シャローヴァナルとの建国祭①
到着してすぐにまぁ多少ゴタゴタはしたのだが、とりあえずシロさんと一緒に手を繋いで建国記念祭へと繰り出した。
しかしこうして、シロさんが祭りで賑わう街中を歩いているのはなんとも不思議な気分だ。
「そもそもこうして祭りの会場を歩くなど初めてですからね」
「まぁ、そうですよね。ならむしろ、珍しいものより定番の屋台とか回る方がいいですかね。シロさんはなにか、行ってみたい場所とか食べてみたい屋台グルメとかありますか?」
俺は既に一度アリスと来ているので基本的にはシロさんの要望を最優先にすつるもりだ。神域に屋台っぽい店を創造して雰囲気を味わったり、花火を上げたりということはしていても実際にこうして祭りを周るのは初めてであるシロさんに出来るだけ楽しんでもらいたい。
「なるほど、ではいちゃいちゃ度の高い屋台グルメでお願いします」
「……う、う~ん」
真顔でいちゃいちゃ度の高いとか言ってくる辺りはシロさんらしい感じだが、その要望を聞いて俺は頭を悩ませた。
いや、いちゃいちゃという部分に文句があるわけではないのだ。むしろシロさんと恋人らしくいちゃいちゃできるのであれば、俺としても楽しめるだろう。
だが、いちゃいちゃ度の高い屋台グルメと言われると……パッと思い浮かぶものがない。
例えばひとつのものをふたりで食べるなどというのはカップルっぽい気もするが、それなら別になんの屋台でも食品の屋台であれば実行できるだろう。
「う~ん、すぐには思い浮かばないですね」
「ふむ……安心してください。こんなこともあろうかと私は知識を増やしてきました」
「……あ、えっと、そうですね。具体的な希望を出してもらえると、俺としてもありがたいですが……」
「ソフトクリームを両側から一緒に舐めて食べるという行為が、かなりのいちゃいちゃ度であると推測できます」
「……」
とんでもないこと言い出したぞこの神様……やれと? それを……この溢れんばかりに人がいる会場で、バカップル丸出しの食べ方をしろと?
シロさんの方は、権能による一種の認識阻害魔法のような状態なので誰も気付かないだろうが……俺は『誰か女生と天下の往来でバカップルしてる奴』として認識されてしまうんですが!? いや、もちろんある程度通行の邪魔にならない位置に動くだろうけど、それでも恥ずかしさという点で言えば凄まじいぞ……。
「……あぁ、いや、俺としてもシロさんの願いなら叶えてあげたいところですが、見渡す限りソフトクリームの屋台はないですね。こういう場所で出すのは難しいですし、無いものはどうすることも……」
幸いだったのはソフトクリームの屋台というのが見当たらないことだった。というか、この世界ではソフトクリームは魔法具を使って作るので、そこそこ割高のスイーツである。
機械製品と比べて魔法具は高価なので、こういった祭りの出店で出すにはコストがかかり過ぎるということもあって、ほぼ見かけない。
無いものは仕方がないわけだし……シロさんには申し訳ないが、少しホッとしている。
だが、そんな俺の安堵も束の間、シロさんは少し視線を動かし上空に向かって呟くように口を開いた。
「ラブラブなソフトクリームの屋台が欲しいところですね」
直後視線の先の屋台の一部が消え去り、やたらピンクの装飾でラブラブ感を強調したソフトクリームと書かれた屋台が出現した。
し、しまった!? そうだ、シロさんには神族の手厚いサポートがあるんだった!! 一言要望を伝えれば、即座にそれが叶う。
くっ、神族のサポート力を侮っていた……。
「おや? カイトさん、あそこに丁度ソフトクリームの屋台がありますよ」
「……そうですね。いま現れましたね」
「さらに空いているようです。これは行くしかないですね」
「そうですね。なんかの権能でも使われてるんじゃないかってぐらい不自然に他の客が寄り付いてないですね」
これはもう覚悟を決めるしかないようだ。というか……間違いなく神族が店番をしてるはずだけど、誰がやってるんだろう?
そう思いながら、屋台に辿り着くと……。
「いらっしゃいませ、ラブラブソフトクリーム屋です!」
「………………久しぶりですね、ハートさん……」
そこでは、ハイドラ王国を担当している下級神がなんとも言えない表情で店主をしていたのだった。
シリアス先輩「……そういえば、何気にハートの台詞って、正義さんより間空いてるんじゃ……」




