ネピュラの新作④
ネピュラの新作茶葉にそれはもう凄い興味を示したジュティアさんに急かされ、さっそくだがロイヤルミルクティー専用の茶葉を取り出して説明した。
「なるほど、なるほど……ロイヤルミルクティー専用なんだね。面白いね、面白いね。いったいどんな味になるのか興味があるんだぜぃ。さっそく使って淹れてみてもいいかな?」
「あ、はい。大丈夫ですが……ここで?」
ジュティアさんがすぐにでも茶葉を試したいという気持ちは伝わってきたが、ここは開けているとはいえ森のど真ん中である。そう思って尋ねると、ジュティアさんはニッコリと笑みを浮かべる。
「違うよ、違うよ。道具とかもあるし、ボクの家で淹れようと思うんだぜぃ。それでね、それでね。よければカイトも招待したいんだけど、時間は大丈夫?」
「ええ、特に急ぐ予定もないので大丈夫ですよ」
「決まりだね。それじゃあ、それじゃあ、転移魔法で移動するから……ちょっと触るね」
ジュティアさんの家に招待してもらえることになり、そのままジュティアさんは逸る様子で俺の体に軽く手を当てた。すると一瞬で景色が変わり、気付けば木造りの部屋の中に居た。
お洒落な壁といった雰囲気の部屋で、壁にはズラリと紅茶の茶葉が入った瓶や缶が並んでおり、ティーポットやカップなども相当の数があった。
なんとなくダイニングキッチンっぽい場所で……周囲を見渡すと窓の外から森っぽいものが見えるので、どこかの森の中……可能性が高いのはユグフレシスにある中央大森林かな? ロズミエルさんの住む万花の園も、中央大森林の中にあるし……。
「凄いですね。紅茶だけじゃなくてカップとかもあんなに……」
「紅茶はね。茶葉なんかの直接口に入れるものも大事だけど、カップやポットなんかの道具によって味が大きく変わるんだぜぃ。だからね、だからね、ここにある以外にもいろんなカップやポットをコレクションしてるんだぜぃ」
「へぇ、なるほど、流石の拘りですね……あっ、そうだ」
「うん?」
茶葉だけではなくカップやポットにも拘るという発言からは、生粋の紅茶好きという雰囲気が伝わってきた。いや、実際アインさんとも交流があるみたいだし、紅茶に関しては本当に拘り方が違うのだろう。
それでふと思い出したのが、以前アルクレシア帝国の建国記念祭で売ったポットとカップである。アレ以降も普通にネピュラやイルネスさんは陶磁器は作っており、売ったもの以外にも手元にはある。
まぁ、なぜか建国記念祭が終わった後も例のブランドマークを付け続けているので、ネピュラとイルネスさんが作った品に関しては、あのブランドマークで行くらしい。
「これも、ネピュラとイルネスさんが作ったものなんですけど……紅茶のカップとポットがあるので、ジュティアさんさえよければ貰ってください」
「これは……いいのかな? いいのかな? これ、見たところ相当質がいいぜぃ? もしあれなら、ちゃんとお金を払って購入するよ」
「いえ、気にしないでください。数もそれなりにありますし、紅茶好きのジュティアさんなら大事に使ってくれそうですから」
「ありがとう、それじゃあ、それじゃあ、お言葉に甘えていただくぜぃ。うんうん。厚みもいいし、せっかくだからこれを使ってロイヤルミルクティーを淹れてくるぜぃ。カイトはそこに座って待ってて」
「あ、はい。よろしくお願いします」
俺が渡したカップやポットを気に入ってくれたみたいで、ジュティアさんは嬉しそうに笑顔を浮かべたあとで、俺に席を進めてキッチンに入っていく。
そして非常に慣れた手つきで紅茶を淹れる準備を整えていく。
「せっかくのいい茶葉だし、ミルクもいい物を使おうかな。カイトは、甘めとあっさりめだとどっちが好きかな?」
「う~ん、甘めですかね。結構甘い味は好きなので……」
「そっか、そっか、ボクも甘い味は好きだよ。嗜好が合って嬉しいね~嬉しいね~」
ニコニコと楽し気にしつつも、手際よく用意していき、少しすると美味しそうなロイヤルミルクティーが俺の前に置かれた。
「お待たせ、お待たせ、さぁ、どうぞ」
「ありがとうございます……うん。やっぱり美味しいですね」
家で飲んだ時よりも甘めに味付けされたロイヤルミルクティーは、ジュティアさんの家の温かな雰囲気も相まって、本当に心温まる美味しさだった。
そんな俺の向かいの席に座ったジュティアさんはロイヤルミルクティーを一口飲んで、驚いたような表情を浮かべた。
「……これはっ、凄い、凄い! 普通の紅茶の茶葉で作った時とは、ミルクとのマッチ感が全然違う! いいね、いいね、これは最高だせぃ。これも、いろいろ研究できそうだし……カ、カイト……できればその……」
「あ、はい。そういう話になるとは思って、この茶葉が入った缶も持って来ましたし、ネピュラが言うには希望するのであれば、前の茶葉と同じく定期的に譲ることも可能だそうです」
「ありがとう! 嬉しいね、嬉しいね。本当に、カイトと出会えてよかったぜぃ……あっと、ごめんよ、ごめんよ。これだと物欲しさに聞こえちゃうか……でもでも、茶葉とかとは関係なく、カイトと巡り合えたことを嬉しいと思ってるのは、本当だよ」
「あはは、ありがとうございます。そう言ってもらえると俺も嬉しいですよ」
はにかむ様に笑うジュティアさんは、その小柄な体躯もあって可愛らしく、なんというかロイヤルミルクティーの味も合わさって、ほっこりとした気分になった。
シリアス先輩「ジュティアはまぁ、ともかく……問題は次だろ。果たして、あのメイドがどんな反応をするか……」




