シャローヴァナルとの建国祭昼⑩
埠頭に現れた謎の芝生スペースもとい、シロさんが用意した弁当スペースにレジャーシートを敷いて座る。丁度おれがマジックボックス内に入れていたので、シロさんに創造して貰ったりする必要はなかった。
なんというか、周囲に人が居ないのは助かった気分である。埠頭で芝生の上にレジャーシート敷いて弁当食べている光景は、中々にシュールな気がする。
そういえば、シロさんが弁当を用意してくれたわけだけど、どんな弁当なんだろう? レジャーシートで食べるイメージだと、花見とかの重箱の弁当をイメージするが、流石にふたりでは多すぎる。シロさんのことだから、なにか意表を突くような弁当である可能性も……。
「では、こちらが用意した弁当です」
「ありがとうございます」
シロさんが差し出してきたのは、普通の弁当箱。特に変哲は無く、サイズ的にも昼食に適した大きさで、重箱とかというわけでもない。
ふたを開けてみると……なるほど、こうきたか……。
シロさんが用意した弁当には、桜田夫が使用されているのか大きなハートが描かれており、一目見てなにを参考にしたのか分かりやすい。紛れもない愛妻弁当だった。
チラッと、シロさんの方を見ると満足気な……やり切った感ある表情をしている。ちなみに用意されている弁当は俺のものだけでシロさんの物はない。
「いや、まぁ、愛妻弁当っぽい見た目というのは置いておいて……なんか凄い綺麗というか、本当に恋愛漫画から飛び出てきたような、これぞ愛妻弁当って感じの見た目ですね」
たぶんこれ、参考資料の見た目のまま創造したとかそんな感じかな? 創造はなんかちょっと反則な気がしないでもないが、手作りという意味では間違いはない。
「ああ、いえ、普通に作りました。創造したわけでは……いえ、材料は創造しましたね」
「え? じゃあ、材料から作ってこの完成度……凄いですよ! こんな綺麗にできるものなんですね!!」
「快人さんが喜んでくれて、私も嬉しいです」
あまりにも完璧な見た目なので、てっきりこのまま創造したのかと思っていたが、材料を創造して手ずから料理したみたいだ。
ハートの形とかも綺麗だし、おかずとかも本当にプロの仕事と言われても納得するほどに完璧な上に、色の配分というのか全体的なバランスもいい。ちょっと感動するほどの完成度である。
「これは食べるのがもったいないぐらいですが、せっかくシロさんが用意してくれたものなのでありがたくいただきますね……あれ? 箸とかは?」
「ここにあります」
「ああ、ありが……シロさん?」
シロさんの言葉に振り返ると、シロさんは箸を構えた状態で空いた手を差し出していた。なんだろうこれ、嫌な予感がする。
だって、シロさんの姿勢的に明らかにこっちに箸を渡す感じではない。シロさんは自分の分の弁当を用意はしていないわけだし、自分が食べるために箸を使うというわけではない。
さらに差し出してきているては、「弁当箱をよこせ」という感じである。だが、弁当箱を渡したとして、シロさんが食べるとは考え辛い。そうなると……。
「私が快人さんに食べさせるので、弁当箱を渡してください」
「……なんかそんな感じはしたんですが……え? 全部!?」
「はい。いまの私は、快人さんを甘やかして尽くすモードなので、食べるのは全て私に任せてください。問題ありません。快人さんがなにも言わずとも、どういう順番でなにを食べたいかは、読み取ることができます」
謎のモードに入っていらっしゃる。こ、これは、本当に周囲に人が居なくて助かった……いや、まぁ、気恥ずかしいというところを除けば、恋人にそういう風に食べさせてもらうのが嫌なわけではないし、嬉しいとも思える。
「はい、快人さん。あ~ん」
「い、いただきます」
ま、まぁ、人目はないわけだし、シロさんが甘やかしモードというなら……多少甘えるのも、いいのではないだろうか? 結果としてシロさんのイチャイチャしたいという要望を叶えることもできるわけだし……などと、己に言い聞かせるように考えつつ、優し気な表情のシロさんの厚意に甘えることにした。
シリアス先輩「うっ、こういう甘酸っぱいのも、ボディブローのように深く効いてくるんだよなぁ……キツイ」
???「大丈夫です。区切り的にあと2話分昼食~その後で使う感じでしょうし、食後にイチャイチャするんでしょう! 安心してください!!」
シリアス先輩「……どこに安心しろと?」




