魅惑のリラックスルーム⑧
リラックスルームの風呂にやってきた。本当にスーパー銭湯とか温泉ランドみたいで、どこから入ろうかワクワクする。
隣には水着姿のイルネスさん。かなり意識してしまうが、あくまでイルネスさんは入浴のサポートに来てくれており、その効率のために水着を着ているだけ……けど、いまさらだけど、入浴のサポートってなにをするんだろうか?
「カイト様ぁ、初めはどちらから行きますかぁ?」
「あっ、そうですね。最初は……入浴前に体を洗いたいですね」
「かしこまりましたぁ。こちらへ~どうぞぉ」
やはり風呂に入る前には体を洗ってからという思いが強いので、最初はシャワーなどが置かれている場所に移動する。
ここも普通に広いというか、複数人が同時に利用できるぐらいのサイズがある。
「では~こちらにおかけくださいぃ」
「はい……え? えっと……イルネスさんが洗ってくださるんですか?」
「はいぃ。サポートですのでぇ」
「な、なるほど?」
入浴のサポートとは体を洗うことも含まれるらしい。ま、まぁ、確かに昔は銭湯とかにもそういう背中を流してくれるサービスとかもあったらしいし、定番ではあるのかな?
おかしいな? 普通に洗ってもらうだけのはずだし互いに水着も着ているのだが、変にドキドキするのはなぜだろうか?
「それではぁ、洗いますねぇ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「痒いところなどがあればぁ、教えてくださいねぇ」
そう言ってイルネスさんは優しい手つきで背中を洗い始めた。マッサージの時も思ったが優しいのにしっかり気持ちがいいというか、力加減が絶妙で本当に上手いとそう感じる。
イルネスさんはそのまま背中を綺麗に流してくれたあとで、優しい声で告げる。
「次はぁ、髪も洗いましょうかぁ?」
「じゃあ、お願いします」
「はいぃ」
髪も洗ってくれるみたいで、これもまた美容院の様に上手い。まぁ、そもそもイルネスさんには普段から髪を切ってもらっているので、その際にも頭を洗ってもらっているのでこれは慣れている。
「はいぃ。綺麗になりましたよぉ」
「ありがとうございます。じゃあ、次は俺がイルネスさんを洗いますね」
それはほぼ無意識からの発言だった。なぜそんなことを口走ったのかは分からない。緊張していたところから背中と髪を洗ってもらってリラックスしたせいで気が緩んでいたのかもしれない。
もちろん口にしてすぐ失言には気づいた。だが、気付いたからといってどうすればいいのか? やっぱり嘘ですとか、冗談ですとか言えるわけもない。
配置的にイルネスさんの顔は見えないが、沈黙が重い……いきなり変なことを言い出して引かれてしまった可能性が……。
「それではぁ、お言葉に甘えさせていただきますねぇ」
「……え? あ、はい」
……あれ? アッサリ受け入れてくれた? いやいや、イルネスさん……さすがにそれはガードが緩すぎる気がするのだが……。
い、いや、それだけ俺を信頼してくれていると受け取ろう。ま、まぁ、とはいえ体を洗うだけ、過去に混浴で経験もある……今回はさらに水着も着ているし大丈夫だ。
「それではぁ、こちらに座ってよろしいですかぁ?」
「……だ、だだ、大丈夫です」
あっ、駄目かもコレ……思ったより破壊力ある。水着は着ている。間違いなく着ているが……なんか、逆にえっちに見えるというか、水着状態の相手を洗うというシチュエーションがなんか特殊なせいで、必要以上に意識してしまっている気がする。
とはいえ、このまま固まっているわけにも行かない。うっかりとはいえ言い出したのは俺なのだ……。
「じゃあ、洗いますね」
「よろしくお願いしますぅ」
緊張しつつも、スポンジでイルネスさんの背中を擦る。なんか、スポンジ越しなのにイルネスさんの肌がスベスベなのが伝わってくるみたいな感じだ。
水着の紐には当たらない様に気を使いつつ、背中を洗っていく。イルネスさんの身長的に俺も座った状態で洗っているが、ポニーテールにしているからうなじとかもはっきり見える。
なんと言えばいいんだろうか、純粋に……綺麗だなぁとそう感じる。仕事もできて優しくて美人……本当にイルネスさんは凄い人である。そんな相手がこうして背中を現せてくれるぐらいにこちらを信頼してくれていると思うと、なんだかくすぐったくも心地よい気持ちというか、ありていに言えば嬉しかった。
「くひひ、私が~サポートするはずがぁ、お世話になってしまっていますねぇ」
「たまにはいいじゃないですか、イルネスさんにはいつも本当にお世話になっていますし、機会があればこうしてお返ししたいものです。これがお返しになっているかどうかは分かりませんが……」
「少なくとも~私はぁ、カイト様のその気持ちがぁ、嬉しくて~幸せですよぉ」
「そう言ってもらえると、俺も嬉しいです」
緊張はまだあるが、それでもイルネスさんが喜んでくれているという気持ちが伝わってきたおかげか、少しだけリラックスできた気がする。本当にこの程度がお返しになっているかは疑問ではあるが……またなにか、改めてイルネスさんには日頃の感謝を伝えたいものである。
シリアス先輩「……(いちゃいちゃしやがって! というか、止めろこの狂神!! 平然と食おうとするな)」
マキナ「……火で炙ったら溶けるかな?」
シリアス先輩「……(溶かそうとするな!? ???、早く止めろ! お前の親友だろ!)」
???「いや、チョコレートの声とか聞こえないので止めれないっすね」
シリアス先輩「……(聞こえてるだろコイツ!?)」




