シャローヴァナルとの建国祭昼⑦
さて再び止まったゴンドラを動かすためシロさんの要望を叶えることになったわけだが、えっと……これは普通にキスをすればいいのかな?
「……ふむ」
あっ、待った。考えるような表情にならないで……普通ので、普通のやつでいきましょう! ただでさえシロさんとのキスはとてつもなく気持ちがよくて危険なわけだし、変に捻ったのがこられると厄介だ。
たぶんいま、事前に呼んだ恋愛漫画とかからよさげなシチュエーションを考えているのだろうが、このパターンは突拍子もないことを言い始める前振りでもあるので、早々に手を打たないと危険である。
「シロさん! こういうのは、参考資料とかそういうのに頼るべきじゃないと思うんですよ。大事なのは愛情というか、他に流されずに自分たちらしくやれた方がいいというか……えっと、自分で言ってて若干分からなくなってきましたが、いったん参考資料のことは忘れましょう!」
「ふむ、つまり快人さんが、愛情をこめてねっとりたっぷりイチャラブキスをしてくれると?」
「……ねっとりたっぷりではないですが、愛情はしっかり込めますので……」
「なるほど……でしたら、リードをお任せします」
割と強引ないい分ではあったが、シロさんは了承してくれたようでキスに関しては俺のやり方に任せてくれるとのことだった。
……いや、これはこれで結構ハードル高いな!? ど、どうしよう? このまま普通に抱き寄せてキスではなく、少し捻った感じのを期待されている気がする。
というか、現時点でゴンドラの席に隣通しに座ってるので結構距離は近く、意識しているせいかシロさんの柔らかそうな唇がやけに鮮明に見える。
どうするべきか悩みつつ、俺は手を伸ばしてまずはシロさんの腰に手を回して抱き寄せる。コレは先ほど好きという時にしたのと同じ感じだ。
実際密着度はかなり高いし、イチャラブという条件にも結構当てはまってる気がする。
そして残った手はシロさんの頭ではなく顎に添え、クイッと軽く顔を俺の方に向かせる。いわゆる顎クイというやつではあるが、腰抱いたシチュエーションでやるとキザっぽい気がしてちょっと恥ずかしい。
いやでも、こういうちょっと強引な雰囲気はいつもと違う感じだし……これでなんとか満足してもらいたいものだと、そんな風に考えながら腰を抱いていた手をシロさんの背中まですべらせ、その体をさらに強く抱きしめながら唇を重ねた。
「……んっ」
相変わらず蕩けそうなほどに柔らかく、少し甘い感じがするシロさんの唇は心地がよく、しっかりと気を保っておかなければ夢中になってしまいそうな快感をもたらしてくる。
そのまましばらく脳が蕩けるような心地良さの中でキスを続け、ある程度経ってから唇を離した。
「……えっと、その……どうでした?」
「快人さんが少し強引な雰囲気なのは、普段と違っていいですね。とても気に入りました」
「そ、それならよかった」
「では、あと99回お願いします」
「……嘘でしょ?」
え? その100回ってさっきの好きっていうやつと同じ感じのだよね? いやいや、なに100回をデフォにしようとしてるんだ!!
さすがに、キスを100回は……あまりにも大変というか、時間がかかるし、シロさんとのキスは気持ちよさ過ぎて本当に頭がクラクラするので、あまり多用は危険というか……。
「……じ~」
期待する目で見ている。物凄く期待する目で、自分の口で「じ~」とか言いながら見つめてくる。ぐっ、ど、どうすれば……無下にするのも気が引けるし、かといって100回は……。
「……10回で、手を打ちません?」
「では、あと9回お願いします」
とりあえず妥協案を提案してみたが、シロさんは思いのほかアッサリと了承した。これ、もしかして上手く掌で転がされたか? 最近のシロさんなら、ここまで全て計算と言われてもあり得そうな気もする。
「快人さんといっぱいキスをしたいのは本当ですよ。とても幸せなので」
「うぐっ、だからそういうストレートなのはズルいと思います……はぁ、あと9回ですからね。その後は、もうゴンドラ止めないでくださいよ」
「分かりました」
嬉しそうなシロさんを見て、軽くため息を吐きつつ……まぁ、それでも、シロさんに振り回されるのはあんまり嫌いではないなと、そんな風にも感じた。
それはやはり、根底にこちらに対する真っ直ぐな好意があるからだろう……なんだかんだで、困りつつも結構嬉しいものだと、そう思いながら再びシロさんの顎に手を添えて顔を近づけた。
シリアス先輩「やっぱり、この天然神だと糖度高くない!? 本人が積極的でグイグイいくから、押しに弱めな快人の性格と相まって、イチャラブ度が高くて辛いんですが!!」
???「……シリアス先輩の辛さは別にどうでもいいとして、これまた外は大変なことになってそうっすね」




