シャローヴァナルとの建国祭午後⑧
新進気鋭のロックバンドであるドラゴンソウル……俺から見えれば、どう見ても仮面被っただけの四大魔竜の三人なんだが、たぶんだけどこれは認識阻害魔法があるパターンだ。
シロさんの祝福がある俺には四大魔竜の方々に見えているが、一般人には普通にロックバンドのメンバーのように見えているのだろう。
……だとすると仮面はなんだろうと一瞬思ったが、そういえば認識阻害魔法は術者の技量にかなり左右される魔法だったということを思い出した。
アリスが使えばそれこそ六王でも簡単に気付くことはできないレベルではあるが、あまり得意でない人が使えばそれなりの実力者であれば気付くことも多いらしい。
フレアさんとかは認識阻害魔法はあまり得意そうなイメージはない。なので、いざ違和感を覚えられても簡単に正体がバレないように仮面も合わせて装着しているのだろう。
「けど、ロックライブのこの雰囲気はなんかいいですね。熱気があるというか、ワクワクするというか……」
「そうですね。ところで快人さん、なにか言うべきことがあるのでは?」
「うん? ――また変わってる!?」
演奏準備をしている間に聞きやすい場所に移動しつつシロさんに声をかけると、意味ありげな言葉が聞こえて視線を動かす。
するとシロさんの服がまたガラッと変わっており、皮のズボンにスカジャンというロック感あふれる格好に変わっていた。髪もポニーテールになっていて、先ほどまでとはまたガラッと雰囲気が変わっている。
「……けど、やっぱりシロさんは何着ても似合いますね。背も高めで足も長いので、そういう恰好もカッコよくていいですね」
実際シロさんは俺と同じ身長なので女性としては背が高めであり、更に足が長いのでパンツスタイルもかなり似合う。その上スタイルも抜群なので、本当にカッコよくていい感じだ。
なんというか、今日はシロさんが度々服装を変えるので、驚きもするが……いろんな雰囲気のシロさんを見れるのは、新鮮で楽しかった。
「快人さんも気に入ってくれたようでよかったです。それでは……」
「もう少し褒めたいところですが、もうライブが始まるので、また後程ということで……」
「ふむ。分かりました。では、あとでたくさん褒めてもらいましょう」
ここまでの流れで、褒め言葉のおかわり要求が来るのは察することができたので、先んじて断りを入れておいた。
シロさんとしてもゆっくり時間のある時に褒めた方が嬉しいだろうし、俺の提案は問題なく了承された。
そんなわけで、俺とシロさんはスタートしたドラゴンソウルの演奏を聞く。
まずギターボーカルでリーダーポジションのエインガナさんは、高身長で目立つ上にギターの演奏技術も歌も超一流。綺麗な声で荒々しい本格的ロックを見事に歌い上げており、会場は大盛り上がりだ。
フレアさんはその小柄な体からは想像もできないほどダイナミックにドラムを演奏しており、相当の迫力がある。俺に細かなドラム技術はわからないが、かなりの腕前のように見える。
フレアさんは努力家という言葉が生ぬるいほどの鍛錬の鬼なので、たぶん相当練習したのだろう。
ファフニルさんは、非常に安定した演奏で個性の強いエインガナさんとフレアさんの演奏を見事に支えており、非常に安定感のある演奏だった。
派手さは無いが土台をしっかり支えている印象で、その堅実さがなんともファフニルさんらしいとも思えた。たぶんファフニルさんは巻き込まれた形だろうけど、基本的にまじめな性格の人なので練習もかなりしたのではないだろうか?
そんなことを考えつつ、3人の演奏で盛り上がる観客席に視線を向けると……ふと、見覚えのある人物……少し前に知り合ったばかりの大海神マリンさんの姿が見えた。
観客として見学しているというよりは、たぶん神族の配置上そこにいる感じで、盛り上がる観客からは少し離れた場所に立って微笑みを浮かべていた。
うん。間違いなく微笑みだ……微笑みを浮かべて、ステージを見ている。気のせいか、額に青筋が浮かんでるし、目や口元がピクピクと怒り堪えるように動いているように見えるが……気のせいだと思いたい。
シリアス先輩「ここで登場ということは、次回あたりにエインガナとマリンの関係性が判明する可能性が高そう」
 




