夜が更けるまでの間に⑧
アリスと写真を撮った後も楽しく祭りを周っていたのだが、あるタイミングからなにやらアリスがソワソワした様子を見せるようになった。
表現するのは難しいが、なにかのタイミングを計っているというかそんな感じだ。けどなにがというのは思い浮かばない。
「なぁ、アリス……なにをそんなにソワソワしてるんだ?」
「うぇっ!? あ、いや~その……大したことじゃないっすよ! ほ、本当に大したことじゃないです!!」
「……大したことありそうな言い回しだなぁ」
分かりやすいぐらいに慌ててるんだよなぁ。そしてなんか、顔が赤い……恥ずかしがっているのは分かるが、そうなる要因がわからない。
ここまでの出店に変なところは無いし、写真を撮ってからそれなりに時間も経っているので恥ずかしさを引きずっているとかでもなさそうな気がする。
「あ、あ~カイトさん! あっちの方とか、面白そうな出店がありますよ!」
「うん? あっち? ……通りから外れてないか?」
「ああいうところにこそ、穴場の店があるものですよ。ささ、行きましょう」
「なんか怪しいなぁ……まぁ、いいか」
明らかにワザとらしいが、アリスの方も俺が訝しむのは分かった上でやってるんだろう。となると俺にバレるのは承知でなにか出店に仕込んでいるのだろうか?
そんな風に考えながらアリスに手を引かれて移動すると、通りから外れた場所にポツンとくじ引きの出店があった。
怪しい……迸るほど怪しい。確実になんか仕込んでるだろ……。
「……なぁ、アリス。結局何が目的なんだ?」
「何の事っすか……おっと、くじ引きがありますね。せっかくですし、引いてみたらどうですか?」
「……う~ん。いったい何がしたいんだか……」
とぼけるアリスに首を傾げつつ、言われた通りに出店でくじを引いてみる。ガラポン抽選になっており、それを回すと金色の球が出てきた。
「おめでとうございます! 特賞です!」
「……ど、ども」
なんだこの微妙な気持ち……だってこれ完全に仕込んでるもん!? 俺が特賞引くことありきのガラポンだもん! おめでとうとか言われても、どういう顔していいか分からねぇよ……。
というか、特賞はいったい何なんだ? たぶん、それがアリスの目的に関係しているとは思うんだけど……。
「特賞は、プライベートビーチ付き高級コテージのペア宿泊券です」
「え? あ、ああ、えっと……コテージのペア宿泊券?」
「はい。ただし利用期限は『今日まで』となっておりますのでご注意ください」
「今日!?」
唖然としながら店主から受け取った封筒の中身を見ると、地図と宿泊チケットが入っていた。くじの賞品の宿泊券で、利用期限が当日限りとかそんなのあるか? い、いや、まぁ、くじは完全にこれを渡すための振りでしかないので、実質これはアリスからプレゼントされたようなものである。
「うん? えっと、つまり、今日は家に帰らずにコテージに泊るって……うん? プライベートビーチ付き、コテージ……ううん?」
あれ? なんかこれ覚えがあるぞ、プライベートビーチ付きってことは海辺のコテージだ。そして、今日宿泊という関係上建国記念祭が終わった後……いつまでいるかはともかくとして、夜になることは確実だろう。
今日は雲一つない晴天なので、夜も月が綺麗に見えるはず。
……月明かりの差し込む、海辺のコテージ?
それを認識した瞬間、俺も顔に熱が集まっていくのを感じた。そして、アリスの挙動不審な様子にここにきてすべて納得した。
つまりまぁ、その、アリスの覚悟ができたというか、そんな感じなのだろう。そして、くじの形で俺に渡してきたのは、以前「連れて行ってください」と言っていた関係で、俺の方から誘ってほしいというメッセージだろう。
「あ~えっと、アリス……」
「は、はひっ!?」
「……せっかく当たったし、今日は一緒に泊るか」
「そ、そそ、そうっすね。そうしましょうか……」
俺の言葉に赤すぎるほどに真っ赤な顔で頷いたあと、アリスは無言でスコップを取り出した……うん?
「ちょっと待て、お前……なにしてる?」
「あ、いや、恥ずかしさが限界超えそうなのでしばらく潜ります」
「ツッコミどころが多すぎるけど、とりあえず落ち着け……というか街に穴掘ろうとするな!?」
う、う~ん……えっと、こんな調子で本当に大丈夫なのだろうか?
シリアス先輩「……オワッタ」




