もうひとつの建国記念祭⑦
ハイドラ王国の首都の一角、首都全体を見渡せる上空で真剣な表情で首都を見下ろすのはクロノア、フェイト、ライフの三人の最高神だった。
シャローヴァナルが建国記念祭で快人とデートを置こうなということで、万全を期すため前日から各地に上級神や下級神を配置したあと、開催が近い時間となったため集まって最終確認を行っていた。
「さすがに今回は規模が規模だ。かつてのシンフォニアのように全員神族で固めることは不可能であるし、一般参加者も存在する」
「私の権能で、シャローヴァナル様に気付いたり、近づいたり、話しかけたりは基本的にはできない……けど、シャローヴァナル様の方から行く分はどうにもならないよ」
「その辺りは仕方ないでしょう。シャローヴァナル様のご意思が最優先です。ただ、懸念としては前回の時の様に唐突に別の場所に移動したりといった形で、我々の対処が遅れる可能性です。可能な限り不測の事態を想定しておくべきかと……」
三人の頭に思い浮かぶのは以前のシンフォニア王国でのデートの際、万全に万全を期した布陣であったにも関わらず、早々に海に移動するという天然が発動して大半が徒労に終わった記憶。今度はそうはならぬようにと、可能な限り様々な想定をしていた。
そのままいくつかの今後のパターンを話し合い、ある程度は問題ないと結論付けたあとでクロノアが口を開く。
「そろそろ開催の時間か……何事も無く無事に終わってくれればいいが……」
「そうですね。シャローヴァナル様が楽しんでくだされば、それが一番ですが……おや? 運命神。難しい顔をしてどうしました? なにか気になることでもあるのでしょうか?」
「……うん。流石にいまからは……厳しいか……」
方針は決まり、現状はまだシャローヴァナルも快人も到着していない状態なので、問題はなにも無い筈だが……フェイトは、普段の彼女からは想像もできぬほど真剣な表情で考え込んでいる様子だった。
その表情にはどこか貫禄のようなものもあり、クロノアもライフも「やはりフェイトが最も成長している最高神である」と実感した。おそらく彼女は自分たちに見えていないものが見えているのだろうと……。
「運命神、必要なことがあれば言ってくれ。我らはお前と比べれば未熟ではあるが、それでも最高神の一角、協力できる部分も多いだろう」
「ええ、サポートならば任せてください。ですが、その前に情報の共有が必要です。教えてください、運命神……貴女の表情を硬くさせる懸念事項について」
「…………へ?」
「「え?」」
真剣に悩むフェイトを見て、力強い意志を瞳に宿して真摯に告げるクロノアとライフだったが、そんなふたりに対してフェイトは、キョトンとした表情で首を傾げた。
「懸念事項? え? なんのこと?」
「う、うん? いまお前は、シャローヴァナル様のデートに関して気になる点があったから、悩ましげな表情を浮かべていたのではないのか?」
「……違うけど?」
「……で、では、いったいなぜ、あんな表情を?」
明らかに戸惑った様子のフェイトだが、それ以上に戸惑っているのはクロノアとライフである。双方の認識が食い違っているのは、フェイトの反応を見れば理解できる。だが、それはそれとして、のんびり屋といっていいフェイトがシャローヴァナルに関わること以外で、あれほど真剣な表情を浮かべていた理由が分からなかった。
問いかけるライフの言葉を聞き、フェイトはどこか気まずそうな様子で目を逸らした。
「あ~いや、ほら……ここって、別次元なわけでしょ? カイちゃんがシャローヴァナル様を建国記念祭に誘った……シャローヴァナル様と約束をしたって前提で分岐した別次元なわけじゃん」
「その通りだ。ミヤマの同行者部分以外は本来の次元と変化はない。ミヤマの同行者に関する部分は、一部矛盾が生じないように記憶が変化している部分もあるが、概ねその認識で間違いない。それがどうした?」
「……いや……それが成立するなら、私もカイちゃんとお祭りデートしたかったなぁって……でも、流石にいまからじゃ遅いよねぇって、そう考えてただけだけど……」
「「……」」
バツが悪そうに告げるフェイトの言葉に、思わず額に青筋を浮かべたクロノアとライフだったが、それに関しては自分たちが勘違いしただけで、フェイトに誤解させようとする意図があったわけでもないと理解はできていたので、グッと湧き上がる感情を押し込めた。
「……あ~その……いまは、こっちに集中するね」
「ああ、そうしてくれ……」
なんとも言えない微妙な空気が三人の間に流れた直後、シャローヴァナルと快人が到着した気配を感じて、即座に三人は表情を切り替えてそちらを向いた。
シリアス先輩「ああなるほど、早めに気付いてシロにお願いしておけば、自分もスーパーWINシステムの恩恵に預かれたかなぁとか考えてたのか……恐ろしい発想はやめろよ、マジで……」




