ハイドラ王国建国記念祭⑤
ノインさんとハプティさんのじゃれつき……もとい、ノインさんによる折檻が終わった後で、アリスが亜空間を作りだして、以前オリビアさんにしたようにその中でノインさんの変装をコーディネートした。
結果ノインさんは、普段とはガラリと印象の変わるデニムのズボンにジャケットというカジュアルスタイルとなり、顔に関しては帽子とサングラスで変装する形になった。
「……かなり印象が変わりますね。これ、普段ノインさんの顔見てる人でも、すぐには分からないかもしれないです。けど、そういうカジュアルな服もよく似合ってますよ」
「あ、ありがとうございます。あまり着慣れない服ですが……動きやすくていいですね。確かにこれなら、服装と帽子、そしてグラスだけでこうまで印象が変わるとは……認識阻害魔法を知っているからこそ、変装を大袈裟に考えていた部分はあるかもしれません。シャ……アリス様、ありがとうございました」
「いえいえ、そのぐらいはお安い御用ですよ」
シンプルな変装でも十分気付かれなくできるということを知ってか、ノインさんは嬉しそうにアリスにお礼を言って、アリスも穏やかに微笑み返す。
傍目に見れば、アリスがノインさんに有益なアドバイスをした心温まる場面のはずだが……そもそもさっきまでの変な変装がハプティさんの入れ知恵によるものなわけで、それをアリスがフォローして修正……あまりにもマッチポンプで、正体を知る俺としてはなんとも言えない顔になってしまう。
い、いや、まぁ、ハプティさんは独立して思考して行動しているわけだし、ノインさんに対するハプティさんの態度としてはそれが正解なのかもしれないが……う~む、こんがらがってくる。
やっぱり、アリスとハプティさんは実際はどうあれ、別人として考えておいた方が精神的に優しいかもしれない。
「うんうん。よく似合うよ、ノイン。概ね、ボクのアドバイス通りの格好だね」
「……ハプティ、貴女反省してますか?」
「してる。ものすっごくしてる。痛い目にも合ったし、深~く反省してる……けどまぁ、それはそれとして過ぎたことなわけだし、あまり深く気にし過ぎても仕方ないよね」
「完全に反省してない台詞ですよね!?」
ケラケラと笑うハプティさんにノインさんが鋭くツッコミを入れるが……怒っていることは怒っているのだろうが、それはそれとしてどこか楽しそうにも見える。
心許せる相手というか、ノインさんがこうして素に近い感じで怒ったりできるぐらいハプティさんは、ノインさんにとっては特別な親友と呼べる相手なのだろう。
「そういえば、話が逸れましたけど、おふたりは祭りの観光に?」
「そうそう。ノインがさ、ラグナに上手く言いくるめられて疲れてたから、気晴らしも兼ねて遊びに来たんだよ」
「ああ、例のやつですね。やっぱり予め用意してたわけじゃなくて、急遽の品だったんですね」
「ええ、まぁ、別にいいんですけどね。私も生存していることを隠していたりするわけではないですし、単に表に立ったり目立つのが気恥ずかしくて嫌なだけですから……」
そういえば、リリアさんと顔合わせの際にも「正体を明かしても構わない」と発言していたし、ノインさん的には目立ちさえしなければ生存していることを知られるのは問題ない感じがする。
初代勇者のネームバリューは本当に強く、ノインさんが表舞台に立てば各国の王や六王と同格のようなポジションとして認識される可能性は高いだろうし、ノインさんの性格的に絶対嫌がるだろう。というか、事実それを嫌がって、普段は全身甲冑を着てるわけだし……。
あと、ノインさん的には己はもう「役割を終えて退場した存在」であり、表舞台に再び立つというのは納得できない部分もあるんだと思う。
「まぁ、せっかく会ったわけですし、少し一緒に周りますか?」
「え~上司と一緒に周るとか、結構な罰ゲームなんですけど……」
「私たちと一緒に行動している間は、カイトさんの奢りですよ」
「偶然でもこうして、知り合いと会った以上、すぐにお別れってのも味気ないですし、是非ご一緒させていただきますよ!!」
おいこら、なに自演した上に俺の財布の中身の消費速度を倍化させようとしてやがる。ハプティさんも守銭奴なこともあって目を輝かせて了承するし……こうしてみると、やっぱ同一人物だけあって似てる部分もあるか……。
シリアス先輩「実際ノインはハプティといる時は普段よりテンション高い感じがして、仲の良さは伝わってくる。連絡取れるようになってしょっちゅう一緒に行動してるし……」




