シャローヴァナルとの建国祭午後⑥
シロさんと謎の廊下空間でしっかりとイチャイチャしたおかげか、建国記念祭に戻るころにはシロさんは非常に上機嫌な様子だった。
まぁ、シロさんが喜んでくれたならこちらとしても頑張ったかいがあった……けどやっぱ、ああいう強引系は俺には不向きな気もする。
「さて戻りますか、快人さん次はどのあたりに行きますか? あのまま露店を見ますか?」
「あ~でも、露店は十分見ましたし次の場所に移動したいですね。人が多いので移動には少しかかるかもしれないですが……」
「それでしたら問題ありません。この空間から戻る際に場所を変えましょう……露店のところから比較的近く、大き目の広場で構いませんか?」
「あ、いいですね。広場ならなんかイベントとかもありそうですし」
亜空間から戻る際に場所を調整して移動してくれるみたいで、人混みの中で移動することなく次の場所に行けるのは正直ありがたい。
屋台グルメは楽しんだし、露店で雑貨などもいろいろ見たので、次はやっぱりなにかしらのイベントを見たいところである。
アリスと行った際の海竜行進とかみたいに、首都全体が会場ということもあってあちこちでいろいろなイベントをやっているみたいなので、結構楽しみだ。
そんなことを考えながらシロさんと一緒に建国記念祭の会場……シロさん曰く、先ほどの場所から比較的近く大きな広場に移動すると、直後に聞こえてきたのは体が震えるような大音量の音楽だった。
驚きつつ視線を音の方に向けてみると、広場の奥に大きなステージがあり、その上で演奏が行われている感じだった。
……これはもしかして、ライブか!? お、おぉ……凄い。この世界で結構音楽が発展しているのは知っていたし、ハーモニックシンフォニーのような音楽の祭典もあるわけだし、こんな風にライブというか……音楽フェスのようなものがあっても不思議ではない。
だが、実際に見ると感慨深いものがある。それにこの音楽は間違いなくロックであり、この手のジャンルの曲はこの世界では初めて聞いた。
……いや、いちおう誕生日のカラオケの際に、葵ちゃんと陽菜ちゃんペアのためにアリスが演奏していたが、アレはアリスなので別枠としてカウントしていた。
ただ、よくよく考えてみれば、その際にも他の皆も普通にロック調の音楽を受け入れていたし、そういうジャンルも知っていたんだと思う。
単純に俺がこの世界に来てから触れる機会が無かっただけだろう。ハーモニックシンフォニーとかでもあったのかもしれないが、あのイベントの音楽はどっちかというとクラシックやポップ寄りだったので、ロックは無かった可能性もある。
「凄い賑わいですね。音楽のイベントっぽいですし、シロさんさえよければ聞いていきましょう」
「ええ、問題ありません」
俺は結構ロックとかも好きではある……が、テレビの音楽番組で見たり、流行の曲はCDを買って聞いたりした程度で、ライブとかを見たことは無い。
なんというか、実際にライブ会場に足を運んで音楽を聴くのはハードルが高い気がして敬遠していた……そもそも、友達が居なかったというのもあるが……。
と、ともかく、こうして実際にライブを見てみるとその迫力に圧倒される。会場となっている広場の賑わいも相まって、気分が盛り上がってくる。
『さあ、会場のボルテージは最高潮! 続いては、新進気鋭の人気3ピースバンド! ドラゴンソウルだ!』
俺たちが来た際に演奏していたバンドの曲が終わり、次のバンドの名前が呼ばれると大きな歓声が聞こえてきた。どうやら相当人気のあるバンドらしい……これは楽しみだ。
そう思ってステージ上に目を向けると、ドラゴンソウルというバンド名故かは分からないが、竜を模したと思わしきヘルメットっぽい被り物を被った3人が壇上に上がった。
被り物によって顔は見えないが、2mを優に超えていそうな長身のギターボーカル、対照的にかなり小柄なドラマー、体型的に男性っぽいベースという組み合わせだった。
……いや、ちょっと待って? あれ、四大魔竜の方々では? エインガナさんとフレアさんとファフニルさんじゃ……い、いったい何してるんだ? というか、あの三人バンド組んでたの!?
シリアス先輩「なんとなく私の予想だけど、これファフニルは他ふたりに強引に参加させられた感じでは? 新進気鋭って言ってるわけだし、ハーモニックシンフォニーが終わった後とかに結成したんじゃ……」




