月明かりの差し込むコテージで⑧
若干強引にアリスを引っ張りつつ脱衣所にやってきた。アリスは顔を赤くして恥ずかして、時折「強引だ」とか「もっと段階を踏んで」とか愚痴のような文句を言ってきているが、そもそもの話、アリスが本気で抵抗していたなら俺が引っ張って連れて来られるわけがないので、文句は言いつつも拒否をしているわけではない。
「というか、もう脱衣所まで来たんだから諦めろ」
「うぐっ……わ、分かりましたよ。往生際が悪いことに定評のあるアリスちゃんですが、今回は流石に観念しますよ」
「……往生際が悪いとか、自分で言うことか?」
「ともかく、もう覚悟を決めました!! ええ、混浴なんて何度も乗り越えてきたんすから、いまさらビビる必要なんてないんすよ! 余裕ですよ! 余裕!!」
言い聞かせるように余裕と連呼する辺り、まったく余裕ではなさそうだし、過去の混浴も別に乗り越えた訳じゃなくて基本自爆していたが……とりあえず決意は固めたらしい。
アリスはそのまま入ってきた扉を振り返って手をかざすと、扉が一瞬光を放った。
「うん? いまなにをしたんだ?」
「封印しました。私本人であっても一定時間が経つまでドアを開けられないように……不退転の覚悟ってやつっすね。いや、まぁ、空間転移とかすれば関係なく出れるんですけど、あくまで雰囲気ですね」
「なるほど、扉を封印することで退路を断ったわけか……脱衣所もそんなに広くないけど、着替えの時はどうするつもりなんだ?」
「……………………あぇ?」
もう自爆しやがったよコイツ!? このコテージは高級感こそあるが基本的に簡素な造りになっており、脱衣所や浴槽もそこまで広いわけではない。まぁ、とはいえふたりで利用する分には脱衣所のスペースにも余裕はあるが、一緒に着替えるなどという行為が果たして恥ずかしがり屋のアリスにとってどうなのかという疑問は……唖然としたあとでどんどん顔を赤くしているアリスを見ればよく分かる。
「……で、どうする? 一度空間転移で外出るか……あるいはアリスか俺が後ろ向いてる間に、片方が着替えて先に浴室に行くか?」
「べ、べべべ、べつに一緒に着替えればいいじゃないっすか!! え、ええ、余裕っすよ! だって、これから混浴するわけですし、着替えぐらいなんだってんすか!?」
「……お前、やけくそになってない?」
「なってねぇっすけど!? 私をやけくそにさせたら大したもんすよ!」
顔を赤くして大量の汗をかきながらも一緒に着替えればいいと宣言するアリス……確かにやけくそ気味ではあるし、テンパった勢いでどんどん自爆が積み重なっている感じもする。
だが、それでも、ここまで消極的だったアリスが積極的な方向に暴走しているのは、ある意味ではメリットと言えなくも無い。あまり暴走し過ぎているようなら止めるが、このぐらいはむしろいいかもしれない。
「……じゃあ、まぁ、そういうことなら一緒に着替えてさっさと入ろうか」
「そ、そっそ、そそ、そうしましょう! くっ、カイトさん、相変わらず余裕そうっすね……ぐぬぬ」
「はは……」
やっちゃった感というか、動揺が見て取れる様子で悔しそうに告げるアリスには言えないが……実は俺もそんなに余裕が無いというか、結構緊張してきている。
というのも、確かに混浴はいままで何度も経験したことはあるが……そのほぼ全てで脱衣所は別だったり、先にどちらかが入っていたりというパターンばかりだったので、同じ空間で着替えをするというのは初である。
「あ、えっと、そういえば、アリスの服って魔力で作ってるわけじゃないんだっけ?」
「へ? え、ええ、まぁ、いろいろ調整はしてますし、インナーは魔力で作ったものですけど……そうっすね」
「そっか……」
そもそも、アイシスさんやクロといった面々は己の魔力で服を作り出しており、着替えは一瞬で終わる。それに対して、アリスは素材を用いて己で製作した服を着ているので、なんか少し違う。
少ししておもむろに俺もアリスも着替え始めるが、結構心臓の音がうるさいというか緊張している。いや、これから混浴をしようとしているのになにを変な緊張をと自分でも思うが、なんか着替えだとか下着姿だとかには、混浴とは違った扇情的な部分があるというか……ああ、いや、何考えてるんだ俺、やっぱり変に緊張しているな。
「……」
「……」
互いに無言になりつつ服を脱いでいく、できるだけ視線はそらすようにしているが、それでも時折チラッと着替えているアリスが視界の端に映る。白い下着……それもかなり可愛らしいというか、凝ったデザインのものを身に着けているのが見えた。
顔に血が集まるのを感じて、脱ぎ終わって浴室に入ることには、着替えの影響でなんか互いに変な緊張感というか、空気感になっていたのはある意味では必然なのかもしれない。
シリアス先輩「あひぃ……あ、あかんこれ……混浴しっかり描写するパターンのやつだ……ひぃぃ」




