番外編・エピソード・オブ・アイシス~未来⑩~
食堂でのアイシスさんと死王配下の皆さんとの食事はかなり楽しかった。アイシスさんの配下の方々は個性こそ強いが皆いい人というか、なんだかんだで仲が良いのが伝わってくる感じだ。
アイシスさんが家族だと言っていたが、本当に家族のような仲のいい雰囲気といえる。同じ配下でも十魔とか戦王五将とは結構違う気がする。雰囲気的にはリリウッドさんのところの七姫が近いかもしれない。ハーモニックシンフォニーのお茶会で仲良くしていたり、仲のいいメンバーでお祭りに行っていたり……。
まぁ、死王配下の仲の良さはアイシスさんの人柄がなせる業と言えるかもしれない。
「…‥カイト……お風呂の準備もできてるけど……入る?」
「え? ああ、そうですね。夕食も食べ終えましたし、サッパリしたいですね」
夕食を食べたあと、食後の休憩を兼ねてアイシスさんの部屋に移動してのんびり話をしていると、そんな提案をされた。
たしかに入浴には丁度いいタイミングかもしれない。アイシスさんの家の風呂は温泉なのでのんびりと雪景色を見ながら浸かるのもいいだろう。
「……うん……じゃあ……行こう」
「……え? あっ、ああ……そうですね、行きましょうか」
アイシスさんの発言に戸惑ってしまったが、そう言えば最初の問いかけから一緒に入る想定をした上での提案だったような言い回しだ。
以前ならばともかく、俺とアイシスさんは恋人同士なわけだし一緒に入浴するのは問題ない……いや、もちろん若干の気恥ずかしさというのは依然として存在するが……。
「……えへへ……今日は一日……ずっとカイトと一緒……嬉しい」
「そう言ってもらえると、俺も嬉しいですね」
う~ん、アイシスさんは反応がイチイチ可愛いというか、本当に俺と一緒に居ることを幸せそうに喜んでくれるので、むず痒くも幸せな気分である。
なんとなくどちらからでもなく手を繋ぎ、風呂に向かった。
以前に泊りに来た際にも思ったが、アイシスさんの家の温泉は本当に絶景である。結界が貼られているため、外からは見えないのだが、中からは外が普通に見えるので景色を楽しめる。
俺にはシロさんの祝福があるので関係は無いのだが、極寒の地でも結界内の温度は一定に保たれているので寒くないとのことだ。
実際、アイシスさんの居城の中は雪と氷の大地にある割に肌寒さも感じないし、風が吹き込んできたりもしないのは結界のおかげなのだろう。
「……そういえば、この温泉ってアリスが作ったんですっけ?」
「……うん……ゲンセンカケナガシ……って……言ってた」
どこに源泉があるんだ? まぁ、その辺は魔法でどうとでもなるのだろう。実際六王祭でも塔の最上階かつ亜空間じみた場所でも、源泉かけ流しとか言ってたし……しかも、クロとかが言葉の意味をいまいち分からずに使っているとかではなく、製作者がアリスならマジでどこかの源泉から湯を転移させてる可能性すらある。
「……カイト……背中……流しっこしよ?」
「え? あっ、はい。じゃあ、先に俺が流しましょうか?」
「……うん……ありがとう」
ニコニコと笑顔を提案してきたアイシスさんの言葉に頷く。そしてアイシスさんが風呂用の小さな椅子に座るのを見てから、シャワーに似た魔法具を使って背中を流す。
「熱くないですか?」
「……ううん……大丈夫……気持ちいい」
「それならよかったです。そういえば、初めてアイシスさんの家に泊りに来た時も同じことしましたね」
「……うん……あの時は……私が先に洗ったから……順番は逆……次の機会は……私が先に洗う」
「あはは、なるほどどっちかが先かも順番ってことですね」
「……うん」
結構初めてアイシスさんの家に泊った時のことは鮮明に覚えている。というか、ガチガチに緊張しまくっていた記憶しかない。
いや、もちろんいまもある程度緊張はしているのだが、それでも恋人同士ということもあって最初に泊りに来た時よりは落ち着けている気がする。
「……そういえば……あの時……カイトはのぼせてた」
「……う、う~ん、のぼせてたというか、気恥ずかしさで頭に血が上ったというか……いや、結果としてのぼせていたで間違いないかもしれませんね」
「……カイトは……私と一緒にお風呂に入るのは……恥ずかしい?」
「もちろん、気恥ずかしさはいまでもありますけど……いまはアイシスさんと一緒に居られる嬉しさの方が強いと思います。だから、最初に泊りに来た時より落ち着けてますしね」
「……そっか……私も……カイトと一緒だと嬉しいし……幸せ……だから……一緒」
「ですね」
「えへへ」
本当にこうして笑うことが多くなったので、アイシスさんの魅力はますます大きくなっているような気がする。会話もそうだが、声色などから嬉しさが伝わってくる感じで、聞いてるだけでこちらも顔が綻ぶ。
うん……確かに未だに気恥ずかしさとかはあるし、若干の緊張もあるが……アイシスさんに言った通り、それ以上に嬉しいし幸せだと、心からそう思った。
シリアス先輩「ふぐあぁぁ、こっ、こいつら、もう結構混浴してるくせに……なんか幸せカップルみたいな雰囲気を……ぐぬぬ」
???「……普通に幸せカップルでは?」