シャローヴァナルとの建国祭昼⑫
ゆっくりと意識が浮上していく感覚がある。なんというか、意識ははっきりしてきているけど、まだ心地良いまどろみの中に居たくて目を開けるのが少し億劫な感じだ。
そう思っていると不意に唇にぷにっと柔らかいものが触れる感触があった。唇が吸い付くような心地良い柔らかさで、どこか甘さも感じるような気がして、ほんのり感じる温もりがなんとも心地よい。
……いや、待て、なんだこの感触? 寝ぼけていた頭がハッキリしてくると共に、なにが触れているのかが気になってきて、ゆっくりと目を開けると……。
「ッ!?!?」
目を開けた瞬間は、なにか分からなかったが……すぐに唇の感触が消えて、その後にゆっくりと離れていくシロさんの顔が見えたことで、先ほどの感触がキスであったことを理解して、驚愕と共に頭が一瞬真っ白になる。
「起きましたね。おはようございます」
「あ、え? お、おはようございます……え?」
ビックリした。ちょっとマジで、あまりにも不意打ちだったせいで本気で驚いた。寝起きでいきなりアップでシロさんの顔を見たこともそうだが、キスと理解した瞬間に頭に血が集まったような感じだ。
いや、冷静になってみればシロさんがなにをしたのかは理解できた。つまりキスをして俺を起こすということをしたわけだ。
実際、ある程度意識が覚醒してきてから唇にはキスの感触があったわけだし、俺が起きたのに気付いてキスをした可能性が高いと、いま考えればわかる。
「……いや、本当にびっくりしました」
「ふむ。サプライズ成功ですね」
「サプライズ……う~ん。まぁ、サプライズといえばサプライズですね」
そう言って苦笑しながら体を起こす。少し落ち着いたとはいえ、ビックリして体が火照ったせいか海風が気持ちいい。
「……俺どのぐらい寝てました?」
「30分ほどですね」
「30分の割には、かなりぐっすり寝れた気がしますよ」
「ふむ。寝心地がよかったと?」
「え? そ、そうですね。かなり、よかったと思います」
「寝覚めの気分もいいと?」
「ま、まぁ、不意打ちにはビックリしましたが……そうですね」
「また私に膝枕をしてほしいと?」
「……………‥まぁ、してもらえるなら」
「なるほど、予約されました。次の機会を楽しみにしておいてください」
「あ、はい」
いつそんな話になったのか分からないが、有無を言わせぬ圧力に思わず頷く。いや、確かにシロさんの膝枕は癖になりそうな寝心地だったし、いまも本当に寝覚めはよく気分もスッキリしている気がする。
またやってもらいたいかと言われれば……まぁ……やってもらいたい。
「あ~えっと、じゃあそろそろまた建国祭に行きましょうか」
「そうですね……ただその前に……」
「うん? な――ちょっ!?」
呟いてすぐにシロさんはスッと俺の肩に触れ、俺の体を抱き寄せた。もちろんシロさんの力に俺が叶うわけも無く抱き寄せられると、そのままシロさんは素早くキスをしてきた。
再び感じる柔らかく心地よい感触に、頭の後ろに回された手が頭を撫でる感触。どこか母性を感じるような温もりに蕩けそうな感覚を味わっていると、少ししてシロさんは顔を離した。
「……さっきのは、おはようのキスと分かるんですけど……このキスはなんのキスでしょうか?」
「ただキスがしたかっただけです」
「な、なるほど……今日はやけに不意打ちをしてきますね」
「ふふ、たまにはそういうのもいいでしょう?」
「まぁ……そうですね」
そう答えつつも、なんか続けざまにしてやられている感があったので、軽い反撃として……微笑んでいたシロさんにこちらからも不意打ちのキスをした。
軽く唇に触れるだけのキスだったが、予想外だったのかシロさんは少しだけ目を見開いた。
「……反撃ということで」
「ふむ。驚きましたが、得をしました。もっと反撃してくれてもいいですよ? すれば私が喜びます」
「キリがないので、とりあえずいまは祭りに行きましょう」
どことなく楽し気なシロさんに、俺も思わず微笑み返し、なんとも言えない幸せな気持ちと共に建国記念祭に向かうために立ち上がった。
シリアス先輩「ぐあぁぁぁぁ、こ、コイツらいちゃつきやがって……くそっ、くそっ……」
???「これ、次はなんなんでしょうね『夕方』か『夜』か……」
シリアス先輩「夜! 夜で!!」
???「あっ、じゃあ夕方っすね……」
シリアス先輩「なんでぇ!?」




