祭りの前の前兆
ハイドラ王国の建国記念祭に関しては、本当に特に大きなことが起こるわけでもなく開催日が近づいてきた。
フォルスさんも送り届けており、ラグナさんがしっかり王城に確保……もとい当日まで泊まらせるとのことらしく心配ない。
なんか宮廷魔導師を複数人呼んでフォルスさんの部屋に、中から勝手に出られないように術式を施していたみたいだが……まぁ、正しい判断だと思う。
「いや、しかし、なんだかんだでシンフォニア王国の建国記念祭も、アルクレシア帝国の建国記念祭もバタバタしたみたいだけど、ハイドラ王国はそんな風にはならなそうで、安心したよ」
「……う~ん。なんだろ? なんとなくボクの感覚ではあるんだけど、カイトくんがそうやって楽観視してるとなにか起こりそうな気が……」
「不安になるようなこと言わないでくれ……」
呟いた俺の言葉に、ベビーカステラを食べていたクロがなんとも不吉な言葉を告げる。いや、気持ちは分からないでもないというか……実は俺も、あまりにも平穏に行き過ぎているのではという思いがあって、さっきのようなセリフを口にしてしまったところもある。
「……そういえばクロ、ハイドラ王国の建国記念祭に六王の参列ってどうなってるの?」
「ああ、ハイドラが気に入ってるメギドと、シンフォニアとアルクレシアの両方に出たリリウッドが参列するよ」
「ふむ。リリウッドさんは結局皆勤賞になるわけだ」
「カイトくんも三つ全部出てるけどね」
「そういやそうだった」
メギドさんとリリウッドさんの参列に、初代勇者パーティのフォスルさん、更にはノインさん……もとい初代勇者からのメッセージも公開されるとなると、話題性で言えば他の二国にもまったく引けは取らない。
印象的にはシンフォニア王国は六王と繋がりが深く、アルクレシア帝国は神族と繋がりが深く、ハイドラ王国は初代勇者と繋がりが深いという風な印象を受ける。
しかしまぁ、聞けば聞くほど何も起こりそうにない安定した感じである。まぁ、なにも起こらないのが一番ではあるが……ここまでなにも兆候が無いと、それはそれでやっぱり不安である。
「まぁ、でもなにかが起こるにしても、シンフォニアやアルクレシアを超えるような事態には早々ならない気がする」
「それはそうだね。ボクも含めた六王もそうだけど、もういまさら参列が増えるような状態にはならないだろうしね」
「たしかに、参列者はもう決まってるわけだし、後はシロさんが突発的に来たりしない限りは大丈夫だよな。それに関してはアルクレシア帝国の時に一回やってるし……」
「最高神もシロの指示が無ければ進んで参列はしないだろうから、やっぱり何も起こりそうにないね……あ~地球神はどうだろ?」
「エデンさん? う~ん、いや、実は俺も心配になって確認したけど、今回は参加したりする気はないみたいだったよ」
実際、エデンさんの襲来は危惧していたので本人に聞いてみた。すると、あっさりと今回は参加するつもりも邪魔する気も無いと返答してきており、嘘は無さそうな感じだった。
ただなんか、チラチラと俺の後方の様子を伺っているようにも思えたが、振り返ってもなにも無かったのでその辺はよく分からなかった。
ともあれ、そんな感じでなにかが起こりそうな雰囲気ではないかな……。
快人やクロがそう話していた頃、神界の神域ではシャローヴァナルが静かに考えを巡らせていた。
(……シンフォニア王国の際は事前に快人さんからベビーカステラを受け取り、アルクレシア帝国の際には地球神との協定で祭り中は現地には訪れませんでした。しかし、ハイドラ王国に関してはなんの約束事もしてはいない……であれば、行っても問題ないのでは?)
シャローヴァナルはその立場もありシンフォニア王国の建国記念祭でも、アルクレシア帝国の建国記念祭でもしっかりとした形で快人の店を訪れることはできていない。
……そして、本人はそれぞ若干不満に思っていた。ただ今回のハイドラ王国の建国記念祭に関しても、快人はアリスと回ることを約束しており、それを邪魔する気にはならなかった。
ただ、それでも、なにかアクションは起こしたいとそんな風に考えており、いい方法を探している最中だった。
(……快人さんとアリスのデートを邪魔せず。祭りらしいことを快人さんと楽しむ……ふむ……)
シリアス先輩「おっと、胃痛フラグ建ったぞ……」




