魅惑のリラックスルーム⑦
とりあえず、目の前で着替えるのはアレだったので、俺はロッカーの裏に回る形で着替えを行った。渡されていた水着はトランクスタイプの水着だったので、着替えるのは簡単だった。
そして着替えを終えて戻ると、イルネスさんも着替え……服を脱いで水着になっており、見た瞬間思わず硬直してしまった。
まずそもそもとして、イルネスさんが水着になっているというシチュエーションが極めて珍しい。普段はかなり露出の少ない服のイルネスさんだからこそ、ギャップが強烈である。
しかも来ているのは黒色のビキニというシンプルながら目を引く水着であり、なんというか冷静でいるのが難しかった。
イルネスさんは身長的にはかなり低い。それこそ130㎝ほどであり、失礼な言い方かもしれないが小学生のような小柄な身長ではある。
本来そんな身長の女性が水着姿でいると、背徳感というかそういうものを強く感じるようなイメージだが、イルネスさんからはそんな感じはまったくしない。
むしろ大人っぽい色気と魅力をこれでもかというほど感じる。落ち着いた雰囲気や上品な佇まいがそうさせるのかもしれないが……なんか、とにかく綺麗なのである。
「……あ、えっと……その、イルネスさん。水着が凄く似合ってて、綺麗ですね」
「くひひ、お褒めいただき~ありがとうございますぅ。始めて着たのでぇ、少し不安でしたがぁ、問題なさそうでよかったですぅ」
「え? 初めて?」
「はいぃ。普段着る機会はありませんしねぇ」
言われてみれば、海に遊びに行ったりしない限り水着を着用することはないかもしれない。俺にしてみると、学校の授業で水泳が合ったり、海でのレジャーなどの印象があって水着もそれなりに馴染み深いものではある。
しかし、この世界では人によってはまったく水着に関わらない可能性もあるだろう。実際イルネスさんは2万歳を越えているが、初めての水着という話だし……。
まぁ、そもそも泳ぐにしても魔法があるので服を濡れないようにもできるだろうし、イルネスさんクラスになると泳ぐ必要があるのかも不明だ。シロさんがやっていたみたいに空気の球体を作って水中を移動したり、水の上を歩行するのも可能だろう。
「あれ? でも、それだと……もしかして、今回のために水着を?」
「はいぃ。参考資料を見ながら~作るのにぃ、少し時間がかかってしまいましたのでぇ、お待たせさせてしまう形になりましたぁ」
「……あ、さっき作ったんですね」
リラックスルームの準備に時間がかかるというのは、水着着用がルールであるため水着を作るまでの時間がかかるという意味だったのか……。
いやでも、こうしてみると凄い……日にまったく焼けてない綺麗な白い肌、決して大きくはないが小さすぎもしない膨らみの胸、スラっとした綺麗な足……ちょっと刺激が強すぎるほどに綺麗である。
「しかし~これほど肌を見せるのはぁ、初めてなのでぇ、少し~気恥ずかしいですねぇ」
そう言って微かに頬を染めて微笑んだイルネスさんの魅力に思考が吹き飛ばされるような思いだった。コレは反則ではないだろうか? 普段大人っぽくて落ち着いているイルネスさんが、ほんの僅かに見せた照れ顔の破壊力たるや筆舌に尽くしがたいものだった。
「それではぁ、中に参りましょうかぁ」
「え? あ、は、はい! 行きましょう」
「カイト様ぁ、もしかして~緊張されていますかぁ?」
「え、ええ、水着姿のイルネスさんが魅力的すぎて……」
「おやぁ?」
「……あっ」
ちょっと待て、いま俺なにを言った? 冷静さを取り戻さないままに、滅茶苦茶恥ずかしいことを口走った気がするのだが……。
いまさら後悔しようとも口から出た発言は消えない。も、もしかして引かれてしまったかもしれないと、そんな風に思いつつゆっくりイルネスさんの方を向くと、イルネスさんはどこか嬉しそうに笑っていた。
「カイト様はぁ、私に~女性としての魅力を感じてくださっているのですかぁ?」
「え? そりゃ、イルネスさんは綺麗で大人っぽくて……女性として凄く魅力的だと思いますよ」
「くひひ、そうですかぁ……少し~意外でしたぁ。ですがぁ、それはそれで~嬉しいですねぇ」
そう告げるイルネスさんの表情はやはりなんというか、上品さと美しさを兼ね備えていて、大人の女性というのを強く感じる印象だった。
恋人もできて女性との接し方にも慣れたつもりではあったが、どうにも変にドキドキしてしまう。雰囲気としてはジークさんが一番近いのだが、ジークさん以上に大人っぽいというか……やっぱりこう、憧れのお姉さん感が強い。
風呂に入る前からこんな状態で大丈夫なのかと思いつつ、なんとか下半身に血が集まったりしない様にとだけ必死に頭の中で考え続けていた。
???「やっぱり、カイトさんはパンデモニウム相手だと憧れって感情が強いんすよね。憧れの年上のお姉さんの普段は見せない姿を見てタジタジになってる感じがありますね。ただ、節々から女性として強く意識してる感じはするので、脈はありますね。パンデモニウムが誰に対しても優しいのと、こういう状況でも落ち着きすぎてるせいで、恋愛対象として見られてない感は覚えているのでしょうけど……」
マキナ「……なるほど、ところでシリアス先輩ホワイトチョコレートの像になっちゃったね?」
???「1話持たなかったっすね」
マキナ「……服までホワイトチョコレートになるのは、いったいどういう原理なのか……もぐもぐ」




