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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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本当に優しい人だと思う

二話更新です。これは二話目なのでご注意を。
 手に触れる冷たい床の感触を、体で感じる温もりが上書きしていく。
 耳には微かにリリアさんの吐く息の音が聞こえ、その度に上下する胸の感触までありありと感じられる程神経が緊張している。

 心臓は信じられないほど大きく動き、それがリリアさんにも確実に伝わっている事を考えると、より一層恥ずかしくなってくる。
 ただ……感じる大きな心臓の脈動は、俺のものだけでは無い。
 リリアさんも俺と同様に緊張しているのか、触れている胸からはかなり早い鼓動を感じる。

 俺は現在リリアさんに覆いかぶさった状態で右を向いていて、リリアさんは俺とは逆方向を向いている為顔は見えないが、流石にここまで近くに居ると、呼吸の音まで聞こえてくるので落ち着かない。
 居心地が悪い訳ではないが、どことなく圧迫感のある沈黙を感じながら、俺は少し自分を情けなく思っていた。

 本当にいつもいつもリリアさんには迷惑をかけっぱなしで、偶に少しでも手伝いをと思ったらこの様……本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
 場を支配する沈黙がそうさせているのか分からないが、俺はなんともいたたまれない気持ちになりながら、湧き上がる思いを口にする。

「……リリアさん」
「は、はい!?」
「……いつも、迷惑ばかりかけてすみません」
「……え?」

 緊張した様子で俺の言葉を聞いたリリアさんは……何故か不思議そうな声を出してきた。

「カイトさんに迷惑をかけられた事なんて、ありましたっけ?」
「……へ?」

 それはからかったりしているような感じでは無く、本当に疑問に思っている声だった。
 ……なんでリリアさんは不思議そうにしてるんだろう? まさか、俺があまりに気絶させてしまったから、記憶喪失に!?

「……カイトさん?」
「ッ!? す、すみません」

 心を見透かされたようなタイミングで声をかけられ、反射的に謝罪する。
 するとリリアさんは、どこか楽しげに笑い声をあげる。

「ふふふ、どうしたんですか、カイトさん? さっきから、謝ってばかりですよ?」
「……いえ、ほら、俺って……わざとじゃないですけど、色々な方と知り合ったり、色々な事に巻き込まれたり、リリアさんを困らせてばかりだと……」
「そうですね。もう、本当にカイトさんにはいっぱい驚かされましたし、困らされましたし、心配させられましたね」
「うぐっ、すみません」

 改めて当人の口から感想を聞くと、申し訳なさもより大きくなる。
 三度謝罪する俺の言葉に、リリアさんは少しの間沈黙した後……優しい声で言葉を返してきた。

「……でも、それを迷惑だなんて思った事は……一度もありませんよ?」
「……え?」
「カイトさんの事を不快に思った事なんてありません。カイトさんのせいで不利益を受けたなんて思った事もありません」
「……なんで?」

 俺はいつもリリアさんには迷惑ばかりをかけていると思っていた。
 何度も気絶させてしまったし、泣かせてしまった事も沢山ある……だけど、リリアさんはそれを迷惑では無い、不快に思った事は無いと告げた。

「そりゃあ、カイトさんがもし悪意を持って嫌がらせをしてきてたり、私を困らせて楽しんでいたりするのであれば、不快に思ったかもしれませんが……そうでは無いのでしょう?」
「はい」
「なら、私がカイトさんを迷惑に思う理由なんてありません」
「……」

 この人は本当に優しすぎるほどに、優しい方だと思う。

「……驚いたり、怒ったりは……許して下さい。私も完璧な人間ではありません。怒る事もあれば、泣く事だってあります」
「はい」
「後、カイトさんには毎回困らされてます。ええ、本当に……せめて、もう少し間隔を開けてくれたらありがたいんですけどね。これでは私の胃が持ちません……体重も減った気がします」
「うぐっ、も、申し訳な――ッ!?」

 からかうような口調で俺への文句を口にし始めたリリアさんに、再び謝罪の言葉を発しようとした瞬間、リリアさんの手が俺の背中に回り、優しく抱きしめられた。
 先程までよりも深く密着し、リリアさんの心音を強く感じていると、穏やかな声が聞こえてくる。

「ですが……カイトさんの事を、好きか嫌いかと問われたら……好きだと答えますよ」
「……リリアさん?」
「……貴方は本当に困った人です。私を全然、冷静な公爵という仮の姿にしておいてくれない。無茶苦茶で、色々な意味で脅威的で……なのにいつも優しく、暖かく気遣ってくれる。そんな貴方を、嫌いになんて……なれる訳がありませんよ」
「……」

 それは嘘偽りなく、混じり気も無い本心からの言葉。
 リリアさんが優しく告げた言葉は、じんわりと暖かく心に染み込んできた。
 本当に俺を召喚したのが、この人で良かったと、心からそう感じる事ができ……幸せに近い感謝の感情が心に広がってくる。

「……まぁ、でも、少しは手加減して下さい。本当にいっぱいいっぱいなので……」
「善処します」
「……そこはかとなく不安な言葉ですね」
「……はは」
「……ふふ」

 どちらともなく苦笑する。どこか先程までよりリリアさんとの心の距離が近くなった様な感覚は、とても嬉しいものだった。
 謝罪の言葉より感謝の言葉を……そんな思いが胸に宿る。

「あの、リリアさん?」
「はい? なんですか?」
「「ッ!?!?」

 リリアさんにお礼の言葉を伝えようと、何の気なしに右を向いていた顔をリリアさんの方に向けると、まるで示し合わせたかのように、リリアさんも全く同じタイミングで顔を俺の方に向け……今までにない程近い距離で、目が合った。

「……り、リリアさん……」
「……カイ……トさん……」

 お互いの吐息を感じる程に近い距離。すぐにでも顔を逸らしたい程恥ずかしい筈なのに、吸い込まれるような青い瞳から目を逸らす事が出来ない。
 自然と口からはリリアさんの名を呼ぶ声が零れ、リリアさんも同様に俺の名前を呼ぶ。
 艶のある柔らかそうな唇、赤く染まった頬、そして動揺して揺れながらも、俺から逸らさない美しい瞳……そのどれもが、あまりに扇情的だった。

 1秒が永遠にも感じる沈黙が流れ……リリアさんは、そっと目を閉じ……その直後、足音が聞こえた。

「……あっ」
「「へ?」」

 声が聞こえ、目を開けたリリアさんと共に視線を動かすと……そこには、バツの悪そうな表情を浮かべたルナマリアさんが立っていた。
 どうやらリリアさんの予想より早くリリアさんが戻ってこない事に気がつき、探しにきてくれたみたいだ。

「……お邪魔のようですね。失礼しました……また『2時間程』経ってから戻ってきます」
「ちょっ!? ちょ、ちょっと待ってくださいルナ! 誤解です!!」
「……お嬢様にもようやく春が来たようで、このルナマリア、感涙を禁じ得ません」
「話聞いてるんですか!? 誤解です!! 早く助けて下さい!!」

 淡々と告げるルナマリアさんの言葉に、リリアさんは茹でダコみたいに顔を赤くして叫ぶ。
 しかし相手はあのルナマリアさんである。そこはもう当然の如く、リリアさんの怒声もどこ吹く風と言わんばかりに平然としている。

「……ミヤマ様、お嬢様は押しに弱いタイプです。強く頼めば、大抵のプレイには応じてくれますよ?」
「~~!?!?」
「おい、こら、駄メイド……」

 明らかにこの状況を楽しんでやがる……何でよりによって助けに来たのがこの人なんだか……こうなったらもう手段は選んでいられない。

「……ルナマリアさん、助けて下さい」
「そんな、御冗談を……お二人の愛を邪魔する等、私には……」
「助けてくれないと、クロに、ルナマリアさんに虐められたと伝えます」
「早急に救助させていただきます!!」

 狂信者モードへと即座に移行したルナマリアさんは、ものの数秒で俺達を助け出してくれた。

 一先ず怪我等は無かったが……リリアさんは救助されるなり、真っ赤な顔を両手で押さえ、物凄いスピードで倉庫から出て行ってしまった。
 確かにいくら助けてもらうためとはいえ、あの状況を見られたのは顔から火が出る思いだろう。

 倉庫の整理は後ほどルナマリアさんが手配してくれるとの事で、俺も倉庫から外に出て……まだ冷めない顔の熱を感じながら自室に戻る事にした。

 拝啓、母さん、父さん――ハプニングはかなり恥ずかしい目にあって収束した。凄く気疲れした気もするけど、それでもリリアさんの本心を聞けて良かったと思う。改めて実感したけど、リリアさんは――本当に優しい人だと思う。

















 顔を真っ赤にし両手で覆った状態で、リリアが自室の隅に座っていた。

「うぅぅぅぅ……ルナの、ばかぁ……」
「う~ん。非常に残念でした。後数秒遅ければ、リリの記念すべきファーストキスが拝めていたかもしれませんね」
「なぁっ!? だだ、だから、誤解だと言ってるじゃないですか!? わわ、私とカイトさんは、べべ、別にそういう関係では!?」

 からかうような口調で話しかけるルナマリアに、リリアは真っ赤な顔で必死に叫ぶ。
 そんなリリアを微笑ましそうに見つめながら、ルナマリアは再び口を開く。

「でも、もし、仮に……あそこでミヤマ様が、キスをしようとしたら……受け入れたんでしょう?」
「ッ!?!?!?」
「ふふふ、リリは本当に分かりやすいですね」
「る、ルナァ!!」

 ルナマリアの発言は図星だったのか、リリアは煙が出そうな勢いで元々赤かった顔をさらに赤くする。

「良いではないですか、私は前々から言っているでしょう? ミヤマ様は、恋愛運の無いリリにしては珍しく……『当り』だと」
「い、いや、で、でで、でも、かか、カイトさんの、気持ちとか、そそ、その色々ある訳ですし……」
「つまり、リリの方はまんざらでもないと」
「~~~!?!?」

 ルナマリアの言葉を聞き、リリアはもう限界といった様子で、言葉も発せず口をパクパクと動かす。
 そんなあまりにも分かりやすい主人を見て、ルナマリアは再び苦笑を浮かべた。

「……まぁ、その調子だと、進展するのには時間がかかりそうですけどね……意識し始めただけ、一歩前進という事で……応援してますよ」













リリアは可愛い(確信)
快人は爆ぜろ(願望)
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