シャローヴァナルとの建国祭午後①
昼食を食べて軽く昼寝をしたあと、再びシロさんと共に建国記念祭に参加する。そろそろ議院前広場ではノインさんのメッセージが公開されたころだろうか? まぁ、俺とシロさんはそっちの方向に行く予定は無いので、議院前広場とは違う方向に進む。
そうして辿り着いたのは、なんというかフリマというか露店広場のような場所だった。食べ物などの屋台ではなく、アクセサリーや骨董品などを売っている感じで、これはこれで楽しそうな雰囲気だ。
「結構いろいろなものが売ってますね」
「これはアレですね」
「アレ?」
「快人さんが、私に似合うアクセサリーを見つけてプレゼントしてくれる流れですね」
……滅茶苦茶ハードルの高い要求をしてきた!? いや、シロさんにアクセサリーをプレゼントするのは全然かまわないが、シロさんに似合うアクセサリーとなると一気に難易度が上がってくる。
なにせシロさんは、文字通り神がかり的な美女であり並大抵のアクセサリーではシロさんの美貌にアクセサリーが負けてしまう。
「……さ、流石にそれは難易度が高すぎる気がします。シロさんに似合うアクセサリーというか、シロさんの美貌に負けないアクセサリーがこの露店で見つかるとは……それこそ、一から作った方がまだ似合うアクセサリーが出来そうな気がしますね」
「……なんと、そこまでは期待していませんでしたが、とても嬉しい申し出ですね」
「へ?」
「では、楽しみにしています」
あれ? おかしいぞこれ、なんか変な流れ……まさか、俺がシロさんにアクセサリーを作ってプレゼントするような話になった!? いや、むしろ難易度上がったんだけど!!
というか、前に一回作って渡しましたよね?
「それはそれ、これはこれです」
言い切っている。迷いのない表情で、しかもウキウキと楽しそうにしながら言い切ってきた。う、う~ん。仕方ない。こればっかは、迂闊なことを言った俺が悪い。
「いや、でも、俺に本格的なやつは無理なので、前みたいにアリスの用意してくれたキット的なのを使って作ることになりますよ」
「ええ、構いません。店に売っているものを贈られるより、私としてはそちらの方が何倍も嬉しいです」
「うぐっ、そう言われると……はぁ、分かりました。頑張ってみますので、あんまり期待し過ぎないでくださいよ」
「ふふ、はい。ありがとうございます、快人さん」
そんなに嬉しそうな顔をされたら、頑張らないという手はない。前はネックレスを作ったから、今度はブレスレットとかブローチとか、そんな感じのに挑戦してみよう。
まぁ、例によってアリスに頼ることになりそうだが、その辺はアリスの分もちゃんと作るとか、そういう条件で協力してもらおう。俺ひとりじゃ絶対無理だし……。
「ま、まぁ、それは置いておいて、いろいろ見てみましょうか」
「そうですね」
とりあえずアクセサリーに関しては、また建国祭の後で考えるとして、いまは露店を見て行こうと思う。本当に多種多様だが、フリマほど雑多という感じではなく店ごとにある程度まとまっている感じだ。
特になんの気なしに最初に立ち寄った露店には絵画が置いてあり、いろいろな絵が並べられていた。
しかし、う~ん。正直俺にはやっぱり芸術はよく分からない。綺麗な風景画とかは分かるが、複雑な芸術はお手上げである。
風景画の何倍もするような金額の絵とかを見ても、どこがどう素晴らしいのかよく分からない。ロズミエルさんとかには分かるかもしれないが……。
そんなことを考えつつ、隣に居たシロさんに小声で話しかける。
「シロさんは、あの絵の良さとか分かります?」
「さぁ? 他との違いが分かりません」
「ですよね……他の店にしますか……」
シロさんも興味は無さそうというか、本当にまったく違いは分かってない感じだった。まぁ、確かにシロさんは俺以上に芸術とかは分からない気がするというか、そもそも興味ゼロだと思う。
とりあえず早々に次の店に移ることにして、隣にあった店を見てみると、そこは本などを置いてあるみたいだった。古本という感じではなく、普通に新品の本っぽい。
ハイドラ王国の地理とか観光名所が書かれたガイドブックが見やすいところに置かれているので、観光客をターゲットにした観光案内の本を売っている店なのかもしれない。
そう思いつつ視線を動かしていると「カップルにオススメ! ハイドラ王国デートスポット10選」と書かれた雑誌があった。
「快人さん、アレを買いましょう」
「なんとなくそんな気はしましたが、そうですね。確かにハイドラの観光名所には疎いので、買ってみるのもいいかもですね」
建国記念祭の日に実際に観光名所に行けるかどうかはさておき、とりあえずこの手の雑誌は見てて楽しいので購入することに決めた。
まぁ、もし行けそうな場所があったら、シロさんと行ってみるのもいいだろう。
シリアス先輩「……午後……だと……?」




