはずではあるのだが、これだけ周囲に人が居る状況だとなぜか注目を集めているような気がして恥ずかしくなってしまう。
とはいえ、両手を広げてハグ待ちの姿勢になっているシロさんをこれ以上放置もできないので、意を決して一歩近づき、そっと背中……少し腰に近い位置に手を回して抱き寄せる。
シロさんの服装が変わっていることも影響してか、伝わってくる感触が少し変わっている。スカジャンも結構手触りがいいのだが、問題は前面である。
シロさんはスカジャンを羽織っている感じで、前は開けておりシャツ一枚だ。先ほどまでの服より肌の感触が強いというか、俺の胸に押し付けられるシロさんの豊満な胸の感触がハッキリと伝わってきた。
あとなんだろう、匂いも違う気がする。さっきまでの少し甘い感じの匂いでは無くて、透き通るような爽やかな柑橘系の香り。
そして、いつも思うがこの抱き心地の良さというか、抱きしめた時の心地よさは本当に癖になりそうで恐ろしいものがある。
シロさんの要望とかを考えればここでキスとかをした方が良さそうだが、もう少しこうしてシロさんを抱きしめていたいという気持ちもある。
「まったく問題ありませんよ。もっとギュッと、ねっとりたっぷり抱きしめていいんですよ?」
「ねっとりたっぷりって……まぁ、それは置いておいて、なんかこう抱き合いながら話すってのも変な気分ですね。いや、別に嫌とかではなくむしろこれはこれでいいなぁって思いますけど」
「同意します。こうして密着して会話をするのも非常にいいです。イチャラブ感が高い気がします。今後は適時この形になるのはどうでしょう?」
「い、いやそれは気恥ずかしいというか……」
「大丈夫です。私は気にしませんし、必要なら世界の時間は止まります」
「とんでもないこと言ってる!?」
抱き合ったままで他愛のない会話をするというのは、少し違うパターンではあったが……本当になんか、温かくて心地いいので、今現在進行形で心地よい気分を味わいつつも、またこうしたいという気持ちが湧き上がってくる。
とはいえ、それを口にしたらシロさんは嬉々として事あるごとに要求して起きそうなので、胸の内に秘めておく。いや、シロさんは心が読めるので無意味ではあるのだが、胸の内に秘めておけばある程度は配慮してくれる気がする……たぶん。
「おや?」
「あ、すみません。ついなんとなく」
「いえ、むしろいいです。続行してください」
「あはは、了解です」
シロさんを抱きしめたままで、無意識に手が動いてシロさんの後頭部を撫でていた。シロさん的にはむしろ推奨行為のようで、続行を希望してきたのでそのまま続ける。
ポニーテールなので髪が乱れたりしないように、優しく表面を撫でるような感じだが、シロさんの手触りのいい髪の感触がなんとも心地よい。
首元にかかる吐息も、くすぐったくはあるのだが……なんかこう、シロさんが愛おしいって気持ちが強くなって抱きしめる手に力が籠ってしまう気がした。
「……う~ん。シロさん、もうしばらくこうしててもいいですか?」
「はい。快人さんの好きなだけ……心行くまで。いまは文字通り、この世界の時間は私と快人さんのためだけに存在してますから……」
俺の言葉にどこか楽し気に答えたシロさんは、俺の首筋に軽く触れるようなキスをしてきた。それがなんとも愛おしくて、思わず口角が上がる感触を誤魔化すように、同じようにシロさんの首筋にキスをした。
シリアス先輩「くそっ! くそっ! こいつら、本当にずっといちゃいちゃしてやがる!!」
???「区切り的に、次は夕方に移行ですかねぇ……」




