シャローヴァナルとの建国祭⑨
時間が無くて今回は少し短めです。
射的のテントから出て再びシロさんと手を繋いで建国記念祭の会場を歩く。ちなみに射的は一定得点以上獲得しており、お菓子の詰め合わせを貰った。
あくまで子供も楽しめる体験イベントなので賞品はおまけ程度なのだろう。とはいえ、こういうお菓子の詰め合わせは不思議といくつになってもワクワク感を覚えるものだ。
そんなことを考えながら歩いていると、シロさんが不意に足を止めて視線を動かした。
「……シロさん? どうしました?」
「ああ、いえ、大したことではないですが、首都にオリビアが来たようです」
「へ? ああ、オリビアさんが……え? オリビアさん!?」
シロさんがごく当たり前のように告げたので流しかけたが、あまりにも意外な名前に振り返る。オリビアさんというのは間違いなく、友好都市の教主であるオリビアさんのことだろう。
「え? なんで、オリビアさんが建国記念祭に?」
「さぁ? ここからは離れた場所ですね。観光では?」
「絶対違うと思います」
オリビアさんは基本的に友好都市から外に出ることは無い。白神祭が特殊な例だっただけで、他はシロさん関わらない限り友好都市から出ることは無いと、他ならぬ本人が……あっ。
そうだった。オリビアさんはシロさんへの信仰ガチ勢というか、暇さえあればシロさんに祈っているほど信心深い方だ。
以前俺が友好都市に訪れた際に話したことで、昼食など多少は神殿の外にも出るようになったらしいが、それでも一番多くの時間を割いているのはシロさんへの祈りだろう。
そして、オリビアさんは白神祭の際にも、シロさんに祈るためだけに友好都市からでて神界にやってきていた。そんなオリビアさんが、シロさんが人界に来ているという情報を得たならどうするかは、簡単に想像できる。
「たぶんですけど、シロさんに挨拶に来たのでは?」
「ふむ。なるほど」
「ただその、確認したいんですけど……オリビアさんって、友好都市以外だと能力が大幅に低下するんですよね?」
「ええ、友好都市以外では一般人以下でしょうね。その気になれば即座に友好都市に戻れるので、さほど問題はないでしょうが……」
そう、シロさんはさほど気にしていないようだが一番の問題はそこだ。オリビアさんは友好都市でこそ最高神に匹敵する強大な力を有するが、友好都市の外に出ると一般人以下の体力しかない。そこそこなだらかな丘を登るだけで、割と疲労困憊という感じになっていたのでよく覚えている。
そんなオリビアさんが、建国記念祭という非常に多くの人が居て、移動にもそれなりに体力が居る場所でこちらに自力で合流できるかと問われれば……まぁ、無理な気がする。
「……シロさん、とりあえずオリビアさんの居る場所に行きませんか? オリビアさんは、シロさんに挨拶をしたいんでしょうし……」
「分かりました。それでは、行きましょうか」
唯一心配なのは、オリビアさん……たぶん友好都市の外だと、認識阻害魔法とかも使えないだろうし、そもそも自分が有名人であるという自覚に乏しい方なので、結構な騒ぎになってるんじゃないだろうか?
なんとなく、ラグナさんとかが胃を押さえている光景が頭に浮かんだのは、たぶん気のせいじゃないだろう。
シリアス先輩「そういえば、友好都市外だとポンコツかつ、本人に有名人の自覚ゼロなだから、こういう場面での胃痛力が凄まじいのか……」
 




