胃痛なる建国記念祭②
とりあえずメギドさんはリリウッドさんたちに顔見せに行く前に、俺とアメルさんの出店を見ていくようで、店の商品を興味深そうな様子で眺めていた。
そして俺がアリスの制作キットを使って作ったアクセサリーを手に取り、感心したような表情を浮かべる。
「ほ~これをカイトが作ったのか? なるほど……中々いい出来じゃねぇか! デザインはちとありがちな感じだが、作りは丁寧だし初めて作ったにしちゃ上出来だな」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです……買います?」
「いや、アクセサリーは邪魔だからいらねぇ。だが、十分に売り物になるだけのいいアクセサリーだと思うぜ」
こういうところが最高にメギドさんである。いいところは惜しみなく賞賛してくれるし、かなり褒めた上でいらないものは普通にいらないと言う辺りが、なんともメギドさんらしい。
メギドさんはもう少し俺の作ったアクセサリーを眺めて頷いたあと、視線をネピュラの作った焼き物に向ける。
「……こいつはすげぇな。ネピュラって言うと、カイトのところのちっこい精霊だろ? この焼き色にしながら、模様として入れてる色も鮮やかに出てる。焼き上がってから塗ったんじゃこうはならねぇっていい色合いしてやがる。間違いなく超一級品だな……っておい、カイト。なんでまた微妙そうな顔してやがる」
「いや、頭では分かってるんですけど……」
メギドさんが芸術に詳しいのは分かっているのだが、どうしてもなんか小骨が喉に引っかかる様な違和感がある。
すると、その場面で黙っているわけがない奴が、スッと姿を現してここぞとばかりに煽りを入れる。
「ゴリラさん、何度でも言いますけど芸術語る顔してねぇんすよ。焼き物語る顔じゃなくて、焼き物破壊する顔してんすよ」
「テメェ……喧嘩売ってんのか?」
「売って欲しいんすか? 強引な客ですね――あいたぁぁぁぁ!?」
喧嘩を始めそうな雰囲気だったので、アリスの頭をシロさん特性のピコハンでぶん殴った。
「お前、こんなところで喧嘩なんて始めたら、クリスさんが胃痛で大変なことになるからな」
「いや、ちゃんと魔界に転移してからやりますよ?」
「その場合はその場合で、別の方が頭を抱えそうだから止めろ」
主にリリウッドさんとかその辺りが悲鳴を上げそうなので……いや、でも、リリウッドさんも前にメギドさんと魔界で喧嘩してたような……まぁ、厄介事は先んじて封じるに限る。
「ん~まぁ、カイトさんがそう言うなら……命拾いしましたね、メギドさん」
「なに? やらねぇのか? おいおい、期待させといてそりゃねぇだろ……せっかく久々に本気でやれると思ったのによ」
「クロ呼びますよ?」
「……待て、カイト。分かった、諦める……だから、早まったことはやめろ……」
アリスはなんだかんだで俺が言えば聞いてくれるので問題は無し。バトルモードに入りかけていた戦闘狂に関しては、以前はともかく今はメギドさんがクロに頭が上がらないことを知っているので対策は可能だ。
メギドさんもアリスもとりあえず矛を収めてくれたみたいで、先ほどまでの険悪な空気は消えていた。
「そういや、メギドさん酒のつまみ買わねぇっすか? 高くしときますよ」
「いや、安くしろよ……まぁ、テメェは食いもんで悪ふざけをすることはねぇから、味は間違いねぇし悪くねぇな。あとで適当な量を俺の城に運んどいてくれ、金はアグニかバッカスに声かけろ、金庫から出すように言っとく」
「はいはい、まいどあり~」
切り替え早いなこのふたり、さっきまでバチバチに喧嘩腰だったのに……やっぱなんだかんだで仲が良いんだろう。
まぁ、多少のハプニングはありつつも平和な感じである。
シリアス先輩「そうなんだよなぁ。胃痛戦士たちと違って、快人の側は普通にのんびり出店してるだけで、時々知り合いもやってきて雑談してる感じでまったり進行なんだよな……胃痛戦士たちはなんにもまったりしてないけど……」