エイプリルフール番外編「エイプリルフール二日目」
「なっ、なにぃぃぃ!? ふっ、二日目だとぉぉぉ!?」
「……え? なんですか急に?」
シリアス先輩と一緒にお茶を飲んでいると、突如先輩は立ち上がって虚空に向けて叫び出した。いや、突拍子もない行動をするのはいままでもあったけど……いったいどういう状況だろう?
「た、大変だ快人!」
「う、うん?」
「エイプリルフール二日目が始まった!」
「……いや、意味がまったく分からないんですけど……」
なぜ唐突にエイプリルフール? なぜに二日目? そもそもいまはエイプリルフールではない。日本の季節に当てはめるなら11月ぐらいである。
いや、まぁ、シリアス先輩は特殊な空間にいるみたいだし、こっちとは時間の流れが違うのかもしれないが……。
「えっと、シリアス先輩の世界では今日はエイプリルフールなんですか?」
というか、エイプリルフールがある世界なのか?
「ああ、正確には昨日エイプリルフールだった。そして、私はエイプリルフールの日にだけ外に出られる……いままでは1日が終わると、自動的にあの部屋に戻っていたはずなんだが……」
「……いや、1日が終わるもなにも……そもそも、先輩さっき来たばかりじゃないですか?」
シリアス先輩が俺の部屋に現れたのは、せいぜい30分ほど前……少なくとも1時間は経過していないだろう。1日なんて全く経っていない。
いや、シリアス先輩の居る世界では時間の流れが違うという可能性もあるが……いままでの遭遇でも、普通に1日ぐらいはいたはずだし、短時間でいなくなったような覚えはない。
そのことを伝えると、シリアス先輩は少し考えたあとで、ハッとしたような表情を浮かべた。
「そ、そうか、これは……作中時間の法則か!?」
「……う、うん?」
「現実世界において時間が経過していたとしても、作中ではまだ1日が経過していない。思い返してみれば、いままでは、それなりに時間が経過していたが、今回は時間経過自体は控え目だった。故に、まだ、作中では1日経過していないということになる!」
「……えっと、つまりは?」
「エイプリルフール二日目が生まれる」
「いや、生まれませんよ」
まだなんか、そこまでの話は時空のズレみたいな感じで無理やり理解することはできた。でも、時空がいくらズレようがエイプリル―フールの二日目が生まれる結果にはならないだろう。エイプリルフールの翌日は普通に4月2日だと思う。
「ふっ、ふふふ、そうか、この法則を利用すれば私はもっと長くこちらの世界に留まることも可能!! 来たな私の時代、私の春が! エイプリルフールだけに!!」
「……」
なんかまぁ、よく分からないが楽しそうである。ともかくコロコロ表情が変わるし、突拍子もない行動をとるので見ている分には面白い方だ。
巻き込まれると、さっきみたいに分けわからんって状態になるが……そもそもシリアス先輩の存在自体、いまいちよく分からないので、その辺はもう深く考えないのが正解だろう。
そんなことを考えていると、俺の部屋の壁がいきなりスライドして、警察っぽい帽子を被った黒い猫の着ぐるみが現れた。
「おっと、悪だくみはそこまでです! これ以上は、エイプリルフール警察が見過ごさねぇっすよ!」
「なにやってんだお前……」
「おっと、私は???です。アリスちゃんではありません」
俺は「お前」としか言ってないので、もうすでにほぼ自供したようなものではあるが……。ともかくアリス……もとい???の出現で、シリアス先輩は驚愕の表情を浮かべる。
「なっ、なんだと、もう嗅ぎつけやがったのか!?」
「さぁ、大人しく部屋に戻ってもらいましょうか……」
「ぐっ、く、くそっ……ま、まだだ、まだ私の野望は……こんなところで……全人類シリアス化計画を諦めるわけにはいかないんだ!!」
いつの間に野望だとかそういう話になったんだろうか? 話の展開がジェットコースター過ぎる。あと、全人類シリアス化計画ってなに? 皆シリアスな顔になるとか、そんな感じなのだろうか? そして、エイプリルフール二日目とやらはどこへ消えた?
「……あ、アリ……いや、???。お前も、お茶飲むか?」
「あっ、いただきます。茶菓子は山盛りでお願いします」
「あと、小芝居する前に、その壁のスライド元に戻せ」
「は~い」
どうも全体的に雰囲気が緩いというか、野望がどうだと言いつつも全体的にギャグ寄りの空気感のせいで緊張感がない。
結局その後もよく分からないまま、シリアス先輩も席に戻って三人でお茶をすることになって、しばらく雑談を楽しんだあとでシリアス先輩は???と一緒に帰っていった。
……で、結局エイプリルフール二日目って何だったの!?
シリアス先輩(好感度MAX)「新たなる可能性を感じるいい機会だった」
???「結局全人類シリアス化計画ってなんすか?」
シリアス先輩(好感度MAX)「さぁ? ノリで言ったから……」
 




