シャローヴァナルとの建国祭昼⑨
大海神さんに案内されて、道を進む。大海神さんはシロさんの案内ということもあって、かなり緊張している様子で歩いている姿もどこか固い印象を受けた。
「えっと、大海神さんとお会いするのは初めてですよね? はじめまして、宮間快人です」
「これは、ご丁寧にありがとうございます。大海神、名をマリンと申します。どうかお見知りおきを」
とりあえず初対面ということもあって軽く挨拶をしてみる。名前を教えてくれたということは、名前で呼んでも構わないということだろうし、今後はマリンさんと呼ばせてもらうことにしよう。
現状はシロさんの前ということもあって緊張しているだろうし、あまり人となりとかは分からない。かといって、気軽に雑談というのも難しいとは思うので、そういったのはまた縁があれば行おう。
アリスいわく影が薄いということだが、パッと見た限りそんな風には見えない。いや、確かに海の神っぽさはないので、スカイさんやガイアさんと比べると見た目では何を司っている神か分かりにくいというのはある。
そんな風に思いながら歩いていると、少し離れた場所から賑やかな音楽が聞こえてきてそちらに目を向けると、少し離れた通りで海竜を模した飾りが動いているのが見えた。
ああ、海竜行進か……今回は見る予定は無いが、少し離れた場所から見てもあの海竜の飾りは大きいな。まぁ、実際のエインガナさんもかなり巨大なのである意味では上手く再現が出来ているとは思う。
「……海竜行進」
それは本当に囁くような小さな声だったが、聞こえた声に導かれるように視線を動かすと、マリンさんが少しだけ視線を海竜の飾りに向けていた。
表情は穏やかな微笑みを浮かべており優し気な感じだったが……感応魔法はなんとも言えない感情を読み取っていた。そしてマリンさんは、そのまま微笑みを浮かべた表情のままで小さく呟いた。
「……あの海ヘビ……月夜ばかりと思うなよ……」
怖っ!? ……うん。どうも、自分を差し置いて海の神扱いされて有名なエインガナさんに対して、いろいろと思うところはあるみたいだ。
……聞かなかったことにしよう。あまり触れるべきじゃない話題な気がする。
マリンさんに案内されて到着したのは、雰囲気的には埠頭とでもいった感じでシロさんの要望通り海がよく見え、遠方には船も見えたりとなかなかの絶景である。
不自然なまでに周囲に人が居ないのは、いまさらツッコむまい。けど、この明らかに海を見ながら弁当を食べるのに適してます的な感じで置かれている木造りのベンチは、ちょっと作為的過ぎやしないだろうか?
まぁ、それだけ神族のサポートが徹底しているということでもあるだろう。皆さんの努力がうかがえて、同時に本当に大変そうだというのが伝わってきて、なんだか目の奥にジーンと込み上げるものがあった。
「では、弁当を食べるためにレジャーシートを敷きましょう」
「……」
そしてそのサポートを意に介さず無に帰すのが安定のシロさんである。これ見よがしに置かれているベンチは完全にスルーして、レジャーシートを敷いた上で食べるらしい。たぶんシロさんが参考にした恋愛漫画のシチュエーションでは、ピクニックかなにかをしていたのだろう。
「あの、シロさん? ここにレジャーシートはきつくないですか?」
だが、草原とかにピクニックに来ているのではないのだ。港町の埠頭っぽい場所ということもあって、足元はしっかりしている。というか、コンクリートみたいにがっちりした地面である。
ここにレジャーシートを敷いて座るのは、足とか尻が痛くなりそうだ。
「なるほど、確かに言われてみれば地面の状態が適していませんね」
「ですよね! なので、せっかくですしこのベンチを――」
「では、一部『地面を芝生に変えましょう』」
納得したように頷いたシロさんが軽く手を振ると、俺たちが立っている周囲が不自然に青々とした芝生に変わった。
なるほど、これならばレジャーシートを敷いて弁当を食べるのに適している。うん、えっと……こと事だけ突っ込んでもいいかな?
――違う、そうじゃない。
シリアス先輩「安定の天然神。よ、よし、今後もこう言う感じのギャグテイストで行こう? な? な? それがいいって……別に、一緒に食事だからってイチャイチャする必要があるわけじゃないからね! ね!!」
???「無駄な足掻きすぎますね」




