リリアへの報酬④
アリスが用意した亜空間は、なにも無い白い地面が無限に続くような場所だった。
「アリス、この空間ってどうやって用意したの?」
「え? 私が作りましたよ。世界創造とかのレベルならともかく、一時的に空間を作り出すぐらいなら私にも余裕ですしね」
「お前もなんだかんだで、全能みたいなもんだよなぁ……」
どうやらこの空間はアリスが作ったらしい。一瞬これも世界の創造ではないかと思ったが、アリスの口振り的にこの空間は一定時間で消える感じっぽい。
俺から見ればアリスも全能みたいなものではあるが、世界創造はまた少しレベルが違うらしい。或いは転移魔法とかみたいに個人に得手不得手が大きいのかもしれない。
かつてアリスが居た世界を創った大邪神は、いまのアイシスさんより力は弱かったということだし、単純な力ではない部分が大きい可能性もある。
ともあれ亜空間でリリアさんとアリスが向かい合い。俺は少し離れた場所にアリスが貼った結界の中で、シロさんに貰った眼鏡をかけて戦いを見学する。
いや、戦いというかリリアさんの心具の検証がメインである。
「それじゃあ、リリアさんどうぞ」
「あ、はい。目覚めよ! 我が心の刃! 天振る光は我が胸に――注ぐ大地は我が腕に――歩む導は我が足に! 到達せよ! 可能性の果てへ! 示せ! 天剣――オートクレール!」
リリアさんが力の籠った言葉を告げると、リリアさんの手に美しい装飾が施された白銀の大剣が出現する。戦闘用ではなく儀礼用のような雰囲気ではあるが、強力な魔力を感じるので間違いなくアレがリリアさんの心具だろう。
「じゃあ、まずは普通に能力使って一撃打ってみましょうか……遠慮なくどうぞ、私は避けませんので」
「……はい! 参ります!」
アリスの言葉に応じてリリアさんがアリスに接近し、大剣を振り上げた……ところまでは、眼鏡をかけた状態の俺には見ることができた。
だが、リリアさんが剣を振り上げた先は、まったく分からなかった。気づけばリリアさんの大剣は振り下ろされており、アリスがそれを片手で受け止めていた。そして少し経った後、轟音と共に俺の周囲の結界が衝撃を防御する音が聞こえてきた。
「……なるほど、大した威力ですね。相手が六王だとしても余裕で防御を抜けるほどの威力ですね。あと、どうやら効果が発動するのは、攻撃の構えに入った瞬間からみたいですね」
「あ~えっと……物凄くあっさり止められてしまいましたね」
「まぁ、今回はマジで普通の斬撃ですしね。別に因果破壊だとか特殊な効果が付与されてるわけでもないですし、ぶっちゃけ他の六王も分かってれば受け止められるでしょうね。現時点では威力だけですし……それこそ、伯爵級最上位以上は基本不死身なので、回復阻害とか山ほど付与しないと再生されるだけです」
リリアさんの斬撃の威力は六王相手でもダメージを与えられるほどだと賞賛しつつも、アリスは片手で受け止めており、表情を見ても明らかに余裕があった。
「……というか、それを抜きにしてもアリス強くない?」
「まぁ、私最近修行しましたしね。ぶっちゃけいまは、クロさんともいい勝負できるぐらいにはなってるんすよ。だからまぁ、このぐらいなら問題ないですね。現状リリアさんの到達できる限界点の一撃とは言いましたけど、世の中才能の限界を超えてる人はいますし、私もその実例ですので、リリアさんが才能の限界を超えればさらに出せる力も上がるかもしれませんね。まぁ、その前に才能の限界まで鍛えるのが先ですけどね」
「なんというか……改めて、六王様の凄さを実感した思いです」
そういえばアリスは限界まで己を鍛え上げていて、その上でヘカトンケイル究極戦型の効果でのみ現在は上限以上に成長しているんだったっけ? いやそれを抜きにしても、人間としての限界を超えたという意味では才能の限界を超えた存在である。
「今回は検証ですから、いろいろなパターンで調べましょう。使いこなせるようになれば、もっとその心具の能力も有効に活用できるようになりますよ。そうなれば、六王相手にも明確にダメージを通せるようになるでしょうね」
「分かりました。よろしくお願いします」
「ええ、じゃあ、とりあえず時空間魔法でクールタイムを短縮しつつ、最初は軽く『750パターン』程検証しましょうか」
「………………え?」
「その後はいろいろ条件を変えつつ検証しますが、とりあえずは素のパターンで行きましょう」
「あ、いえ、その、さ、流石に時間操作を750回も使用できる程の魔力は……」
「世界樹の果実も用意してますので、大丈夫ですよ」
「…………」
リリアさんが遠い目で、お腹を押さえていたのがなんだか印象的だった……。とりあえず長くなりそうだし、俺は本とか読んでていいかな?
シリアス先輩「確かにアリスなら、マジであらゆるパターンで検証しようとしそうだし……これ相当時間かかるのでは?」




