もうひとつの建国記念祭⑤
シロさんと周るハイドラ王国の建国記念祭の当日の朝、俺は何故か神域に居た。いや、なぜかもなにも起きてすぐにシロさんに呼ばれて、着替えと支度だけしてきたからなのだが……建国記念祭の開始まではまだ時間のあるこのタイミングで呼ばれた理由と、当たり前のように目の前に置かれた朝食の意味が分からない。
まぁ、とりあえずせっかく用意してくれたのだからと朝食を食べることにした。クロワッサンとスープとサラダというシンプルながら美味しそうな朝食で、さっそくクロワッサンを一口食べて、あまりの美味しさに言葉を失った。
え? なにこれ? 美味しすぎる。フワフワ柔らかいのはもちろんだが、なんと言うか個人的な好みにピッタリと当てはまる感じで、たぶんシロさんが創造したのだと思うが、グロリアスティーとかを飲んだ時に近いような衝撃を受けた。
「気に入ってもらえたようならよかったです」
「ええ、すごく美味しいです……ああ、いや、それはともかくパターンBってなんですか?」
あまりの美味しさに夢中で食べていたが、シロさんの声をきいて少し前に頭に浮かんでいた疑問を口にする。シロさんは俺を神域に呼んだのはパターンBだと言っていたが、そもそもBということはAもあるのだろうか?
「Aは以前のデートで実行しました」
「うん? というと?」
「待ち合わせをしてデートに向かう形ですね。待った? いま着たところのやり取りがこのパターンAにあたります」
シロさんのその言葉で少し言いたいことが分かってきた気がした。つまりデート開始のパターンのことではないだろうか?
現地で待ち合わせをしてデートに向かうのがパターンAで、先に合流してから一緒にデートに向かうのがパターンBってことだろう。
「違います」
「え? 違うんですか?」
「はい。パターンAはその通りですが、パターンBは『同棲していて一緒に出掛けるパターン』ですね」
「…‥……え? いや……同棲してないんですけど?」
「そうですね」
「……いやいや!? そこで頷かれるとこっちはハテナマークしか浮かなばいんですけど!?」
流石というべきかキッチリ天然を炸裂させてくるシロさんに俺の頭は混乱しっぱなしである。
「なので、同棲しているという体で……そのために朝食を一緒に食べているわけです」
「そ、そうですか……いや、まぁ、シロさんがそれでいいなら別にいいんですけど……というか、そもそもなんでまたそんなパターンを?」
「今回のデートに備えて、私は勉強をしました。地球神との取引で参考資料も手に入れて、しっかりと頭に入れたので、いまの私は恋愛マスターといっていいかもしれません」
「……参考資料?」
「これです」
そう言ってシロさんはテーブルの上に複数の本を出現させたが……どう見ても恋愛漫画にしか見えない。えっとつまり、恋愛漫画を読んで勉強してきたってことかな? いや、その手の漫画は割と大袈裟にというか、物語だからドラマチックに書かれていることが多いので、参考にするのには向かない気がするのだが……あとなんか、シロさんがある程度の知識を仕入れているという状況そのものに若干の不安を覚える。
「まぁ、もちろんこれらはあくまで参考です。私とカイトさんのことが書かれているわけではありませんので、その辺りは臨機応変に対処するつもりです」
「お、おぉ、なんか突然すごくまともなことを言い出したので、さっきまでとの落差に戸惑いますけど……まぁ、賛成です。あまり型にハマったことをやり過ぎても、変にギクシャクしちゃうもんですし、気軽に楽しむのがいいと思います」
一瞬不安が大きくなったように感じたが、それでもやはりシロさんも以前と比べればかなり成長している様子で、発言を聞く限りある程度は安心できそうだ。
……大丈夫だよね? 天然炸裂させて変なこと言い出さないよね? 大丈夫……だといいなぁ。
シリアス先輩「んん? このパターンはどうだ?」
???「微妙なところですね。ここで、カイトさんが楽観視してたら確実にフラグですが、むしろ警戒している様子なので、そうなると逆に警戒に反してシャローヴァナル様がまともな行動をってパターンもありえますね」




