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献身の怪物の変化・中編



 寝湯での入浴を終えたあと、快人とイルネスは一度体をタオルで拭いて、隣接している休憩室に移動していた。備え付けのバスローブを身に纏って、髪をタオルで巻いた快人が興味深そうに室内を眺める。


「へぇ、こんな部屋があるんですね」

「はいぃ。適度に休憩しつつ~入浴を楽しむためのものですぅ」

「確かに入りっぱなしだとのぼせちゃいますし、かといっていろいろ楽しむには時間も必要なので、休憩を入れながらってのはいいですね」

「入浴で汗をかいていますのでぇ、飲み物を用意しますねぇ」


 休憩室の設備を使って、アイスティーを用意しつつ、イルネスは思考を巡らせる。


(カイト様の~この様子ですとぉ、休憩を終えた後にもう少し入浴する可能性がありますねぇ。あまり遅くなり過ぎない様にだけぇ、注意しないといけませんねぇ)


 そんなことを考えつつ飲み物を用意して快人の前に置き、イルネスは向かいの席に自分用の飲み物を置いて座る。ここまでの流れで、快人がイルネスだけを立たせておくことを良しとせず、同じように席に座ることを促してくるのは分かり切っていたからだ。


「ふと、疑問に思ったんですけど……」

「はいぃ?」

「イルネスさんって、常に仕事している様に思えるんですけど、休暇とかって取ってます?」

「はいぃ。お嬢様も~その辺りにぃ、気を使ってくださっているのでぇ、今日も休暇ですねぇ」

「なるほど……うん? 今日も休暇?」


 快人の印象としては、イルネスは本当にいつでも屋敷で見かける気がしていた。ルナマリアやジークリンデなどは、たびたび見かけない日もありそういう日は休暇であるというのが分かることがある。

 ジークリンデの場合はリリアの屋敷に住んでいるので、休日でも見かけるのだが、彼女の場合は仕事中はベルフリードやリンドブルムと一緒に居させているセラスと、休日はほぼ一緒に居るので、肩にセラスを乗せているかどうかで判別しやすいというのもある。


 しかし、イルネスに関しては、ネピュラと共に休憩しているのは最近見るようになったが、丸一日見かけないなどということはなかった。


「え? じゃあ、いま、休みなのに仕事をしてるってことですか?」

「いいえ~カイト様のお世話に関してはぁ、好きでやっていますのでぇ、仕事とは言えませんよぉ」

「……う、う~ん」

「いまに関して言えばぁ、むしろ~ほぼ入浴しているだけなのでぇ」

「……そう言われると、反論は難しいですね」


 たしかに現状は快人が頻繁に誘っていることも影響しているが、イルネスは一緒にリラックスルームを楽しんでいるような形であり、仕事をしているのかと言われれば微妙だった。

 しかし釈然としないというか、働きづめではイルネスが心配だという表情を浮かべている快人を見て、イルネスは苦笑する。


「誤解されているようですがぁ。普段も定期的に~休んでいますよぉ? 正しくはぁ、分体が仕事をこなしてぇ、本体が休んでいるというべきですかねぇ」

「え? あっ、だからいつでもイルネスさんを見かけるんですね」

「はいぃ。私が外出する際などもぉ、屋敷には分体を残していますぅ。これでも伯爵級ですのでぇ、私と同じぐらいの能力を持つ分体もぉ、何体かは作れますしねぇ」


 イルネスも伯爵級最上位の実力者であり、アリスほどではないが分体も作り出すことはできるため普段からそれなりに利用している。

 というより彼女の場合は幻王配下の幹部も兼任しているので、ひとりではさすがに時間が足りない部分もあるため、分体は活用している。


「よく仕組みが分からないんですけど、分体の疲労とか怪我とかってフィードバックされたりしないんですか?」

「ないですねぇ。基本的に~分体はぁ、魔力の塊ですぅ。情報などを共有することはできますがぁ、身体のダメージなどがぁ、本体に影響することはありませんねぇ。アリス様のような世界トップレベルの実力者になればぁ、そういった実際に肉体を持った分体も作れるかもしれませんがぁ、私にはできませんねぇ」

「なるほど、まぁ、イルネスさんが休めてるなら……よかったです」

「お気遣いいただき~ありがとうございますぅ」


 そう言ってイルネスが微笑むと、快人はふとなにかを考えるような表情を浮かべて沈黙し、少しして口を開いた。


「……イルネスさん、質問なんですが……本体が居ない時は分体を屋敷に置いてるってことは、やろうと思えば屋敷とかの仕事が滞ることなく、遠出とかもできるってことですか?」

「はいぃ。実際にぃ、六王祭の時にも~魔界までで出向きましたのでぇ」

「あっ、そういえば、そうでしたね……ってことは、いままで仕事の多さと責任のある立場に気を使ってたけど、誘おうと思えばある程度日程が必要なこととかも誘えるってことか……」


 イルネスの言葉を聞いた快人は、イルネスに聞こえないような小さな声で呟くが……圧倒的な能力を持つイルネスには、その小さな声も普通に聞こえていた。


(おやぁ? おやおや……これはぁ……もしかしてぇ、期待したりしてもいいのでしょうかぁ?)


 快人と遠出したいと思っていたイルネスにとって、思わぬところからその機会が巡ってきており、彼女にしては珍しく期待に胸が少し高鳴っていた。


シリアス先輩「おいおい、あまり次に繋がるフラグを立てるなよ? 死者が出るぞ?」

マキナ「えっと、台本? なになに……誰が死ぬって?」

シリアス先輩「私だ!」

マキナ「そうなんだ? でも、別に簡単に蘇生できるから大丈夫だよ」

シリアス先輩「……違う、そうじゃない……」

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― 新着の感想 ―
[一言] 分体を使った複数のイルネスさんによるお世話という可能性が… そんなの母性の過剰摂取で昇天してしまう
[一言] 嬉しさで目を見開いてるイルネスを見てみたい、絶対かわいい
[一言] なら六王組とか仕事分体にさせてもっとカイトに絡んできてそうやな
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