迷子のハイエルフ⑪
残業で遅くなったので、短めです。
ラグナさんに案内されて食堂に辿り着き、フォルスさんと並んで席に座り、ふと思った。なんとなく離すタイミングも無く手を繋いだままであるが、どうしようかと?
いや、もちろん着座したいまが手を離すには絶妙なタイミングなのだが、フォルスさんが結構しっかりと俺の手を握っているので、どうも離すのが少し気が引ける思いだった。
とはいえ、これから食事なので手を繋いだままというわけにもいかず、ラグナさんが厨房に確認に行ったタイミングで声をかけた。
「……えっと、食堂に着きましたし手を離しましょうか」
「あっ……ああ、そうだね。手を繋いだまま食事を食べるというわけにもいかないし、適切なタイミングだね。いやはや、本当に君には世話になりっぱなしで申し訳ない」
あ、あれ? 選択間違えたか……なんか、一瞬滅茶苦茶名残惜しそうなというか、寂しそうな顔したように見えた。なんか妙に罪悪感を覚えるが、しかし、マジでこのままだと手を繋いだまま食事となりかねないので仕方ないと言えば仕方ない。
まぁ、ずっと手を繋いでいたのを離すと寂しさを感じるという気持ちは理解できるし、こういうのは誰でも抱きがちだと思う。
そんなことを考えていると、厨房に行っていたラグナさんが戻ってくる。
「もう準備はできているみたいじゃが、運んできてもいいか?」
「あ、はい。お願いします」
俺の返答を聞いたラグナさんはメイドに指示を出して料理を運ぶように言った後、俺の隣……フォルスさんとは逆側に座る。
「……ラグナさん、ひとつ聞いていいですか?」
「うん? なんじゃ?」
「なぜこんなに広い食堂の、これだけ大きなテーブルで……こんなに距離をつめて座るんですか?」
「別に広いテーブルを全部使わなければならん決まりなど無いじゃろ? それに、お主らだけいちゃいちゃと並んで座っておるのに、ワシを除け者は酷いじゃろ」
「……ラグナ? もう一度地面に埋めて欲しいのならそう言ってほしいね。あくまで私と彼が隣り合って座っているのは、先ほどまで手を繋いでいたという関係上仕方がないことだ。そもそも、手を繋ぐ原因となったのは君がハミングバードで変な指示を出したからだろう」
「……的確な指示じゃろうが……」
実際、俺もラグナさんの指示は的確だったと思う。手を繋ぐないしなんらかの対応をしてなければ、フォルスさんはほぼ確実にはぐれていたと思うので、手を繋いだのは正解のはずだ。
ラグナさんはどこか呆れたような表情を浮かべつつ返答し、そのあとでニヤっと笑って俺の横腹を肘で軽く突く様にしながら告げる。
「ほれ、カイト、両手に花じゃぞ?」
「あ~自称花くん、変な絡み方をしないように、彼が困っているだろう? あと、彼は比較的そういった状態には慣れているとは思うが……彼の恋人のそうそうたる面々を思い浮かべた上で、己を花だと自称できているなら大した度胸だと感心するよ。いや、君以上に私程度のレベルになると、彼ぐらいのプレイボーイにしてみれば見慣れた平凡なレベルでしかないだろう?」
「え? いや、フォルスさんはとても可愛らしくて魅力的な女性だと思いますけど?」
「…………………そう……かい。それはどうも……」
思うままのことを告げたのだが、フォスルさんは照れたのかそっぽを向いてしまって、その後しばしこちらに顔を向けることは無かった。
シリアス先輩「……よくない……とてもよくない雰囲気だ」




