リリアへの報酬⑧
未知と言っていい機械のドラゴンはリリアさんにとっては非常に興味を引くものらしく、熱心に説明書きを読んで目を輝かせ、次の模型の前に急かすように俺の腕を引いて向かうということを繰り返していた。
「カイトさん! 次は、向こうのを見てみましょう!!」
「これは、完全に全身機械ですね」
「重厚な雰囲気が素晴らしいですね。こちらの世界ではまず見ない形状なので、興味深いです。あの辺りの武装なんかも……」
よっぽどはしゃいでいるのか、リリアさんは俺に体を寄せウキウキとした表情で模型のドラゴンについて語り始める。
普段は恥ずかしがり屋のリリアさんだが、テンションが上がって気付いていないのかいつもよりかなり距離が近い。
ふわりと髪が揺れるたび良い香りが漂ってきて、ほぼ直感的にではあったがリリアさんが風呂上がりであることを察した。
たぶんだけどこの世界に来る前にそれぞれの部屋に戻って準備をしてから合流してきたので、その際にサッと汗を流して入浴してきたのだろう。
なんとなくだけど、汗とか気にしそうなイメージがある。
「……うん? カイトさん、どうしました?」
「ああ、いえ、リリアさんが楽しそうだなぁって……目に見えてテンションが上がってる感じなので、やっぱりドラゴンが好きなんだなぁって」
「そうですね。確かに少しはしゃいでいる自覚がありますね。もちろん、ドラゴンが好きというのもありますが……それだけではないというか……えっと……」
俺の言葉に対して、リリアさんは少し言い淀んだあと頬を微かに赤くして目を逸らしつつ言葉を続ける。
「……その、ほら……この世界は、私か私が招待しない限りは誰も入れないらしいので……その、確実に他の方の目がない場所なので、私も恥ずかしさが少しマシでその分……えっと、その、カイトさんと恋人っぽい雰囲気になれるので、それも楽しくて……」
「リリアさん……」
「あ、いや、普段ももう少し恋人っぽく振舞いたいとは思ってはいるのですが、やはりどうしても恥ずかしさが勝ってしまって、素直になりにくい部分があるわけで……そう思うと、この状況はチャンスだなぁと感じている部分もあります」
リリアさんがそんな風に語るのは非常に珍しく……同時にどうしようもなく嬉しかった。なにせ、リリアさんはハッキリともう少し恋人っぽく振舞いたいと言ってくれた。
それはつまり、まぁ、簡単な言い方をしてしまえば俺とイチャイチャしたいと考えてくれているということだ。普段はなかなかそういうそぶりを見せないリリアさんが、そう思ってくれたことはなんと言うか……かなり嬉しい。
「そう言ってもらえると嬉しいですね……リリアさん、ちょっと相談なんですが、肩を抱いてもいいですか?」
「あ、か、肩ですか……た、確かにそれは恋人っぽい雰囲気ですし、ふたりで模型を見たりするのには適してますね。恥ずかしさはありますが……お、お願いします」
「はい。それじゃあ失礼して……」
リリアさんの了承を得て肩に手を回し軽く抱き寄せる。リリアさんが俺にもたれ掛かる様な形になり、先ほどまでより遥かに密着度が増す。
リリアさんはかなり照れているみたいだが、それでも嬉しそうな感情が伝わってくるので、喜んではくれているみたいだ。
恥ずかしさから少し俯き気味になりつつも、リリアさんは小さく笑みを浮かべる。
「……な、なんだか、これはいいですね。恥ずかしいですけど、安心できるというか、カイトさんを近くに感じられるというか……へ、変な言い方ですけど、カイトさんに甘えたいという欲求が湧いてくる感じといいますか……」
「むしろ俺としては、甘えてもらえると嬉しいですよ?」
「あぅ、そっ、それはまぁ、追々……もう少し、胸のドキドキが落ち着いてからで……」
そう言ってこちらを見上げて赤い顔で笑うリリアさんは、いつもより少し幼い印象で……なんというか、大変に可愛らしかった。
シリアス先輩「あぁぁぁぁ!? やっぱりそっちに舵切りやがった!! 嫌な予感はしてたけど……」
???「まぁまぁ、少し落ち着きましょうよ、先輩」
シリアス先輩「うるせえぇ! この上でさらにお前とのデートも控えてるからこっちは頭が痛いんだよ!!」




