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エイプリルフール番外編「あ(以下略)その4」



 その日は特に予定があるわけでもない日だった。何か切っ掛けがあったわけでもなかった。ただなんとなく、朝の目覚めがいつもよりよくて、気分よく起きられたことは覚えている。

 そして、朝食を食べ終えたあと部屋で紅茶を飲みつつ、さて今日はなにをしようと考えていたタイミングで、不意に視線の先に見覚えのある人が現れた。


「ふぁっ!? 今回は屋内? 部屋からでたのにまた部屋って……というか、出る場所ランダムなのか?」

「……」


 見た目で一瞬シアさんかと思ったのだが、直後の妙なテンションの台詞でシアさんではなく先輩だということを察した。

 シリアス先輩、なんか年に一回ぐらいの頻度で唐突に現れるシアさんそっくりの変な人である。


「……なんでいきなり俺の部屋に現れたんですか、先輩」

「うぉっ!? 快人じゃないか……あっ、てことはここは快人の部屋……ふむ。まぁ、どうせ最終的には快人に会いに行くつもりだったし、手間が省けて丁度いいか」

「適応力高い……」


 そして質問に答えてくれていない。いやまぁ、なんとなくさっきの独り言で例の年に一回だけ扉が開く部屋から出たらここに居たということらしい。

 というか、本来俺の家も転移阻害の結界はあるので転移はできないはずなんだけど……まぁ、何かシリアス先輩は法則が違うというか、変な感じの方なので、こちらの常識で考えるのは無駄かもしれない。なんか、変なヤバい神様とかも例の部屋に居るらしいし……。


「まぁ、せっかく来たんですし、お茶でもどうですか?」

「あ、ありがとう……お前も、なんだかんだで適応力高いよな」

「突発的な事態に慣れましたからね」

「分かる。なんか積みたくなくても、勝手に経験値が積み重なって落ち着いて対応できるようになってて、そんな自分がなんか嫌なんだよな」

「滅茶苦茶分かります」


 どうも、シリアス先輩もいろいろと巻き込まれる人みたいで、しみじみと語る言葉には重みがあった。基本的に一年に一度しか外に出られない部屋に居るはずだが、その部屋の中でいろいろなことが起きるのはどういう理屈か、その辺りを考え出すとキリがなさそうだ。


「あっ、そうだ。これ手土産」

「え? わざわざ、ありがとうございます」

「最近ホワイトチョコレートの像になることがあって、ヤバい神が私を溶かしてフォンデュしてたんだけど、余ったチョコがあったから成形して持って来た」

「………‥??」


 ちょっと待ってほしい。ツッコミどころが多すぎてどう反応したらいいか困る。まず、えっと……ホワイトチョコレートの像になることがあった? いや、ねぇよ! いったい何がどうなったらホワイトチョコレートの像になることがあるんだ!? 状況がまったくわからない。

 仮にそこを無理やり納得したとしても、次……ヤバい神の行動。チョコレートになった先輩を溶かしてフォンデュした? マジでヤバい奴じゃないか……そして、先輩は先輩でなぜ平然としているのか? 例のギャグ補正能力とかの影響だろうか?


 そして最後に、余ったチョコがあったから成形して持って来た……いやいや!? どこまでの話が全部事実だとすると、自分の体が解けたチョコレートを型に入れて固めてお土産に持って来たってことじゃねぇか! どう反応すればいいんだ。


「あ、私の体から出た砂糖とかシロップもあるけど、それもいる?」

「……先輩、質問していいですか?」

「うん?」

「なんで、チョコレートになったり、砂糖が出たりシロップが出たりするんですか? 先輩って、どういう生物なんですか? ああ、シリアスの化身とかってのは抜きとして……」

「……さぁ? そこんところだけど、私にもよく分からない」

「先輩自身が分からないんじゃ、どうしょうも無いですね!?」


 体から砂糖やシロップを生成して、チョコレートになったりするシリアスの化身? いやむしろ、話を聞く限りだと糖分の化身のような気もするんだけど……。


「な、なんというか……先輩もいろいろ大変なんですね」

「お前のせいでもあるけどな!!」

「……なぜに?」

「お前がいちゃいちゃすることで、私がそういう目に合うんだ! 止めろとは言わないけど、もう少し頻度を落として欲しい……マジで」

「……」


 えぇぇぇぇ!? 俺がいちゃいちゃすると、シリアス先輩が砂糖出したりチョコレートになったりするの? さっき以上に訳が分からなくなってきたんだけど……いや、だって、そこに別に何の因果関係もない気がする。


「……あっ、もしかして、ここまでの話って全部冗談だったりします?」

「冗談だったら……よかったなぁ」

「あっ、これマジなやつだ。う、う~ん。けど、俺がいちゃいちゃすることと、シリアス先輩の体が変化することに何の因果関係が?」

「さぁ、分からん」

「そこ、分からんと言われちゃうと、俺はもうどうしようもないんですが……」


 本当になんと言うか、よく分からない独特な人である。呆れる俺の前で椅子に座ったシリアス先輩は、チョコレートの箱や、和菓子などが入った箱をテーブルの上に置く。

 この和菓子とかも、シリアス先輩の体から出たもので作ってるとかじゃないよね? だとしたら、食べにくいなんてレベルの話じゃないんだけど……貰ったチョコレートも、マジックボックス内に封印するつもりだし……。


「まぁ、せっかく年に一度の機会だし、分からないことを話すより有意義に過ごしたいね」

「……まぁ、そうですね。せっかく来たんですからゆっくりしてください。茶菓子とかも用意しますね」

「優しいっ……好き――はっ!? その程度で私を攻略できると思うなよ!」


 感極まったような表情から一転して食って掛かってくる先輩……うん。このテンションの激しい乱高下はまさしくシリアス先輩って感じである。

 なんだかんだで、もう数回あっていることもあって、結構慣れてきたかもしれない。いろいろ変なところがある人ではあるが……まぁ、悪い人ではないんだよなぁ。


「……ところで、先輩。今回は、シリアス探しとやらはいいんですか?」

「………‥明日から頑張る」

「それやらないやつですよね?」


 明日には例の部屋とやらに帰っているはずだし……まぁ、実際シリアス探しと言いつつも、毎回やってるのは観光なので、いつも通りといえばいつも通りである。




シリアス先輩(好感度MAX)「……ふっ、お茶をしたあとゲームしたりいろいろ遊んできてやったわ。あくまで私が遊んでやっただけで、攻略されたわけでは無いがな。あと、タイトルのやる気の無さよ……」

???「……えぇ、さすがの私も『私を食べて(物理)』にはドン引きなんすけど、好感度極まってるじゃねぇっすか」

シリアス先輩(好感度MAX)「誤解を招くような言い方はやめろ!!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 私から出たシロップ
[良い点] 私を食べて(物理的に)と言うとは…さすがシリアス先輩。他の恋人じゃ出来ないことをしてあげることができるなんて [一言] こっからまた1年間あとがきに幽閉されるってなると泣けてくる
[一言] 僕の顔をお食べ? それはなんてアンパンマンだろう。
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