迷子のハイエルフ②
フォルスさんを連れてやってきたのは、シックな雰囲気のカフェだった。エルフ族を連れて行くのならもっと自然の溢れる木造りのカフェとかがいいかとも思ったが、逆にそういうところはリグフォレシアにもたくさんあるだろうと、レンガ造りの店を選んだ。
……まぁ、この店が単純に一番近かったというのもあるのだが……。
「いやはや、いい雰囲気の店だね。前々から思っていたが、やはり君はセンスがいいね。こういった雰囲気の店をスッと選べるあたりから、君の恋愛経験値の高さも伺えるよ。年齢的には私の方が上だが、こういったものはやはり経験値が重要だね」
「はは、ありがとうございます……それで、フォルスさん。そもそもなんで、ハイドラ王国に向かう予定がシンフォニア首都に? 単純にこっちに用事があったんですか?」
ハイドラ王国の建国記念祭に行くはずが、シンフォニア首都に来ているというあまりの方向音痴というか、それを超えた状態に呆れかけたが……よくよく思い返せば、別の用事のついでに先んじてハイドラ王国に行くと言っていたので、その別の用事のためにシンフォニア王国の首都に来て迷ったという可能性も十分にある。
「いや、用事は家の近所で終わったが? ああ、誤解を与えてしまったね。単純に引きこもり気質の私は、家の外に出ること自体が珍しいのでね。せっかく家の外に出るのだからとそのまま足を延ばして、ハイドラ王国に通じる転移ゲートまで行って、ハイドラ王国に行く予定だったのだが……」
「おかしいですね? その想定だと、そもそもリグフォレシアから外に出る必要がないですよね?」
以前の六王祭の時とは違う。人界から魔界に向かう転移門ではなく、人界内を移動する転移ゲートならリグフォレシア内にある。
もちろん転移は高価ではあるが、フォルスさんが転移の代金も支払えないとは思えない。実際本人も転移ゲートで移動する予定だったはずだが……。
「いや、そもそも最初の用事がいくつかの薬草の収集で、家からほど近いとはいえリグフォレシアから出て、森の中で採取をしたんだ。そこまでは順調だったのだが……」
「森の中で迷って、そもそもリグフォレシアに帰れなかったんですね」
「君の洞察力には感嘆させられるね。そう、まさにその通り、そもそも普通の道でも余裕で迷う私が、森の中で迷わない理由などないさ……いや、これでも森の賢者と呼ばれているのだが、それは自然魔法が得意という意味で森を知り尽くしているという意味ではないのでね。いや、普段は店で買い付けているのだが、どうせハイドラ王国に出向くのだから、ついでに少し運動不足の体を動かそうと思った結果がこれだよ……おかげで、想定より遥かに体を動かすことになったので、ある意味では成功かな?」
「大失敗では?」
本来ならリグフォレシアから出なくて済むはずのところを、その場の思い付きで外に出た結果近場の森で遭難したらしい。
ノインさんから聞いた話ではあるが、どうもフォルスさんは研究が絡むと考えなしになるようで、思いついたらどんどん実行してしまうので、フラッとどこかへ行ったり、研究に使えそうなものを見つけると道を外れて採りに行ったりするらしく、結果として迷うとのことだ。
「……それで、その後どうなったんですか?」
「なかなかの時間をかけて森から脱出したのはいいのだが、どうもリグフォレシアとは逆側に出てしまったらしく、別の街道が見えたんだよ。そこで森に戻ってリグフォレシアに戻ろうとすれば、再び森で遭難する可能性が高い。ならば整備されている街道沿いに歩けば、リグフォレシアではないにせよ別の街に着く可能性は高いし、そちらで道を聞くなり転移ゲートを利用するなりすべきと考えたわけだ」
「……ツッコミどころはありますけど、理解できますね。確かに、街道沿いに歩けばいずれ大き目の街には着くでしょうね」
「ああ、そうして到着したわけだ……大きな街に」
「待ってください。リグフォレシアから首都までどれだけ距離があると思ってるんですか……そこまでに、大きな街がいくつもあるでしょ!?」
「いや、私としても不思議なんだが最初に着いたのがシンフォニア王国の首都だったんだよ。いや、なぜそうなったかの原因は分かる。街道を歩いている途中で、少し研究に仕えそうな素材を見つけて、夢中で採取していたら街道から外れてたという、些細な出来事がだね」
「些細というか完全にそれが原因じゃないですか!?」
道に逸れて直線だと山を複数超えるぐらいの距離がある首都に辿り着くって……。しかも、その間にある街を全て綺麗にスルーした上で首都に着くという器用な迷い方。ノインさんがワザとやってるんじゃないかと思うほどと言った意味が、よく分かった。
シリアス先輩「スピードは遅いとはいえ、アニマでも不眠不休でそこそこかかった距離である」




