シャローヴァナルとの建国祭⑦
正直いって予想外だった。わざわざ勝負を提案してきたことからも、シロさんは間違いなく勝ちに来るだろうと思っていたのだが、結果は俺の勝利。
しかも、俺が実力で買ったというわけではなく最終的にはシロさんに勝ちを譲られる形だ。その意図が分からず困惑していると、シロさんがどこか楽し気に口を開く。
「良い戦いでした。僅差ではありましたが快人さんの勝利ですね。これで快人さんは、私になにかひとついうことをきかせる権利を得たわけです。さて一体どんな要求をしてくるのか、楽しみですね。私としてはイチャイチャできるものがいいのですが……」
「っ!?」
シロさんの言葉を聞いてハッとなった。そうか、俺の勝ちということは俺はシロさんになにかひとつ命令できる権利を得た。言い換えればそれは、俺の方からシロさんになにかを求めるというわけだ。
シロさんはそういう、俺から頼られたりするのは好きというか、時々自分から要求してきたりするぐらいには好きである。
そんなシロさんにとって、この権利は俺からなにかを求められるチャンスでもあるわけだ。
しかも、それだけじゃない。いまさり気なく「私としてはイチャイチャできるものがいい」と要望を口にしたのも妙手である。これを聞いた上で、全然気にせずに適当な命令で権利を消化するというのは、俺にはできない。
なるほどだから「どちらでも利がある」ということか……シロさんが勝利したなら、己の要望を通せる機会を得る。逆に俺が勝ったとすれば、シロさんにとっては俺からなにかを求められるという、シロさんにとって好ましい状況になるというわけだ。
これは正直見事と感心するほかない。しかも、別に俺がなにかを損しているわけでもないし、要求に関してもシロさんは漠然とした希望を提示しただけで、どの程度のイチャイチャかとかその辺りは俺の方で考えられるわけだし、不意打ち気味に何かされるよりは余裕を持てるだろう。
「……けど、う~ん。すぐに思いつかないですね」
シロさんのイチャイチャしたいという要望を満たしつつ、なにか俺が普段とは違うことをシロさんに求めるという状況。なにを求めるかというのは、すぐには考え付かなかった。
例えば膝枕をしてもらうとかもひとつの要望だろう。しかし、いまは建国記念祭の最中だし、すぐに実行できるものでもない。いや、シロさんならすぐに実行できそうだが……、
う~ん。要するに恋人っぽい感じのことをすればいいのか、それともせっかく勝負した上で言うことを聞かせるという状態なので、いままでとは違う感じのことにすべきか……悩みどころである。
「これ、一旦保留とかでも大丈夫ですか?」
「ええ、構いませんよ。しかし、期限を設けなくてはいつまで経っても……という状況になりかねないので、こういうのはどうでしょう? 今日一日が終わるまでに、なんらかの形でその権利を行使するというのは……」
「分かりました。それで大丈夫です」
とりあえずいますぐにというわけではなく、一旦保留という形になった。これで考える時間ができたので、どんな風にシロさんの要望を叶えつつ権利を行使するかはじっくり考えることにしよう。
そんな風に思っていると、シロさんがなにやら楽しそうな表情でこちらを見ていた。
「シロさん?」
「ああ、いえ、やはりこちらを選んで正解でしたね。楽しみなのはもちろんですが、快人さんが私とどうイチャイチャしようかと、アレコレ考えてくれているのは……なかなかどうして、嬉しいですね」
この人は本当に、そういうことをサラッというから性質が悪いというか……とりあえず、射的のせいかシロさんの発言のせいかは分からないが、少し熱くなった顔を手で扇ぎながら、シロさんと共にテントの出口に向かった。
???「くっ、本当に大した成長じゃないっすか……カイトさんの方からいちゃつきに来てもらえるだけじゃなく、どんな風にいちゃつくか考える過程も、心を読むことによって楽しめるので二度美味しい。さらには、例えばカイトさんが考えて没にした案なども、今後覚えておいて実行することもできると……なんて隙のないプラン……流石は、神というべきですね」
シリアス先輩「……イチャイチャがきそうで、私は、とてもつらい」




