リリアへの報酬①
アルクレシア帝国の建国記念祭からハイドラ王国の建国記念祭までは殆ど日が無い。ギリギリ1ヶ月くらいであり、双方に出店する人などはかなり忙しいだろう。
お祭りは書き入れ時だし、そういった商売をしている人たちにとってはかなり重要だと思う。
まぁ、俺はハイドラ王国の建国記念祭に関しては普通に祭りを楽しみに行くので、出店等はしないし特別な準備も必要ない。なんなら移動に関してもアリスの転移魔法で行くことになっているので、本当に準備はなにひとついらないので気楽なものである。
「……え? じゃあ、リリアさんもハイドラ王国の建国記念祭には参列するんですか? ということは三国全制覇ですね」
「ええ、というか……アルクレシア帝国が急遽だっただけで、元々ハイドラ王国の建国記念祭には参加する予定でした。ラグナ陛下はたびたび当家に来ており、交流がありますので……」
「まぁ、交流といってもお嬢様とガチバトルしに来てるだけですが……」
そういえば、ラグナさん結構来るなぁと思っていたけど、そうか……リリアさんと月に1度くらいの頻度で戦ってるんだった。それで、そのついでに俺の元にも立ち寄ってる訳か……。
現在のリリアさんとラグナさんの実力はほぼ互角で、勝ったり負けたりしつつ研鑽を積んでいるらしい。といってもラグナさん曰く「数年で追いつけなくなる気がする」と言っていたので、リリアさんの成長速度は本当に桁違いみたいだ。
「今回の建国記念祭もなかなかの話題ですし、大変と言えば大変ですね。幸いカイトさんが出店をするわけではないので、ビックネームの参列は控えめですが……」
「うん? ハイドラ王国でもなにかあるんですか?」
「ええ、なんでも初代勇者様がラグナ陛下に贈った秘蔵の石碑が公開されるとのことで、初代勇者様生存説を裏付けるものになるのではと、かなり注目を集めていますね……まぁ、私は真実を知っていますが……」
「あぁ……」
なるほど、ラグナさんはそういう手を使ってきたのか。考えてみればラグナさんの交流の中で六王や最高神にも負けない知名度をもつ最強のカードと言っていい。ノインさんは絶対乗り気ではなかったと思うが、その辺りはたぶん上手く言いくるめたのだろう。
「まぁ、でも、石碑を公開するだけなら特にリリアさんがどうこうなることも無いですし、その辺りは安心ですね」
「そうですね。私は特に関わりがあるわけでもありませんし、のんびり眺めさせてもらうつもりです」
「なんでしょうね? 普通に考えれば何も起こらないはずなのに、ミヤマ様とお嬢様が楽観視してるとなにか起こりそうな気がしてきますね」
「……嫌なこと言わないでください」
あ~でも、正直ルナさんの気持ちは分かる。大半の原因が俺のなので口にはできないが、リリアさんが「大丈夫」とか行ってると、なんかトラブルが起きそうな気がしてならない。
でも、別にリリアさんがどうこうなるようなことが起こりうる可能性は……別にないと思う。そもそももう参列者は決まっているので、これ以上誰かが増えることも無いし……大丈夫なはず……たぶん。
快人とのお茶と雑談を終え、執務室で仕事をしていたリリアは、いくつかの書類を届けてもらうようにルナマリアに頼んだあとで一息ついていた。
するとそのタイミング、唐突に目の前が光ったかと思うと……エデンが姿を現した。
「エ、エデン様!?」
「そのままで問題ありません。今回は約束の礼を果たしに来ました。アルクレシア帝国の建国記念祭では貴女には世話になりましたからね」
「あ、いえ、お役に立てたようなら幸いです」
「貴女の働きの報酬として、ふたつのものを用意しました。まずはこちらです。この歯車に触れなさい」
「え? あ、はい――ッ!?」
エデンが差し出してきた歯車に触れたリリアは、直後になにかがストンと体に入り込んでくるような感覚を覚えた。そして5秒ほど経ち……大きく目を見開いた。
「……オートクレール?」
「ほう、それが貴女の心具の名ですか……使い方や効果は分かっているでしょうし、心具の基礎知識は同時に与えましょう。ただ、その心具には他の者を心具使用者にはできないという制限を課します。まぁ、詳しくは送る知識を確認しなさい」
エデンがそう告げた直後、リリアの頭に心具の知識が流れ込んできた。そしてエデンが課した制限というのも理解し、神妙な表情で頷いた。
「……アリス様が使っていたものと同じ能力というわけですね。正直、あまりに強力過ぎるので使いどころが思いつきませんが……」
「心具は能力は個人差が大きいので、強力なものを引き当てたのであれば幸運でしたね。それはそうと、もうひとつ……こちらがメインの礼です。これを貴女に与えましょう」
「……これは?」
「貴女への働きの礼として、シャローヴァナルより許可を得て、次元の狭間に――『小さめの世界をひとつ作りました』。自由に使いなさい」
「――――――――は?」
当たり前のようにエデンが告げた言葉を聞いて、リリアはポカンとした表情を浮かべて無意識にお腹を押さえた。
シリアス先輩「これ、ある意味報酬は……胃痛なのでは?」
???「というか、リリアさん5秒で心具に覚醒してるんすけど……本当にバグみたいな才能してますね」




