挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

161/526

頼む相手間違えた!?


 木の月15日目。俺はベルの背に乗り、王都を疾走していた。

「ベル、スピードもう少し落として」
「ガウ!」

 ベルに乗って移動している理由は単純で、馬車よりベルの方が圧倒的に速いからだ。
 俺が現在向かっている場所は、リリアさんの屋敷からかなり距離があり、本来なら馬車でも結構時間がかかるが、流石ベルというべきかもう目的の場所が見えてきた。

 牧場と呼んでいい程に広い庭と、かなり大きめの建物……入り口の看板には『飛竜便』と書かれている。
 俺が今日ここを訪れた理由は、以前懐かれた子竜に会うため。メギドさんの件とかアリスの件とか、何かと慌ただしくてすっかり遅くなってしまった。

 入り口でベルから降りると、見覚えのある人……以前宝樹祭に行った時に会った御者の人が出迎えてくれた。

「いらっしゃい、ミヤマさん……物凄い登場ですね」
「あ、はは……すみません大きくて、でも、ちゃんと大人しい子なので」
「……ベヒモスを足代わりとは、流石と言うほかありませんね……やはりミヤマさんは、飛竜便の御者になるべきなのでは? 世界を狙えますよ」
「か、考えておきます」

 ベルを見て驚愕の表情を浮かべつつも、そこは普段から魔物と関わることの多い御者さん。動揺したりする事はなく、俺へのスカウトの言葉を軽く投げかける。
 そのまま御者さんと他愛の無い雑談をしていると、羽ばたくような音が聞こえてくる。

「キュク~!!」
「あっ、あの子……って、ちょっと待て!? 早い早い!? スピード落とし――ぶへっ!?」

 こちらに向かって以前懐いてくれた子竜が飛んで来ていて、可愛らしいその羽ばたきに微笑んだのも束の間……子竜は俺の姿を見て、スピードを上げ、物凄い勢いで突っ込んできた。
 慌てて止めようとしたが、子竜のスピードは落ちず……一直線にこちらに飛んで来て、俺の顔に張り付きその衝撃で俺は大きくのけぞる。

「キュクイ! キュクイ!」
「……首、折れるかと思った」

 子竜は大はしゃぎの様子で、嬉しそうに俺の顔にひっついていたが、少ししてベルに気付いたのか視線をそちらに向ける。

「キュイ?」
「ガル?」
「キュ……キュク……」

 子竜はベルに怯えているという感じではなく、何か衝撃を受けた感じの表情で、俺とベルを交互に見る。

「キュクア!! キュウ! キュア!!」
「え? 痛い、痛い!?」

 そして何故か今度は怒ったように、俺の顔を羽でバシバシと叩き始めた。
 なんだろう、この状況……俺の感応魔法は、完全に言葉として読みとる事は出来ないが、何となく子竜の気持ちは把握出来る。
 強いて言うなら「浮気者~」とでも言って怒ってる感じなのだが……なんで?

「たぶん、ベヒモスに嫉妬しているのでしょうね。この子は貴方の事を『異性として』好きですから」
「痛っ……えぇ!? そ、そうなんですか?」

 そんな俺の疑問を察したように御者さんが呟き、俺は子竜の翼撃から逃れながら聞き返す。

「ええ、ほら、以前去り際にこの子がミヤマさんの首を二度甘噛みしましたよね?」
「そ、そういえば、そんな事もされたような……」
「あれ、竜族の『求愛行動』ですからね」
「はぁっ!?」

 以前別れ際に子竜に首を二度甘噛みされた事は覚えているが……え? あれ、求愛行動!? な、なんで!?

「竜種の首元には逆鱗がありますから、最も他者に触れられたくない部分ですね。その逆鱗を一度甘噛みして、相手が避けずに二度目の甘噛みを受け入れてくれたら……求愛が成立します」
「……マジで?」
「マジ? え、ええ、本当です。私も驚きました」

 どうも首を二度甘噛みするという行為は、竜族の求愛行動らしく。
 俺は知らず知らずの内に子竜に告白され、俺も好きだよと返したようなものらしい……寝耳に水とはこの事だ。

 そして俺が御者さんから説明を受けていると、子竜はベルの方に向かい興奮した様子で鳴く。

「キュゥ! キュクイ! キュイクキュイ!」
「ガゥ、ガルア」
「キュイ!? キュク! キュアァァ!」
「ガウ、ガルアグァ?」
「キュクア!!」

 うん、何か話してる感じだ……そして今俺が感応魔法で読みとり、二匹の動きから感じた会話は、気のせいだと思いたい。
 うん、気のせいだよね? だって今コイツ等……

『ずるい! 君だけ! あの人と一緒にいるなんて!』
『だって、ペットだもん』
『ペット!? ずるい! ずるいぃぃ!』
『なら、君もペットになれば?』
『それだっ!?』

 みたいに聞こえた……いや、それだっ!? じゃないよ。なに俺無視してペット増やす方向で話し進めてるの? 
 しかし嫌な予感というのは当るもので、子竜はベルとの会話を終えると、俺の方にへばりつき……まるで梃子てこでも動かないと言いたげな表情を向けてくる。

「こらっ! ミヤマさんに迷惑でしょう」
「キュ~~~~!?」

 御者さんも察したらしく説得しようとするが、子竜は断固として離れない。無理に引き離せば、俺の服が大変な事になりそうだ。
 困った……コレは非常に困った。子竜は必死に俺の服に縋りつきながら、こちらに今にも泣きそうな寂しい目を向けてくる。
 やめて、やめて……俺その目に弱いんだって……

「あ、あの……無理は承知で尋ねるんですが、この子竜……譲っていただく訳にはいかないでしょうか?」
「キュ!?」
「う、う~ん。他ならぬミヤマさんの頼みですし、この子もここまで懐いているので良いと言いたいのですが……最近は竜の子供の数が足りていないので、白竜を手放してしまうのはうちとしても……」
「キュァ……」

 ある意味その返答は仕方ないとも言える。
 白竜は飛竜便でもエースと言って良い程の稼ぎ頭という話だし、希少なので中々手に入らないらしく、この飛竜便に居る白竜も子竜とその両親だけらしい。

 ちなみに子竜の両親は、先程からこちらを見ているが特に何も言ってはこない。子竜の意思を尊重するって感じだろうか?
 どうしよう? すっかり落ち込んでしまった子竜を無視もできないし、知らなかった事とは言え求愛行動を受け入れた俺の方にも問題が無い訳じゃない。

「……たとえば、ですけど……もし他に、仮に白竜以上の竜種を用意出来たとしたら、交換してもらうとかは……可能ですか?」
「え? ええ、それでしたら問題はないですけど……白竜以上に速い竜なんて、魔界にしか生息してませんよ?」

 もうこうなってしまっては仕方が無い、気は引けるが……あの方に相談してみる事にしよう。
 俺を期待するような目で見ている子竜に、またすぐに戻ってくると伝えて説得した後で、俺はベルを一度屋敷に戻す為に移動を始めた。













「……なんて言うか、カイトさんもつくづくお人好しですね~」
「うん。まぁ、こうなったものは仕方ないよ……マグナウェルさんに相談してみよう」

 ベルを屋敷に戻した後で、案内を頼んだアリスと共に魔界へのゲートをくぐる。
 今回目指すのは北部ではなく南部……竜王・マグナウェルさんが住む『竜の山脈』と呼ばれる場所だ。
 竜種の事は竜王であるマグナウェルさんに相談するのが一番だろうと考えての行動だが、どうも竜の山脈はゲートからかなり距離があるらしく、道中には魔物も多いらしい。

「悪いけど、頼むよアリス……俺一人じゃたどり着けそうにないし」
「はいはい。了解ですよ~それじゃ、ちゃっちゃと行きますか……よいしょっ!」
「……ちょっと、待て。なんで俺を担ぎあげてるんだ?」

 案内をアリスに頼み、さあ出発だと思った瞬間、アリスは俺の体を軽々と持ち上げて……大きく振りかぶる。

「ちょ、ちょっと!? アリス!? 一体何を!?」
「大丈夫です。ちゃんと障壁張りますから……」
「その言葉に何一つ大丈夫な要素を感じないんだけど!?」
「角度よし、距離感……まぁ適当で!」
「適当!? 今お前、適当って言った!? ちょっと待――うわあぁぁぁぁ!?」

 繰り返しになるが、嫌な予感というのは当るもので……アリスは大きく振りかぶった後、空に向かって俺を投擲した。
 一気に景色が吹っ飛び、俺の体は高々と空に舞いあがる……凄いよ。俺、空飛んでる……じゃねぇよ!? あの馬鹿野郎!? 他にもなんか移動方法とかあっただろうがっ!? なぜ投擲!?

 障壁とやらのお陰で風圧は感じないが、物凄いスピードで自分が移動しているのは分かる。けど、これ、どう考えても途中で落ちそうな気がする。

 そんな不安を肯定するように、徐々に高度が下がっていき、俺の体が地面に向かって落下し始める。
 しかしその予想はある意味最悪の形で裏切られた。
 落下途中の空中で俺の体は、いつの間にか現れたアリスにキャッチされ、そのまま視界が一回転する。

「もう、いっちょ~」
「ぎゃあぁぁぁ!?」

 空中で俺をキャッチして、もう一回空中で投げるという離れ業をやってのけるアリス……殺意しか沸かない。
 もう本当に生身でジェットコースターを味わっているようなもので、再び俺の体は空高く舞い上がる。

 拝啓、母さん、父さん――子竜の引き取る為の相談に、マグナウェルさんの住処を訪ねる事にした。そして案内をアリスに頼んだ訳なんだけど、なんていうか――頼む相手間違えた!?


快人は貴族たちには有名ですが、一般人には六王と知り合いである事は殆ど知られていません。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ