アルクレシア帝国建国記念祭⑪
アメルさんとの出店は比較的好調といっていい感じだった。ほどほどに客も着ているし、スタートからまだそれなりに時間が経っていないながらもそこそこの数の商品が売れている。
中二病グッズなどもパッと見の時点で変わっているので、見た目でまず興味を引き、安めの値段設定にしていることでお祭りのノリで財布の紐が緩んだ人たちが結構購入してくれていた。
「順調ですね。このペースでいくと、結構売れそうですよね」
「やはり皆、深い闇には惹かれるものなのだろうね。同志が増えていくようで喜ばしいよ」
まぁ、購入していった人はカッコいいからとかではなく、パーティグッズ的に面白くて盛り上がるから買って行ったんだと思うけど……それは言わぬが花だろう。
ちなみに安めの値段設定に関してはアリスにも許可は貰っている。というか、アリスも小さな出店の売り上げ程度をそこまで真剣に欲しがっているわけでもないので、ほぼ原価分程度の価格で問題ないと言ってくれているので、かなり安く売ることができているのも、売れ行きがいい要因のひとつだろう。
まぁ、かといって中央広場の付近ではないので、忙しすぎることもなくほどほどの来客で丁度いい。そんなことを思っていると、ふいに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「この辺はお酒が多いんだね~」
「ドワーフ族の店が多いみたいやな。香織のとこも酒の取り扱いはあるんやろ? なんか仕入れてもええんちゃうか?」
「あ~いや、お酒の仕入れにはちょっとトラウマが……けど、重さんがお酒好きだし、お土産になにか買ってもいいかもね。あっ、あっちの店なんて変わった雰囲気で面白……そ……う?」
「うん? どないした……おん?」
そう、まさかの香織さんと茜さんのふたりだった。建国記念祭に遊びに来ていたんだろうか? それにしても、こんなところで遭遇するとは凄い偶然である。
ふたりも俺に気付いたらしく、驚いたような表情を浮かべたあとで店に近付いてきた。
「なんや、快人やないか。シンフォニアだけやのうて、ここでも出店やってんか?」
「ええ、友人に誘われて……凄い偶然ですね。おふたりも建国記念祭に来ていたとは思いませんでした」
「私も茜さんも召喚の際にはアルクレシア帝国に召喚されたからね。その話で盛り上がった流れで、一緒に行くことになって遊びに来たんだよ。まさか快人くんが居るとは思わなかったけど……」
にこやかに言葉を交わしたあとで、茜さんはチラッとアメルさんの方を向いて首を傾げたあとで、再び俺の方を向いて尋ねてきた。
「ほんで、快人……この方は、どこのお偉いさん?」
「有翼族の長のアメルさんですね」
「…………っとに……お前……マジでか?」
「有翼族って確か、他の種族と全然交流しない種族じゃ……そこの長と一緒に出店って、やっぱこの子私の常識と違うところに住んでるよ」
俺の言葉を聞いたふたりは、心底驚いたという表情を浮かべており、香織さんはお腹を押さえていた。ツッコミを入れたい気持ちはあるが、それより先にアメルさんへの紹介だろうと、不思議そうにしているアメルさんに説明する。
「アメルさん、こちらは俺と同じ世界出身の過去の勇者役で、水原香織さんと、三雲茜さんです」
「へぇ、盟友と同じ異界の民なのか。それはまた珍しいが、なるほど特殊な魔力を感じる。彼女たちもまた導かれし者たちというわけか……ならばこちらを名を示すとしよう。ボクはアメル、空に住まう者たちを束ねる漆黒の翼にして、彼の盟友だ」
「……は、はぁ」
楽し気に話すアメルさんの言葉を聞いて、香織さんは若干戸惑った表情を浮かべ、茜さんは無言で頬をヒクヒクとさせていた。たぶんだけど、中二病MAXなアメルさんの言動にツッコミたい気持ちが湧き上がっているんだろうが、相手が相手だけにツッコムわけにもいかないので我慢している感じだ。
茜さんはそのまま悩むような表情を浮かべたあと、俺に顔を近づけて他には聞こえない小声で話しかけてきた。
「すまん、これだけはツッコませてくれ……快人、お前、いつの間に有翼族の長と盟友になったんや?」
「……なんか、前世らしいですよ」
「なんでや!? 前世があるにしても別世界やろが……」
「俺に言われても……」
「しゃあないやろ! 有翼族のトップに喧嘩売るような真似できんし、お前の方にツッコムしかないやろ……というかなんでお前は遭遇する度に別のお偉いさんと一緒におんねん。ウチらの胃を破壊する気か……」
耳うちでツッコムという器用なことをする茜さんに、俺はなんとも言えない表情で苦笑を浮かべる。いや、実際言われてみれば確かに会うたびに毎回違う権力者と一緒に居たような気がするので、文句も言えない。
シリアス先輩「こ、これはっ!? ふたりが現れるタイミング的に、この後のメギド襲来フラグがバッチリ立ってる。胃痛が胃痛を呼ぶ胃痛大連鎖!?」




