リリアへの報酬⑫
とりあえず少し……いや、しばらくの時間をかけてなんとかリリアさんを落ち着かせることに成功した。
「リリアさん、落ち着きました?」
「え、ええ、もう万全です」
未だに顔は茹で蛸のように真っ赤なのだが、それを指摘すると余計照れてしまいそうなので黙っておくことにしよう。
しかし、その前のキスに関しては……触れた方がいいのだろうか? まったく触れないというのも難しいし、時間が経てばたつほどリリアさんも気まずさを感じるだろうから……ここは思い切って聞くことにしよう。
「……えっと、リリアさん。先ほどの行動は?」
「あっ、いや、あれはその……で、ですから、私も大人の余裕といいますか、年上の威厳といいますか……た、たまには自分の方から積極的なアプローチをと思いまして……そのぉ……」
恥ずかしさからどんどん顔を赤くしていくリリアさんからは、いまにも湯気が出そうである。
「つまり、リリアさんは……言ってみれば、自分から恋人らしいことをしようとして、ああいう行動を?」
「はっ、はい……そ、そのですね。わ、私だって、その、カイトさんと恋人らしいことといいますか……い、いちゃいちゃ? といいますか、そういうことをしたいという思いはあるんです。ですが、普段は恥ずかしくて尻込みしてしまうので、こういう時に備えて秘かに勉強とイメージトレーニングを……」
「勉強?」
「は、流行の恋愛小説などで勉強して、入念なイメージトレーニングを行ってから臨んだつもりだったのですが……や、やはり、実戦は違いました」
これは少し驚きもあるが、同時にかなり嬉しい言葉でもあった。確かにリリアさんはかなりの恥ずかしがり屋であり、初めてキスした時は気絶してしまった覚えがある。
ただ、恥ずかしいだけであり、リリアさんの気持ちとしては俺ともっと恋人らしいことをしたいという思いがあり、克服のために出来る範囲で努力してきてくれたみたいだ。
「……あっ、その、イメージトレーニングでは、唇にちゃんとできたはずなんです……でも、実戦ではどうしても勇気が出ずに、あんな小芝居を……」
「なるほど……」
無理がある芝居だとは本人にも自覚があったようだ。まぁ、なんというか、ただただリリアさんが可愛らしいという印象である。
恥ずかしそうに顔を赤くして、誤魔化すように人差し指を突き合わせている姿は、年上感というのは皆無ではあるが愛らしさは凄まじかった。
「つまり、ですけど、リリアさんは本当は普通にキスをするつもりだったというわけですか?」
「は、はい。そ、その、い、いい雰囲気だったので……」
「俺からしてもいいですか?」
「あえっ!?」
俺の言葉を聞いたリリアさんは、ボンッと爆発音が聞こえそうな勢いでただでさえ赤かった顔をさらに赤くする。
ここで、追撃をしては駄目だ。キャパオーバーになる可能性があるので、ここはリリアさんの反応を待つ……。
しばらくなにも言わずに、リリアさんの発言を待っていると……リリアさんは、何度も落ち着きなく視線を動かしたあと少し俯き気味で、小さな声で呟くように告げた。
「……い、いいですけど……」
「じゃあ、失礼しますね」
「あっ、は、はい」
リリアさんの了承が貰えたので、そっと手を伸ばしてリリアさんの頬に沿えて優しく顔を上向かせる。赤い顔で上目遣いで潤んだ目を向けてくるリリアさんは、それだけでクラっと来そうなほどの破壊力だったが、そこはグッと堪えつつリリアさんを不安にさせないようにゆっくり顔を近づける。
リリアさんはしばし視線をあっちやこっちに動かしていたが、俺の顔が近づいてくると意を決したように目を閉じて、唇を少しだけ突き出した。
その可愛らしい仕草に思わず頬が緩むのを感じながら、更に顔を近づけ唇と唇を完全に重ね合わせる。
柔らかな唇の感触と、頬に沿えた手から伝わってくる体温……リリアさんとキスをしているのだと強く感じることができて、なんとも幸せな気分だった。
それでそのまま終わればよかったのだが、あまりに心地よい感触にもっと深くキスをしたいという欲望が湧いてくる。
とはいえ、リリアさんの意思を無視するわけにもいかないので、通じるかどうかは分からなかったが、こちらの意思を示すためにキスをしたまま舌で唇を軽くノックしてみた。
するとリリアさんはビクッと肩を動かせた後……ほんの少しではあったが、確実に唇を開きこちらを受け入れる体制になってくれた。
そうなればもう我慢の効くものではなく、欲望に動かされるように深く、深く、リリアさんと長い間キスをした……なお、その後、リリアさんが気絶していたので、ここまではイメージトレーニングはしていなかったみたいだ。
シリアス先輩「……」
ドクターM「ふむ、ふむふむ……今回は水飴かな? うん、甘くて美味しい」




