月明かりの差し込むコテージで⑥
アリスが用意してくれたココアの入ったマグカップをもってベランダにでる。夜の海風は少しひんやりとしていたが、ハイドラ王国自体がかなり温かい気候なこともあって心地よさを感じた。
今日は月が非常に明るいので星の輝きは控えめだが、その分明るく大きな月が海の上にある光景は絶景と言って差し支えないものだった。
「これは絶景だな」
「ですね。おっと、カイトさん。コレはあの有名な台詞を言うチャンスなのでは?」
「はいはい。月が綺麗ですね」
「なんでそんなあっさり言っちゃうんすか!? もっとこう、もったいぶってくださいよ!」
「いや、相手が待ち構えている状態で言うのも、どんなテンションで言っていいか分からないってのがあるんだよなぁ」
さぁこいという感じで身構えられると言いにくいというのは普通にあると思う。というか、特にその台詞は、不意打ち気味だからこそ生きる台詞だと思う。
そうして苦笑しつつココアを口に含む。甘く温かな味が口の中に広がり、なんと言うかホッとしたような心持ちになる。
「で、なんだったっけ? 手とかを触れ合わせるんだったっけ?」
「そ、そうっすね。最初は指先が軽く触れるぐらいで、そこから徐々に時間をかけて、こう、手を繋いだりとか……」
「……しゃらくさい」
「ひゃっ!? な、なんでいきなり手を握るんすか!?」
「いや、なんかアリスの想定で進んでたらすごく時間かかりそうだし……というか手はさっきまでも繋いでただろ……」
ともかくヘタレまくっているというか、アリスいわく恋愛クソ雑魚状態っぽい感じであり、できるだけアリスの要望は叶えてあげたいという思いはありつつも、アリス主導ではいつまでたっても進まないという思いもあるので、時短は必須である。
「それで、アリスの想定としてはこの後は?」
「あぅ、そ、そそ、それは……その、こ、こうして密着していいムードになって……自然と、触れ合うような軽いキスをですね」
「ムードはもう結構いいと思うけどな。静かで綺麗な景色だし、このコテージまで歩いてくるのに結構楽しく会話もしたしな」
「それはその……そうなんですが……心の準備的な……いろいろが……あるわけで……」
俺の言葉を聞いたアリスは、消え入りそうな小さな声で呟く。つまり要約すると、「恥ずかしい」とただそれだけではあるが、それがなんともアリスらしくて思わず苦笑した。
「なんで笑うんですか!?」
「いや、可愛いなって」
「んなっ!? あ、い、いい、いきなりなにを!?」
「いや、普段とのギャップっていうか、恥ずかしがってしおらしくなってるのもなんか可愛いなぁって、そう思っただけ」
「カイトさん、余裕あり過ぎじゃないですか!?」
「なんで余裕があるかと言えば、俺が緊張とかするより遥かにアリスが緊張しまくってるから、こっちは逆に落ち着いてるやつだよ」
「うぐぐぐ……そ、そんなのズルいじゃないっすか……私はこんなに恥ずかしいのに……」
「いや、ズルいと言われても……」
不満そうに告げるアリスだが、別に俺が狙ってそういう状態にしているわけでもないのでズルいと言われても困ってしまう。
ただそう言って口を尖らせて不満そうにするアリスもなんだか可愛らしくて、思わず笑みがこぼれた。そして俺はそのままマグカップをベランダの手すりの上に置き、空いた手でアリスの肩を掴んだ。
「……ぁっ……カイトさん……」
俺の動きでなにをしようとしているのか分かったみたいで、アリスはピクッと体を動かして俺を見上げてきたが、すぐに目を閉じて唇を少し前に出した。
軽く触れるようなバードキスということだったので、アリスの唇に軽く触れて顔を少し話して、もう一度軽く触れさせる。
「ちゅっ」という音が何度も聞こえ、普通に長くキスするのとは違った感覚で、耳がくすぐったいような……そんな感じがした。
ある程度キスを繰り返すと、アリスの方からも唇を当ててくるようになり、しばしの間どちらともなく何度も何度も触れ合うように唇を重ね続けた。
シリアス先輩「教えてくれ、全知の神! どうすれば、砂糖展開から逃れることができるんだ!!」
マキナ「選択肢は三つ……①愛しい我が子を愛でる。②愛しい我が子を愛でる。③愛しい我が子を愛でる……好きなのを選んでいいよ!!」
シリアス先輩「え? いや、あの……はい?」




