シャローヴァナルとの建国祭昼②
服装と雰囲気が変わったシロさんと手を繋いで建国記念祭の道を歩く、いまになって思えば最初からあんまり人混みに詰まったりすることは無く、スムーズに移動できている気がする。なんというか、人の流れがいいというか、上手い具合に俺たちが進みたい方向に流れが出来ている印象だ。
普通であれば運がいいなぁと思うところだが……まぁ、間違いなく作為的なというか、神族の方々の力によるものだろう。手厚いサポートには頭が下がるし、先ほどのシロさんの新リアクションを保管しようと、現在では最新鋭魔法具……という名目による空のアートのような光景が展開されていた。
いや、本当にここが別次元で本来の次元に引き継がれない状態でなければ、一体この建国記念祭だけで謎の新技術魔法具がいくつ産まれたのかわからない。
「快人さん、アレなどいいのではないでしょうか?」
「え? どれ……なんですかアレ? 箱? いや、馬車の荷台部分?」
シロさんに言われて視線を向ければ、そこにはなんと言うか人がふたり入ると丁度いいぐらいのサイズの箱のようなものがあり、その前にかなりの行列ができていた。
イメージとしては観覧車のゴンドラだけが切り離されて置かれているというか……マジでなんだあれ?
「快人さんの世界で言うところの観覧車に近いものですね」
「ああ、なんか観覧車のゴンドラに似てるなぁとは思いましたけど、そうなんですね……じゃあ、アレ動くんですね」
「ええ、空中に浮かび、予め定められた首都をぐるりと一望できるコースを回り戻ってきます」
「なるほど、ああ、だから人気っぽいですね」
ハイドラ王国の首都には何度か来ているが、そんなゴンドラが空を飛んでいた覚えはないので、建国記念祭とかそういう場でのみ行われるものなのだろう。たぶんいろいろな結界だとか術式との兼ね合いがあるのかな? とにかく、こういう機会でなければ乗れない珍しいアトラクションなのだろう。だからこそ、非常に長い行列ができているわけだ。
「この建国記念祭におけるカップルにお勧めのアトラクショントップ3に入るようですよ」
「それは、なんか作為的なものを感じるというか都合よく乗り場に辿り着いたものですね」
「いえ、私が誘導しました。快人さんとイチャラブデートがしたかったので」
「物凄い正直……」
一切躊躇うことも誤魔化すことも無く、「狙ってここに連れてきた」と宣言する辺りが本当にシロさんらしいというべきか、シロさんのこういう正直なところは結構好きだ。
「……それは声に出して言うべきでは?」
「それ、とは?」
「最後のやつです。結構は省いてもいいと思います」
「……流石に人が多いので、また後ほどで」
「ふむ……確約が取れただけよしとしましょう」
まぁ、別に俺も恋人であるシロさんに好きと伝えることにためらいはない。あくまで建国記念祭の人気アトラクションで非常に人が多い状態で言うのが恥ずかしいというだけで、別にふたりきりとかであればいくらでも……。
「……ほぅ、いくらでもと?」
「あっ……」
おっと、これはよくないぞ。本当に良くない展開だぞ……心なしかウキウキワクワクとした目をしている気がする。
これ、ふたりきりになったらマジでガッツリ要求してきそうな気がする。
「……と、とりあえず並びましょうか」
「そうですね。先ほどのはあとのお楽しみにすることにします」
「お、お手柔らかに……」
言質……いや、言質ではないが、心の中で俺自身が迂闊に「いくらでも」とか考えたせいなので、ある程度は甘んじて受け入れようという思いはあるが、本当に加減をしてほしい。主に人間の限界とか、その辺りをしっかり見積もって欲しい……決して、リリアさんとかその辺の特殊な例を基準にしないように……。
なんとなく先行きに不安を感じつつ、長い列に並ぶ。流石に人気アトラクションだけあって本当に列が凄い。首都をぐるりと回るとなると、ゴンドラの数が多くても回転は決して良くなさそうだし、かなり時間がかかるかもしれない。
「お待たせいたしました。それではご説明しますね」
「――ふぁっ!? へ? あれ?」
「……お客様?」
なんでいつの間にか、『列の先頭』に居るんだ? さっきまで並んでいた人たちは、なんで当たり前の顔して俺たちの後ろに並んでるの? なんだこれ、まるで時間が消し飛んだかのような……いや、確実になんかあっただろこれ!?
シロさん……ではないと思う。シロさんは実際あんまり並んだりとか、そういうのを気にはしないだろう。だが、神族の方々にとって「シロさんが順番待ちをする」という行為を許容できるかと言われれば、まず無理だろうし、そっちが手を回したと見るのが自然だろう……本当にサポートが手厚すぎる。




