シャローヴァナルとの建国祭⑤
シロさんからの勝負の提案を思案しつつ待っていると、時間となったのか中央のステージに拡声魔法具を持った人がのぼる。
『皆さま、お待たせいたしました。トリニィアでも非常に人気ではありますが、参加に比較的高度な魔法技術が必要なため気軽に挑戦できないとされています射的。今回は、その射的の雰囲気を味わいつつお子様でも楽しめるアトラクションを用意しました』
そうして説明が始まったのだが、要約するとこれから行われるのは幻影魔法によって再現された…‥一種の幻覚のようなもので、今持っているこの木材が銃に見えるようになり、テント内は射的の醍醐味たる空中戦……まぁ、あくまで景色だけだが空中になるみたいだ。
そして本来の射的は対人戦だが、今回はアトラクションであり人に向けての発砲などは禁止……まぁ、あくまで幻影魔法なので魔力弾も出ているように見えるだけで、当たっても怪我したりとかはないみたいだが、とにかく人に向けて撃つのは禁止らしい。
その上で会場内にランダムに飛行する的が現れ、それを狙って得点を稼ぐ形式とのことだ。的は中心から100点、70点、50点、30点、10点と外側に行くほど点が低くなる。一定以上の点を獲得できれば、帰る際に景品を貰えるらしい。
ついでに言うと本来の射的……そういう言い方だと混乱するが、SYATEKIの魔水晶の魔力制限を再現しているのか打てる弾数には限りがあるみたいなので、その中で高得点を狙う形式だ。
たしかにこれなら子供でも楽しめそうだ……ある意味では的を狙って撃つわけだし、SYATEKIよりは射的っぽい気もする。
そして先ほどシロさんが提示したハンデというのも理解できた。つまりシロさんは俺が当てた数までしか的には当てられない。例えば俺が10個の的に当てたとしたら、シロさんも同じく10個の的にまでしか当てない。
その上で、シロさんは50点より上の得点を取ってはいけないということは、俺が70点か100点に当てればそれだけ有利になるし、100点を一度とれば次に10点だったとしてもリードできることになるわけだ。
……これは、かなり俺に有利な条件といえる。逆に言えば、俺がシロさんに勝てる可能性があるのは、最低でもこれぐらいのハンデが無いと言えないという意味でもあるが……ただハッキリしているのは、俺次第で勝てる可能性は十分にある。
なぜなら俺は的を外したとしてもデメリットはないし、30点か10点に当てない限りシロさんがリードすることは無いし、100点を取ればすぐに巻き返せる。
「なるほど、確かにこれなら勝負になりそうですね。というか、俺の腕次第で勝てるかどうかって感じですね」
「その通りです。たまにはこういった勝負もいいのではないでしょうか?」
「う~ん、シロさんが俺になにを要求しようとしているかは気になるところですが……分かりました。受けて立ちます」
「楽しみですね」
勝負を受けることを告げると、シロさんは楽し気に口角を上げる。結局のところこの勝負は俺が平均50点を超えられるかどうかだ。
シロさんはほぼ全能。初めてであってもやれば余裕で出来るというのは分かっているので、間違いなくすべて50点の場所に当ててくるだろう。
「あれ? ところで幻影魔法って、シロさんの祝福の影響は?」
「調整していますので問題ありません」
「さすが、それなら安心ですね」
非常に準備がいい。なんというか、シロさん側からの意欲が伝わってくるというか……やけにやる気出しているように思える。
「シロさん、ちなみに買った場合はなにをさせるつもりで?」
「……それをいま言ってしまっては興醒めでしょう。あとのお楽しみということで……しかし、少々迷ってはいます。どちらにすべきか……まぁ、どちらであっても私には利が大きいので、贅沢な悩みではありますがね」
やはりというべきか、シロさんはこの現状を楽しんでいるというか、こういう駆け引きも含めて俺との勝負を楽しんでいる気がする。
以前に一緒に海に行った時とは違い、シロさんが心や感情というものをしっかり理解しているからこそ……そう思うと、なにを要求されるか不安という気持ちがありつつも、シロさんが楽しんでくれて嬉しいという気持ちも大きくなってくるので……なんとも困ったものだ。
シリアス先輩「いまのシロは本当になにを提案するか分からないところがあるから、私としてマジで怖い。快人が嫌がるようなことはしないだろうけど……いちゃつきはしそう……」




