もうひとつの建国記念祭⑧
ついに辿り着いたハイドラ王国建国記念祭……二度目。いや、まぁ、別に移動は一瞬なので苦労して辿り着いたとかでもなく気付いたらついていたという感じだ。
そして一昨日? 厳密には一昨日ではないが、俺の感覚としては一昨日のアリスとの建国記念祭の時も思ったやはりかなりの人の数だ。
シロさんは認識阻害魔法の上位ともいえる権能で他の人に気付かれたりしないとは分かっているのだが、それでもシロさんが街中に居るというシチュエーションが凄まじすぎて変に気を張ってしまう気もする。
まぁ、俺以上に気を張っているのがクロノアさんたちだろうが……。
「やっぱり人が多いですね、シロさ……へ?」
「どうしました、快人さん? なにか気になりますか、主に私の格好とか、服装とか、その辺りに関して」
振り向いて驚いたのは、シロさんの服装がいつの間にか変わっていたことだった。いや、シロさんなら別に可能ではあると分かっていても、転移して移動したら別の服というのは中々に驚く。まぁ、本人の自己アピールが凄いので、変化にはすぐに気付いた……というか、いつもとはかなり違う服装だった。
というのも現在のシロさんは動きやすさを重視したのか、ジーパンっぽいズボンを履いておりカジュアルなスタイルだった。上は白地のシャツにカーディガンっぽい上着を着ている感じで、髪もポニーテールに纏まっていた。
普段のシロさんからは大きく雰囲気が変わっており、これなら仮に認識されたとしてもシロさんとは気づかないんじゃないかというレべ……いや、ビジュアルが強すぎて気付くかもしれない。
いや、しかし、こうして別の服を着ているのを見るとつくづく思うのが……この人本当になに着ても似合うよなぁ。本人のスペックが高すぎるし、足が長いしスタイルも抜群なのでパンツスタイルもビシッと決まっており、カッコよさと綺麗さが見事に調和した感じだ。
「誤解しないでいただきたいのは、これはAスタイルです」
「う、うん? どういうことですか?」
「せっかくなので、途中で服装を変えます。ファッションも勉強したので、いろいろ試したいですし……その都度褒めてもいいのですよ? 褒めると私が喜びます。さしあたっては、いまがチャンスと思いますが?」
「……いや、実際凄く似合ってますよ。綺麗なだけじゃなくてカッコよさもありますし、シロさんがなに着ても似合うっていうのはそうですが、俺としては普段と違うシロさんの魅力に気付けた感じで、なんだか嬉しいですね」
とりあえず途中で服装を変えるとかは、まぁ、シロさんならできるだろうし、せっかく勉強したのだからいろいろ試してみたいという気持ちも分かる。
そして服装を褒めることに関しても、恋人がおしゃれしているのだからそもそも褒めないわけがない。というわけで、素直に賞賛の言葉を伝えるとシロさんはどこか満足気に頷く。
「……思った以上に耳に心地よいので、もうもうちょっと追加で褒めてください」
おっと、褒め言葉のおかわりとは恐れ入った。こういうことを平然と言うのがなんともシロさんらしい。
「えっと、その上に羽織っている服もお洒落でいいですね。そっちはカジュアルというより清楚系の上着ですけど、意外とマッチしているというかシロさんによく似合ってますね。いや、本当に綺麗さもカッコよさも可愛さも備えたシロさんが恋人なんて俺は幸せだなぁ……このぐらいでどうでしょう?」
要望通り追加の誉め言葉を伝えると、シロさんは口角を少し上げており満足気というか嬉しそうだ。とりあえず喜んでもらえたのならよかったと……そう思ったのもつかの間、直後に俺は目を見開くことになった。
なぜなら突如視界の先、海から巨大な「ドヤァ」という文字が出現し、そのまま天に向かって登って消えて言ったからだ。
……とんでもねぇ。いまの一瞬で、たぶん何人かの胃に甚大なダメージが入ったぞ。なにせ、前の海水浴とかそういう状況とは違って、いまここは建国記念祭真っただ中のハイドラ王国首都、先ほどのドヤァは多くの人が目撃しているだろう。
一般の人にしてみれば、突然海から文字……いや、日本語だし、巨大すぎて文字と思わなかったかもしれないが、謎の巨大物体が空に昇っていったのは目撃している。当然ラグナさんたちもそうだろう。
なんなら周りが少しざわついているのも気のせいではないだろうし、ラグナさんとかも頭を抱えてどう対処するか悩んでいそうだ。
あとクロノアさんとかも頭を抱えているだろう。まさかシロさんがドヤッた結果出現した文字ですなんて、ラグナさんとかに説明できるわけも無く、なんか上手い感じの落としどころを考えているはずだ……双方の胃が心配である。
シリアス先輩「海から天に向かって登る巨大なドヤァという立体文字……シュールすぎる。ノインとかもポカンとして見てそう」




