ハイドラ王国建国記念祭③
アリスと他愛のない会話をしつつ建国記念祭を周る。最初のエリアで軽く腹ごしらえはできたので、次はイベントのようなものを見たいところだ。
基本的に首都全体が賑わう建国記念祭では、イベントには事欠かない。あちこちでイベントをやっており、楽しげである。
「その海竜行進ってのは、チケットが無いと見るのは無理かな? ちょっと興味はあったけど……」
「チケットありますよ? はい」
「……すっごい当たり前のように出すよな」
「有能超絶美少女のアリスちゃんは、こんなこともあろうかと事前に用意しておきました」
準備がよすぎるというか、的確過ぎる。アリスのことだから、俺が海竜行進に興味を持つのも計算ずくなのだろう。
まぁ、チケットはありがたく利用させてもらうことにするが、それでも海竜行進は昼からという話なのでまだ時間はある。
「それまでは、なんかあちこちでやってるプチイベントみたいなのを見て回るか……」
「そうっすね。いろいろありますよ。大食い大会とか、オークションみたいなのもありますし……割と雑多ですよね」
「まぁ、こういうゴチャゴチャした感じもハイドラ王国らしさってやつなんだろうな」
そんなことを話しつつ視線を動かしてどれを見ようか考える。オークションも興味あるけど、特にほしいものがあるわけじゃないし、なんか大会っぽいのを見るのもいいかもしれないな。
そんな風に考えていて、ふとあることを思いついたので、アリスに声をかける。
「そういえばさ、アリス。確認なんだけど、これってデートだよな?」
「……そ、そうっすね……ま、まぁ、私とカイトさんは恋人同士なわけですし、必然的にこうしてふたりで出かけているなら、で、デート? と、言えなくもないかもしれないですね」
「お前、デートの一言で動揺し過ぎだろ」
「ど、動揺? してませんけど? 私を動揺させたら大したもんですよ……」
たぶんだけど、あえて意識しないように思考の奥底に排除していたのだろう。分かりやすいぐらいに目が泳いでるし、声も上ずっている。
自分から言い出す分には平気な癖に、俺の方から言うと動揺するのが……なんというか、安定のアリスって感じで可愛い。
「まぁ、動揺云々は置いておいて、せっかくのデートだし手を繋いで歩くか……」
「それは少し真昼間からえっちすぎるのでは?」
「……いや、いままでも何回も手を繋いでデートしたような? なんかお前、いつにもまして反応が過剰じゃない?」
「そそそそ、そんなことないっすけど!? いや、本当に、マジで! 手? 全然いいですよ。さっ、繋ぎましょう!!」
「お、おぅ……」
う~ん。やっぱりなんか様子が変な気がする。アリスは元々恥ずかしがり屋で、恋人らしいことをすると動揺したり赤くなることはいままでにも多かった。
しかし、今回はやたら意識し過ぎている感じがするというか、どうにも妙である。ただ悪だくみという感じではない……う~ん、流石に情報が少なすぎてわからない。
首を傾げつつ、アリスと手を繋ぎ改めて歩き出しながら声をかける。
「……アリス、やっぱりなんか変に緊張しているというか、さっきまでと違い過ぎないか?」
「なんでもないです。本当に何でもないです。ないったらないです……さぁ! 気を取り直して遊びましょう!!」
「完全になんかあるやつっぽいんだけどなぁ……」
強引に俺の手を引くアリスに呆れつつも、これ以上無理に聞く必要も無いかと結論付けた。とりあえず、その内分かるだろうと、そんな感じがしたので……いまはとりあえず、祭りを楽しみつつ待つとしよう。
シリアス先輩「ふむ、嫌な予感しかしないけど、なにを考えているのやら……」




