月明かりの差し込むコテージで⑩
俺は風呂場に呪われているのじゃないかというぐらい風呂場では、混浴などといった突発的な事態に遭遇してきた。ただ、アリスも割と風呂場に呪われているような気もする。
本当に毎回なんらかのハプニングが……それもアリスが恥ずかしい思いをする形で発生するため、なんというか大変そうである。
今回もタオルが透けるというハプニングがあったが、怒りに震えていたアリスは少しして空間の裂け目のようなものを作り出し、直後に巻いていたタオルが透けていないものに変わった。
「あ、タオル変えたんだな」
「……はぃ」
「滅茶苦茶恥ずかしそうだけど……さっき言った通り、誓って最初の不意打ちの時以外は見てないから」
「いや、まぁ、その、それは……その……遅かれ早かれというやつではある様な……ただあまりにも予想外な形だったせいで死ぬほど恥ずかしくて……でもある意味、恥ずかしさが極限レベルになったので、一周周って少し落ち着いたような気も?」
「不幸中の幸い……かな? とりあえず、アリスが風呂場から逃走するような事態にならなくてよかった」
一周周って落ち着くというのは実際にあると思う。事実としてアリスは、先ほどまでより少し冷静に見える。いや、恥ずかしがっているのは変わらないのだが、恥ずかしさのあまり逃走するとか隠れるとかそういうことはせず、起こってしまったものは仕方がないとある程度割り切っているように感じられた。
俺としても浴槽にポツンと一人取り残される状態にならなかったのは幸いだが……それはそれとして、なんか妙に気まずい空気というか、どうしようかこの状況。
ハプニングではあるが、透けている状態をバッチリ見てしまったのは言い逃れのしようのない事実であり、正直いま結構心臓の音がうるさい。
アリスも言っていたが、あまりにも予想外な形だったせいで見た瞬間は驚きが強く深く考える余裕が無かったが、少し間を開けると強烈に意識してしまう。
「……う、う~ん。なんとも言えないなこの空気感」
「で、ですね。居たたまれないというか、落ち着かないというか……」
「とりあえず、その……悪かった」
「あ、いや、そこは事故ですし、カイトさんは悪くないので……だ、大丈夫です」
むず痒いというか、互いに互いを強く意識してしまっている状態というか……どうにも落ち着かないが、ある意味ではいい雰囲気と言えなくもない状態になっている。
変な空気になった影響もあって気恥ずかしさはある。かなり顔が熱い気がするし、アリスの方を見ると先ほどの姿が頭に思い浮かんでしまって、どうにもスムーズに会話ができない……だがそれでも、直感というべきか「押すならばここだ」という感覚もある。
恥ずかしさが一周したとはいえ、アリスが比較的落ち着いた精神状態でテンパってないこと、妙なむず痒さはあるが互いに意識し合っている雰囲気なこと、勢いに身を任せるならここが最良のタイミングなのではないかと感じた。
だからこそ、恥ずかしい気持ちを押さえながらそっとアリスの肩に手を回して抱き寄せる。
「あっ……カイト……さん?」
「アリス、少しだけ顔あげて……」
「あぅ……はっ、はい。その、お、お手柔らかに……」
残った片方の手をアリスの顎に沿えて語り掛け、こちらの意図を察したアリスが目を閉じたのを確認して顔を近づけてキスをした。少し前にしたバードキスではなくしっかりと唇と唇を重ね合わせるものである。
「……んっ……んん……」
華奢なアリスの肩を少し強めに抱きしめつつ、風呂に入っていた影響か少し熱を帯びた唇の感覚と、蕩けるように甘い空気を味わい……しばらくして、顔を離してから優しい声でアリスに声をかける。
「……あまり長く入り過ぎてもアレだし、そろそろ出て寝室に行こうか」
「……」
その俺の言葉に、アリスは顔を赤くしながら無言でコクリと頷いた。
マキナ「うんうん。私のアシストのおかげもあっていい甘さになったね! まぁ、流石にこれ以上は年齢対象の問題があるし朝に飛びそうだけど……関係が深まった後のモーニングトークに期待だね! ね? シリアス先輩……」
シリアス先輩「……」
マキナ「……砂糖で出来た海の景色は、果たして水平線って呼んでいいのかなぁ?」




