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同郷の家を訪ねて①



 重信さんへのお土産に関しては、ネピュラが作ったペアの湯呑みと日本茶にすることにした。日本茶の茶葉に関しては、ラズさんが栽培しているものがあったのでそちらを分けてもらった。

 そして重信さんの家に遊びに行く日となり、葵ちゃんと陽菜ちゃんと共にフライングボードの大会に参加したハイドラ王国の辺境に再びやって来た。

 あの時とは違って大きな通りでも人はまばらで、全体的にのんびりした雰囲気である。


「フライングボードの大会の時はかなり雰囲気が違いますね」

「むしろ、あの時だけ賑わってたんだろうね。これが平常って感じかな? のどかでいいね」


 陽菜ちゃんの言葉に答えつつ周囲を見渡してみれば、多くの田畑が広がる緑の多い景色がなんともいい雰囲気であり、この辺りは米の栽培も多いため日本人である俺たちにとっては、思い描く田舎のイメージのような雰囲気だ。

 重信さんに貰ったメモを頼りに道を進むと、田畑の多いエリアにポツポツと家があり、その中に日本家屋のような建物が見えた。


「あっ、たぶんアレかな?」

「日本家屋ですし、きっとそうですね。重信さんも見ればすぐ分かるって言ってましたし、その通りでしたね」


 確かに葵ちゃんの言う通り、異世界で日本家屋というのは非常に分かりやすい。屋根も瓦造りだし、かなり拘りを感じる建物である。田舎の一軒家という雰囲気で、一階建ての建物……う~ん、ああいう家もいいなぁ。


「そういえば、結局お土産は快人先輩に任せちゃってすみません」

「いや、俺もネピュラとラズさんから譲ってもらっただけだしね」

「有田焼風の湯呑みを作ったんでしたっけ? ネピュラちゃんは、本当に多才ですね」


 ネピュラの作ってくれた湯呑みは、本当に星空みたいに綺麗で、見た目も素晴らしい。外から見てもいいんだけど、湯呑みの中も小さな銀河が入っているみたいで、覗き込むと引き寄せられるような美しさがある。さすがは、ネピュラというべきで俺も本当に鼻が高い思いである。


 そんなことを考えつつ家を目指して歩いていると、事前にハミングバードで連絡していたおかげか家の前に見覚えのある男性……重信さんが立っているのが見えた。

 重信さんもこちらに気付いたようすで、軽く手を上げてくれた。


「こんにちは、重信さん。今日は、招待していただきありがとうございます」

「ああ、わざわざ辺境もできてもらって悪かったな。道に迷ったりはしなかったか?」

「ええ、問題なく」

「そりゃよかった。まぁ、立ち話もなんだからな、三人とも上がってくれ」


 重信さんはそう言って笑顔を浮かべて俺たちを家の中に招き入れてくれた。玄関で靴を脱いで上がる日本式のスタイルが少し懐かしい気もする。

 そして、重信さんに案内されて居間に通される。ブロッサムさんの妙な日本知識で作ったものとは違って、こちらはいかにも畳張りの居間という雰囲気だ。むかし、行った岡山にある母さんの実家もこんな感じの家だったので、ちょっと懐かしい。


「いらっしゃい。どうぞ、好きなところに座ってくださいね」


 そんな声が聞こえて振り向くと、お茶の乗ったお盆を持った優しそうな女性が現れた。暗めの茶髪を首の後ろでシンプルにまとめた40代ぐらいに見える綺麗な女性で、おそらく重信さんの奥さんだろう。


「ああ、紹介するよ。女房のハンナだ」

「初めまして」

「あ、初めまして、宮間快人です」

「楠葵です」

「柚木陽菜です」


 簡単に自己紹介をして、大き目のちゃぶ台の周りに置かれた座布団に座ると、ハンナさんがお茶を俺たちの前においてくれた。麦茶っぽい感じだ。


「あっ、そうだ。こちらお土産に持って来たので、よかったら……」

「うん? わざわざ、土産を持って来てくれたのか、気を使わせちまって悪いな。ありがとうよ……こりゃまた、いい箱だな?」

「いえ、俺の家に居る精霊の子が作った湯呑みと友人が栽培している日本茶です」

「そんないいものを? いや、本当に悪いな……どれどれ、どんな湯呑み――は?」


 苦笑しつつお土産を受け取った重信さんは、木造りの箱を開いて湯呑みを取り出して、驚愕したように目を見開いた。

 あれ? なんだろうこの反応? なんか葵ちゃんも大きく目を見開いてるけど……あれ? ネピュラが作ったものだから、別に貴重ななにかとか言うわけでは無いんだけど……。


「おいおい、これ……曜変天目か?」

「い、いえ、でも茶碗じゃないですし……いやでも、内側に光が当たると虹色の光彩が見えます。けど、こっちの世界で作られたものだから、曜変天目とは言えない気も……でも、この色合いは凄すぎます」

「……葵先輩、曜変天目ってなんですか?」

「湯呑みというよりは茶碗なんだけど、天目茶碗の最上級のもので、省略するけどかなり厳しい条件があって、それを満たして曜変天目と認められるものは日本にも3つしか存在しない上に、どれも国宝に指定されてるって……ともかく物凄い焼き物に、そっくりなのよ」

「えぇぇ……」


 なんか、おかしい方向に進んできたぞ? 日本の国宝でないことは確かだ。なにせネピュラが作ったわけだし……ネピュラは「光の反射などによる見え方も完璧に計算して作りました」と当たり前のように言っていたけど、重信さんと葵ちゃんの驚きようから見るに、それって物凄い技術なのでは……。





シリアス先輩「なんかそう言えばいっぱい作ったとか言ってたけど……茶碗も作ってそう。国宝級の品をポンポン作るのは、さすが絶対者」

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― 新着の感想 ―
[良い点] さす絶対者
[一言] 様式美
[一言] 正確には世界に3点しか現存していない日本の国宝ですね、残りは全部割れちゃってるから。
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