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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした  作者: 灯台


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もうひとつの建国記念祭③



 ハイドラ王国建国記念祭当日の早朝、セレモニーに招待されているリリアは特殊な魔法具を用いて指定の場所に転移にて移動して来訪した。

 まだ建国記念祭開始までは少々時間があるが、事前の挨拶などもあるので早い時間に訪れていた。それでも、アルクレシア帝国の時のように前日入りする必要はないので、ある程度気楽ではあるが……。


「……うん?」

「どうしました、リリ?」

「ああ、いえ、なんとなく空気がピリッとしているというか……嫌な予感がしたもので」


 リリアは護衛としてジークリンデを、補佐としてルナマリアを連れてきているので三人での来訪である。そして、ハイドラ王国に到着してすぐリリアがなにやら怪訝そうな表情を浮かべ、それを見たジークリンデが声をかけるが……リリア自身、嫌な予感の原因は分からないようで上手く返答はできていなかった。


「ふむ……ルナは何か感じますか?」

「いえ、特になにも……リリが嫌な予感というのであれば、なにか突発的な事態が起こるとか、偶然高位の方に遭遇するとかではないですか?」

「いやな予想をしないでください。まぁ、私もなんとなくという感じで、別に根拠があるわけでもないですし……とりあえず、ラグナ陛下に挨拶に行きましょうか」


 どことなく不安な気持ちを感じつつも答えは出ないという、なんとも嫌な気分ではあったが、リリアはすぐに冷静な表情に戻って王城の中に向かっていった。

 リリアを含めた来賓に渡されているのは王城のすぐ近くの場所に転移可能となる転移許可魔法具であり、王城は目と鼻の先であるため、すぐに到着する。


 そして丁度タイミングよくラグナに挨拶可能な状態だったため、そのまま案内されてラグナの居る部屋に移動した。

 一礼して去っていく案内の者を見送った後でノックをして室内に入る。


「……失礼します。ラグナ陛下、ご挨拶に伺ったのです……が?」

「……おぉ、リリア嬢か……それに、ルナマリア嬢にジークリンデ嬢も一緒か……よく来てくれた、歓迎しよう」

「あ、あの、ラグナ陛下? 大丈夫ですか?」


 思わずリリアがそう声をかけてしまうほど、ラグナには色濃く疲労の色が出ており、一目見て疲れ切っている状態なのが理解できた。

 だが、それには少々疑問を覚える。ラグナは人界でも最強格であり、世界全体で見ても上から数えた方が早い実力者であるというのは、リリアもよく知るところだ。

 仮に三日三晩不休で戦い続けたとしても対して疲労しないほどに圧倒的な体力がある。なので現状のラグナの疲労は肉体的なものというよりは精神的なものである可能性が高いが……だとしても、長く生きている分見た目にそぐわぬ老獪さを持ち、精神面も強い筈のラグナがリリアたちを前にして取り繕う余裕もないほど疲労している事態というのが想像できなかった。


「……ああ、すまん。みっともないところを見せたのぅ。いや、少々昨晩に精神的になかなかキツイ事態が起こってな……はは、さすがのワシも疲れ果ててしまっておる。ああ、それで、挨拶じゃったな?」

「……ラグナ陛下、申し訳ありませんがとても嫌な予感がするので、私は参列は見送って帰りたいのですが……」

「おっと、リリア嬢それは少々無礼が過ぎるのぅ……ワシとリリア嬢の仲ではないか、そうつれないことを言わないでくれ」

「いや、なんかここにきて私の本能というか……胃が、もの凄い勢いで反応していまして、嫌な予感しかしないんです」


 先ほどの嫌な予感は間違いではなかったと確信したリリアは、出来ればすぐにでも屋敷に戻って引きこもりたい気分だった。

 いままでに積み重ねてきた苦労の日々がリリアに虫の知らせのように警告していた。このままでは、胃がもの凄く痛い事態に巻き込まれると……。


 そんなリリアに対してラグナは優しい微笑みを浮かべて席を立ち、リリアの肩に手を置いてぐっと力を籠める。


「ははは……逃がさんぞ……いざという時のためにも、リリア嬢にはぜひ居てもらいたいからのぅ」

「もう、いざという時とか言ってる時点で物凄く不安なんですが!? なんですか、本当になにが起こるんですか!?」

「…………知りたいか?」

「知りたくないです! 家に帰してください!!」


 必死に抵抗するリリアをラグナが全力で抑える。両者の力がある程度拮抗しているからこそできることではあるが、リリアにとっては逃げの一手が封じられたという意味でもある。

 ラグナとリリアは普段から月に1回の模擬戦を行っており、それなりに交流も多くて仲もいいためいまとなってはある程度気安い間柄になっているが、それがある意味災いしているともいえる。


 そしてラグナはいっそ寒気のするような穏やかな笑みで、リリアに告げた。


「……今回の建国記念祭に、シャローヴァナル様がいらっしゃるらしい」

「…………」


 その言葉を聞いた瞬間、リリアは絶望に染まった表情で虚空を仰いだ。無意識に胃を押さえるように手が置かれていたのはある意味必然だったのだろう。




シリアス先輩「なんなら、神族連中は前日入りしてガッチガチに警戒固めてそう……ああ、だから、リリアが来た瞬間嫌な予感がするとかって……」

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― 新着の感想 ―
ニュータ胃プですからね、胃痛公爵は
ニュータ○プ的な直感を脳ではなく胃で感じちゃうリリア公爵…w
[良い点] 歴戦の猛者ですら疲労困憊まで追い込み、胃痛者最高位のリリアさんの胃に予感を与える。さすがシロさん、次元が違うなぁ。ラグナさんの「いざという時」発言に笑しかないです [一言] もはやすでに、…
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