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もっとベビーカステラの可能性を求めて⑤



 優しく慈悲深い笑顔ながら、背後に憤怒のオーラが見える気がするクロは、そのまま優しい声で怯えるメギドさんに告げる。


「もう、メギドは昔っからイタズラが大好きだよねぇ」

「……お? おう?」


 寒気がするほどに優しい声で告げられた言葉に、メギドさんは若干戸惑ったような表情を浮かべていた。どう返答していいか分からないという感じである。

 チラチラと助けを求めるように俺の方を見てくるが、俺もクロの現在の心境がよく分からない。少なくともメギドさんを叱ったりとかそういう感じではないような気はする。


「駄目だよ、コレ毒物でしょ? ボクは平気だけど、他の子にこんなイタズラしちゃ駄目だからね」

「え? あ、いや、別に毒物とかじゃ――」

「毒物でしょ?」

「――あ、はい。毒物だった。い、いや~ついイタズラ心が湧いちまって、ハハハ……」


 まぁ、実際普通の人が食べたら死ぬらしいし、毒物でも間違いはない気がする。あと一瞬「クロの大失敗ベビーカステラも毒物みたいなもの」という考えが頭に浮かんだが、生憎いまの恐ろしいクロを前にしてそれを口にする勇気はない。

 だがとりあえず、メギドさんが怒られたりということはなさそうだ。あくまで今の調味料はメギドさんのイタズラでという方向で話を纏める気らしい。


「うんうん。それで、本当の調味料はどこかな?」

「……え? あ、いや……」

「もうイタズラはいいから、ね?」

「……お、おう」


 とりあえず、クリムゾンソースは無かったことにするらしい。メギドさんはクロの言葉に明らかに慌てた様子で周囲を見渡し、大量の汗をかきながら身を屈めて俺に小声で話しかけてきた。


「……カイト、助けてくれ、ど、どのぐらいの辛さならいいんだ?」

「メギドさんにとって甘すぎるって思うぐらいがいいと思います」


 ともかくクロのご機嫌を取りたいメギドさんは、俺のアドバイスを受けて大急ぎて新しいソースを持って来た。


「い、いや~すまねぇ、クロムエイナ。これが辛い料理に使えるソースだ」

「へぇ、これが、どれどれ……」


 改めてソースを舐めるクロを、メギドさんは緊張した面持ちで見つめる。こっちまでなんか背筋が伸びるような思いである。

 そして、ソースを舐めたクロは、少しして先ほどまでとは違う普通の微笑みを浮かべた。


「なるほど、これを使ってベビーカステラを作るのも面白そうだね」

「あ、あぁ……き、気に入ってもらえたようならよかったぜ」

「……ところでメギド、まさかとは思うけどさっきのクリムゾンソース一般に流通させるつもりじゃないよね? 駄目だからね。アレは、普通の人が食べたらショック死するようなものだから、食べさせる相手はちゃんと考えないと駄目だよ」

「お、おう、わ、分かった」

「うん。それじゃ、ありがとうね。カイトくん、いこっか」

「あ、ああ、了解。じゃあ、メギドさん俺たちはこれで」

「おう、またな」


 とりあえずメギドさんが悲惨な目に合うことは無かったようで、どこかホッとした表情のメギドさんに挨拶をしてクロと一緒に転移魔法で移動する。


 たどり着いた場所は周りに何もない場所であり、そこに付いたら少しすると……クロは顔をゆがめた。


「……もぅ、なんなのあの辛さ!? 限度ってものがあるよ!!」

「あっ、やっぱり、辛かったんだ」

「物凄くね! メギドが辛い物が好きだってのは知ってたけど、本当に食べた人がショック死するような調味料はだめでしょ……しかも、アレ匂いとかも全然しないんだよね」

「もとはといえば、シロさんが作った食材を使って作られてるから……いや、それをシアさんに渡したのは俺なんだけどな」

「やっぱり、そうだよね! あんな、異常な辛さで無臭の品を作れるのはシロぐらいだよね……本当にもう、シロも加減を知らないんだから……」


 先ほどまでは顔に出さない様にしていただけで、やっぱり相当辛かったらしく、少し怒り気味ではある。ただ、それでもメギドさんを責めたり叱ったりせず、あくまで流通に気を付けるようにという忠告に留める辺りは流石クロというべきか、大人の対応である。


「まったく、本当に食材に対する冒涜みたいな味だったよ」

「……普段食材を冒涜してる人が言う台詞なんすかね?」

「シャルティア? なんか言った?」

「あっ、いえ、なんでもないっす!!」


 途中で姿を現したアリスが、火の玉ストレートのような正論を呟いたが、クロにひと睨みされて慌てて姿を消した。

 まぁ、しかし、関係のない話ではあるが……メギドさんとかには見せない、辛すぎて不満を言っているような態度を俺には見せてくれるのも、それだけ特別に思われているという証拠でもあり、少し嬉しくもあった。





???「ちっ、ゴリラセーフじゃないっすか……まぁ、クロさんもさすがに辛すぎることを理由にメギドさんを叱ったりはしなかったですね。警告なく美味しいソースといって出したことには、今後注意するように苦言を呈してましたけどね」

シリアス先輩「無臭で見た目は綺麗なソースで、舐めると常人は死ぬ辛さ? まぎれもない毒物だと思う」

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― 新着の感想 ―
[一言] カイトのキスで口直ししよう
[一言] 1500回おめでとうございます! 楽しくて読み返しまくりですw(4週目) これからも楽しく読ませていただきます!
[良い点] こーゆー時はカイちゃんとキスして口の中を甘くしよう クロもベビーカステラ作る時はちゃんと食材を選んでね(笑) [一言] 通算1500話おめでとうございます! これからも楽しみにしてます!
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