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アルクレシア帝国建国記念祭⑨



 アルクレシア帝国首都にある城の応接室にて待つクリスの元に、クロノアとフェイトが戻って来た。フェイトが居なくなってからほんの数分ではあったが、ライフとふたりで部屋に取り残されたクリスはなんとも言えない状態だった。

 ライフはアルクレシア帝国を担当する最高神であり、帝国に神殿を構える下級神は全てライフの部下にあたる。さらにその下級神のひとりである豊穣神は、作物が育ちにくいアルクレシア帝国に加護を与えてくれている超重要な存在であり、クリスとしては絶対に失礼があってはいけない相手だ。


 だが、ライフは既に瞑想に移行しているのか、それとも単純に話をする気が無いのか無言で席に座ったままで、クリス側としても瞑想中であったら話しかけるわけにはいかないと、なにも言えずに数分無言で最高神とふたりで待ち続けるというある意味地獄のような時間を過ごしていた。


 まぁ、実際のところを言えばライフは寝ているわけでは無く、単純にこの手の交渉事はいつもクロノアが担当しているので、いざふたりきりになったとしてなにを言うべきか分からなかった。そして、以前のライフならともかくいまはある程度成長し白神祭を経て、ある程度人族にも友好的な思考になっているが……逆にそれが原因で、変なことを言って畏縮させてもいけないと何も言い出せなかった。

 気まずさを感じているのはライフの方も同じであり、クロノアとフェイトが戻ってきた際には内心ホッとしていた。


「すまん、待たせたなアルクレシア皇帝」

「ああ、いえ、どうかお気になさらず。数分の出来事でしたし……」

「ただいま~あっ、ちゃんとリスリスと生命神の分も買ってきたよ。はい、どうぞ」

「……え? ああ、ありがとうございます……うん? これは? ドリンクのように見えますが……」


 緩い笑顔を浮かべたフェイトがお土産と言わんばかりに、ライフとクリスに世界樹の果実のドリンクを差し出す。

 しかし、それを受け取ってクリスは不思議そうに首を傾げた。それもそのはずだろう、クリスは事前に快人の店が雑貨屋であると聞いていたし、商品などもある程度確認している。飲食物の取り扱いが無いことも確認済みである。


「そうだよ~カイちゃんの店で買ってきた、世界樹の果実のドリンクだよ」

「………………待ってください。ちょっといま、心が現実を受け止めきれていないので……」


 フェイトの言葉を聞いたクリスの顔から血の気が一瞬で消え去り、絶望とはまさにこの表情とでも言うべき顔になった。

 だが、そんなクリスに対してクロノアが気の毒そうな顔をしつつ、口を開く。


「気持ちは分かるが、安心せよ。このドリンクは、運命神がミヤマに無理を言って用意させたもので、店頭で売られていた品ではない。他に売ったりすることも無いだろう」

「あっ、そ、そうなんですね……よかったです……本当に」


 胃の辺りを押さえながら、それでも心の底から安堵した表情を浮かべるクリスの姿はどこか悲痛であり、その気持ちがよく分かるクロノアはなんとも言えない同情した表情を浮かべていた。

 そんなクリスとクロノアの様子をさして気にした感じもなく、フェイトはドリンクを飲みながらライフに声をかける。


「このドリンク美味しいね。けど、う~ん……生命神、気のせいかな? めっちゃ力が漲るんだけど……」

「奇遇ですね。私もそのような感覚を覚えていました。というか、運命神を見る限りあらゆる能力が倍増しているような……」

「なに? たしかに……運命神も生命神も明らかに魔力も含めて普段より……なんだこのドリンクは? 世界樹の果実にそんな効果があるのか?」


 ふたりの会話を聞いて視線を向けたクロノアも、明らかに驚愕した表情を浮かべる。それも当然だろう。最高神であるフェイトとライフの能力を倍加させるなど、通常の補助魔法ではありえない。だが実際にあらゆる能力が倍になっているように感じられる。

 元々の能力が強大なだけに、それが倍になると凄まじい。驚愕しながら呟くクロノアに対し、ライフが首を傾げながら口を開く。


「……分かりませんね。世界樹の果実は界王がかなり流通を絞っていますので……回復効果以外に隠された効果があったとしても不思議ではないです。しかし確かに、これだけの効果があるのなら……流通を制限する気持ちも分かりますね」

「あれ? でも、この世界樹の果実ってネピュリンのって話じゃなかったっけ? ネピュリンの宿る世界樹って普通の世界樹となんか違うし、効果も違うんじゃないの?」

「なるほど、それはあり得る話だな。世界樹の果実は少数とはいえ流通もしているし、このような効果が隠されていれば知られていないわけがないか……」


 真剣な表情で話し合う最高神三人を見て、クリスは一難去ってまた一難ともいえる表情を浮かべており、もう己の思考が追い付かない領域の話になってしまったと痛む胃を再度押さえる。


「……ていうか、もうすぐ界王来るだろうし、直接聞けばいいんじゃない?」


 ファイトがそんなことを言い出し、最高神と六王の会談が成立しそうになった際には、遠い目で虚空を見つめていた。




シリアス先輩「追いボディブローが突き刺さってる。クリスももう立派な胃痛戦士だな」

???「そしてリリウッドさんもなんか巻き込まれるフラグ建ってますね。せっかくアイシスさんが参加を取りやめて、ホッと一息ついてたのに……」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 本当に関係各所にまでボディーブローの余念がないなぁ…w
[良い点] もう胃痛祭編でいいんじゃないかなw
[良い点] いつも楽しく読ませて頂いてます。ありがとうございます。 [気になる点] 最後に運命神様がなんか戦闘神ぽくなってます(フェイト→ファイト)
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