月明かりの差し込むコテージで⑦
ベランダから戻ってきて時計を確認してみると、それなりに遅い時間になっていた。思った以上に長くベランダに居たみたいだが、アリスの要望通り……かどうかはわからないが、十分イチャイチャできたと思う。
アリスは恥ずかしそうにこそしているが、少し前までのようなガチガチな感じではなくある程度は慣れ……もとい諦めてきた感じだ。
「それで、アリスの想定だと次は風呂だったっけ?」
「……ま、まぁ、その通りなんですが……う~ん。いや、私もここまできて恥ずかしいからやっぱやめたとか、そんなことは言いませんが……お風呂には嫌な思い出が多くて……」
「あぁ……」
苦虫を噛み潰すかのような表情を浮かべるアリスを見て、言われてみればと思い至る。いままでにもアリスとは何度か一緒にお風呂に入る機会があったが、コイツは高頻度で恥ずかしい目にあっている。
いや、あっているというか本人が自爆しているというか、ともかく風呂場でのトラブルはある意味アリスには軽いトラウマのようになっているようで、嫌がおうにもそれが思い浮かぶ様子だった。
「なにせ、いままでも鬼畜なカイトさんの手によって、風呂場では様々な辱めを受けて泣かされてますからね。恐ろしかったり、恥ずかしかったりの記憶がよみがえりますよ」
「おいこら、とんでもない記憶の捏造をするんじゃない。ほぼ全部お前が自爆しただけだからな……」
いや、恥ずかしい思いをしたっていうのを否定する気はないが、最初に混浴した時のハプニングはアリスが俺の座っていた風呂用の椅子を蹴飛ばしたのが原因だし、クロたちも含めて混浴した際には変身魔法で姿を変えたことによって調子に乗った結果、シロさんの祝福で魔法を強制解除されたが故である。
もちろんアリスだって意図してそうしたわけではないというのは分かっているが、かといって俺のせいかと言われればまったく違う。
「いやいや、カイトさんはいままで数々の女性と混浴を経験してきた混浴マイスターかもしれませんが、私は素人なんですよ。そういう場面では、玄人がしっかりリードしてフォローしてくれるべきなんです。というわけで、カイトさんのせいっす」
「暴論ここに極まれり……というか、誰が混浴マイスターだ。まったくそんなことは無……」
「恋人の中で混浴してない人いるんすか?」
「…………せめて、マイスターって呼び方はやめよう変態みたいに聞こえる」
これが論破されるという状況だろうか? とにかくなんの反論もできなかったというか、確かに全員と一度は混浴しているし、なんならライフさんとかクロノアさんとかアインさんとか、恋人じゃない人とも混浴しているので、マジで反論できない。
い、いや、確かに不思議なぐらい混浴と縁があるというか、時々俺自身も風呂場に呪われているのでは? とか、そんな風に思ったりもするが……。
「……ま、まぁ、その、恋人は別にいいんじゃないかな?」
「恋人になる前から混浴してる相手も居ねぇっすか?」
「……と、とりあえず、風呂場に行くか……あっ、湯貼ってるかな?」
「誤魔化しましたね。まったく……え? あっ、待ってください、カイトさん。これもうすぐ行く感じの流れになってますよね? まだ私心の準備が――あっ、ちょっ、手を引っ張らないで……こ、これ、余計なこと言ったかも……」
とりあえず居たたまれない気持ちが凄かったので、アリスの手を強引に引っ張って風呂場に向かった。
マキナ「さぁ、シリアス先輩はどれを選ぶかな? 私は、シリアス先輩の選択を尊重するよ!」
シリアス先輩「いや、実質一択という以前に……まったく選択肢が私が言ったことへの返答になってないんだけど!?」
マキナ「なんで? ちゃんとなってるよ?」
シリアス先輩「なってねぇよ!? 私は『どうやったら砂糖展開を回避できるか』って質問をしたんだぞ!!」
マキナ「うん。だから『どうやっても砂糖展開は回避できないから、諦めて愛しい我が子を愛でよう』って選択肢を提示してるでしょ?」
シリアス先輩「……あっ……これ……そういう……」




