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ベビーカステラの可能性を求めて⑩



 クロはどうやらオリビアさんにもベビーカステラの可能性について尋ねることに決めたみたいで、明るい笑顔を浮かべながらオリビアさんに話しかけた。


「オリビアちゃんは、ベビーカステラの新しい可能性を追求するにはどうすればいいと思う?」

「……??」


 クロが告げた言葉を聞いて、オリビアさんは明らかによく分かっていないような……「なぜそんなものを追求するのか?」といった感じの表情を浮かべていた。まぁ、気持ちはよく分かる。突然魔界のトップからそんなことを聞かれたら、そんな表情になるのも無理はないだろう。

 オリビアさんはそのまま少し沈黙したあとで、表情を戻してから口を開く。


「……そもそも私は、ベビーカステラを食したことがないので、分かりかねますし、さほど興味もありません」

「なっ!?」


 その言葉を聞いたクロは、心底驚愕したような表情を浮かべた。まるで戦慄したかのような、信じられないものを見たという感じ……そんなに意外か? そもそも、ここ来る前に「オリビアちゃんて食事するの?」的なこと言ってなかったっけ?


「そんな……ベビーカステラを食べたことがないなんて、なんて過酷な……くっ、いままで気づいてあげられなくてごめんね!」

「……いえ……そもそも、ベビーカステラが私に必要とも思えないのですが……」

「なんてこというの!? ベビーカステラは重要なんだよ! シロの大好物でもあるんだから!!」

「なっ、そ、そうなのですか!?」


 ベビーカステラがシロさんの大好物? 初出の情報が出てきたな……。


(とんでもない誹謗中傷を受けてる気がするのですが……クロの頭の中で私はどういうことになっているのですか?)


 あっ、やっぱりクロが勝手に言ってるだけか……本人からのクレームが入ったが、オリビアさんにとってシロさんに関わる事態は大問題であり先ほどまでとは明らかに違った真剣な表情でクロに向き直る。


「うん、間違いないね。なにせ、ボクがシロとお茶をする時はいつも必ずシロはベビーカステラを食べてるからね」


 クロとお茶をする時は必ずベビーカステラを食べている? 俺とお茶をする時はその時々だが……最初に会った時だけベビーカステラが出た。ワサビ入りのやつ……。


(それはそうでしょう。毎回クロが持って来てテーブルに置くのですから)


 うん。ああ、そうか……そりゃ、クロとお茶する時は毎回ベビーカステラを食べるわ。なにせクロが持って行ってるんだから……。

 だがしかし、そんなことは暴走するベビーカステラの悪魔には関係ないようで、すっかり脳内でシロさんの好物イコールベビーカステラの前提で話を進めていた。


「……つまり、ベビーカステラの可能性を追求することは、ひいてはシロのためにもなるわけだね!」

「なっ、なるほど……」


 そしてまたオリビアさんが真面目で素直なせいで、クロの言葉を鵜呑みにしてしまっているから変な感じになっている。おかげで俺の頭の中にシロさんからのクレームが届く始末である。


(快人さん、そこの頭の中までベビーカステラギッシリのクロに文句を言いたいので、私もそこに行っていいですか?)


 いや、止めてあげてください。マジで……俺やクロやオリビアさんはともかく、香織さんの胃が死んでしまいます。あと、いまお昼時で店内にそこそこ客いますし、確実に大騒ぎになるので……。


「……クロ、俺の頭にシロさんからのクレームが届いてるから、嘘を教えない様にって……」

「え~別に嘘を言ってるつもりは……うん? ボクの方にも念話が――は?」


 おそらくではあるが、俺に話しかけていたのと同じようにシロさんがクロにも話しかけ……ついでになにか挑発を入れたのだと思う。

 クロは基本温厚ではあるが、シロさん相手だと結構ムキになったり喧嘩したりすることもある。互いに認め合っている証拠でもあるのだが……いま明らかに空気が変わった気がした。


「……カイトくん、ボクちょっと出かけてくるね。すぐ戻るから……」

「ああ、うん。まぁ、ほどほどに……」


 喧嘩してくるらしく、転移で消えていったクロを見送ったあとで、俺はお冷を飲んで一息ついた。まぁ、少し喧嘩して来ればスッキリするだろう。とりあえず、シロさんが来るような事態にならなくてよかった。


「……ねぇ、快人くん? いま、何が起こってたの?」

「物凄くザックリ言うと、シロさん……創造神がこの店に来そうになってた感じですかね」

「サラッと怖いこと言ってる!? 止めてね、本当にやめてよ!! 私の胃が大変なことになるよ……三十路前なんだよ……体大事にしたいんだよ……」

「本当に申し訳ない。あ、でも、えっと、これまでの経験上……その、知り合いに胃薬について詳しい人がいるので、その人にいい胃薬聞いておきますね」

「いま、諦めたよね!? 遅かれ早かれ私の胃にダメージが来るのを確信して、ダメージをケアする方向に切り替えたよね!?」


 悲痛な叫びではあるし、大変申し訳ないと思うのだが……過去のリリアさんの件から考えるに、どうしても現状維持のまま進んでいくという未来が見えなかった。





シリアス先輩「さすがの快人も過去の実績があり過ぎて楽観視はできなかったか……まぁ、実際、どうあがいても胃痛な未来は避けられないのだろうけど……リリアが未来(さき)で手招きしてそう」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 香織さん、エデンさんが最強の胃腸薬くれるぞ
[一言] 更新お疲れ様です!連続で読みました! 香織さんの店でベビーカステラの事を聞いていたらオリビアさんが到着する! オリビアさんがベビーカステラ食べてない内容からシロさんからクレーム入る自体になっ…
[一言] 香織には胃痛の先輩(リリア)ですら胃痛の原因になるって発想はないのか… 香織さん強く生きてください
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