ハイドラ王国建国記念祭⑦
いくつかの出店を見て回った後は、海竜行進の時間となったため移動することになった。今回俺たちが持っているのは、席が指定されているチケットである。他にも指令された範囲内の任意の場所で立ち見をするチケットもあるが、そちらは安価な代わりにかなり混雑するとのことだ。
指定席の方は椅子なども用意されて一定のスペースは確保されているらしく、イメージとしてはハーモニックシンフォニーの際にクロが呼んでくれた席みたいな感じかな?
「しかし、こんな偶然があるものなんですね。まさか、私たちと快人さんたちの席がすぐ隣とは……いえ、一緒に見れるのでむしろいいことではあるのですが」
「あはは、そうですね。偶然って凄いですね」
ノインさんの言葉に若干顔が引き攣るのを感じつつ言葉を返す。正直偶然と考えるよりは、アリスがなんらかの手を回したと考える方が自然だ。
アリスの力をもってすれば、席の調整ぐらい容易く行えるだろうし、さらに言えばノインさん側もチケットを預かっているのはハプティさんということなので、ほぼ確定だろう。
まぁ、だからといって困ることは無い。ノインさんが口にしたように一緒に見ることができるという利点があるだけだ。
チケットを係員に見せて案内してもらって席に座る。流石指定席というだけあって大通りがよく見える位置である。
ここは通り的にはカーブに位置する場所で、海竜が大きく動くのが見られる人気の場所らしい。
「そういえば、ノインさんたちは海竜行進のあとはどうするんですか? 俺とアリスは、セレモニーを見に広場に行くつもりですが……」
「私たちも広場には行っているつもりです。気恥ずかしさはありますが、今回はメッセージを寄贈した立場なので、どんな風に発表されるのか気になりますからね。いえ、当たり障りのないことしか書いてないのですが……」
「まぁ、そんなわけでセレモニーまでは一緒でいいんじゃないですかね? 普通にセレモニー見に行くのは混雑がヤバそうなので、その辺りはアリス様になんとかして貰う感じで!」
「はぁ……いや、まぁ、いいんですけどね」
海竜行進を見終わった後で議会のある広場に移動すれば、ちょうどセレモニーの時間である。ノインさんが寄贈したメッセージも気になるので、それを見に行こうという話になっていた。
そしてノインさんとハプティさんも同じ予定とのことなので、セレモニーまでは一緒に行動してその後は別行動という形で話し合った。
アリスにセレモニーまでの道を確保してくれるように頼むハプティさんに、アリスが呆れたような目を向ける……本当に違和感が無いというか、分かってても同一人物なのを忘れそうになるレベルである。
そんな風に考えていると、海竜行進が始まったようで太鼓や笛の音が聞こえてきて視線を向ける。大きな竜の顔を胴体を模した飾りがあり、その巨大な飾りを数人がかりで棒で支えつつ、頭や胴体にそれぞれ人が居て、上手く息を合わせてひとつの大きな竜が動いているように見せる。
「おぉ、凄いですね。思った以上に巨大で、迫力があるというか……」
イメージとしてはノインさんが言っていた通り獅子舞などが近い感じだが、エインガナさんを模しているだけあって、海竜の飾りは非常に巨大であり、頭部分を支える棒だけでも10人近い人が協力して支えている。
軽快な太鼓や笛の音も相まって、なんと言うか祭りって感じが凄く強くて、見ていて心が弾む。
神輿や獅子舞などと言ったものが人の視線を惹きつけるように、この海竜行進もかなり見ごたえがあって素晴らしい。
たくさん練習したであろう息の合った動きもそうだが、元々観客に見せることを前提に考えられているからか、海竜の動きも観客の視線を意識したものであり、随所にこちらを楽しませる工夫が施されていて見ていて飽きない。
カーブを大きな海竜が通過するまでの時間はそれほど長くなく、すぐに見えるのは後ろ姿だけとなったが、それでも凄いものを見たという興奮が心に残り続ける非常にいい行進だった。
「ちなみに豆知識ですけど、モデルであるエインガナさんは、あの飾りを見て……『も、もう少し私の顔は小さくないでしょうか?』と呟いていたらしいですよ。実際のサイズ考えるとむしろ本物の方がデカいんすけど、竜も小顔気にしたりするんすかねぇ」
「……その情報はいまはいらなかったかなぁ……」
いや、エインガナさんも女性なので小顔とか気にするのはいい。竜種の小顔がどうとかは人間である身ではよく分からないが、それは別に個人のことなのでいいが……ここでその情報は、なんというか余韻が台無しになる気がする。
シリアス先輩「意外と自分のサイズを気にしてる? 四大魔竜の中ではグランディレアスに次いで二位の体躯なわけだし、おかしくは無いのか? ニーズベルトは小柄なのを気にして、エインガナは大柄なのを気にしている感じか……」




