魅惑のリラックスルーム⑥
休憩室でゆっくり休んだあとはお風呂である。岩盤浴も気持ちよかったが、やはり湯につかりたいという思いはあるものだ。
しかし、ジャグジーもいいしアロマ風呂も捨てがたい。
「ちなみにイルネスさん。ジャグジーとアロマ風呂以外にも何かあるんですか?」
「はいぃ。アリス様に伺った話ですと~高濃度炭酸泉、寝風呂、電気風呂、超音波風呂、打たせ湯、足湯などがぁ、あるそうですよぉ」
「……想像以上にいっぱいあった!?」
本当に温泉ランドみたいな場所だ。高濃度炭酸泉はその名の通り、高濃度の炭酸で疲労回復効果の高い風呂。寝風呂は寝転がることのできる風呂で、これもまた悪魔的な気持ちよさだと思う。
電気風呂はたしか腰痛とかに効果があるんだったかな? 超音波風呂はたしかマイクロバブルバスとかそんな感じのやつじゃなかったかな? ジャグジーとの違いはあまりよく分からないが、気持ちいいのは間違いないだろう。
打たせ湯は滝みたいになっている風呂、足湯はそのまま足湯……なんて充実のラインナップ。
「……迷いますね。全部入りたいぐらいです」
「可能だと思いますよぉ。全て~おなじフロアにありますのでぇ、風呂巡りなどもできるかと思いますぅ」
「え? あっ、そうなんですね。それなら、ひとつに絞る必要もありませんね」
「実際に見て見ると~分かりやすいと思いますのでぇ、ご案内しますぅ」
イルネスさんに案内されて風呂があるエリアに移動すると……そこはかなり広い空間で、何種類もの風呂があった。というか、見た目は完璧にスーパー銭湯とか温泉ランド的な感じである。
これならいろいろなお風呂に入れるし、素晴らしい。もっと早くこの場所の存在を知りたかった……ああでも、これだけの数のお風呂を準備するとなると、イルネスさんにも負担だろう……利用するのは時々にしておこう。
「カイト様~こちらが更衣室ですぅ」
「更衣室も広いですね」
「アリス様曰く~水着で利用するのがルールとのことなのでぇ、水着をご用意いたしましたぁ。こちらをご利用くださいぃ」
……一瞬、なぜ? と思ったのだが、少し考えてみるとなんとなく理解できた。この広さに岩盤浴も複数あったし、部屋なども広い。
たぶんこの空間は俺ひとりではなく、たとえば恋人とかと一緒に利用することも想定しているのだろう。少なくとも、アリスは機会があれば俺と一緒に利用するつもりなのだと思う。
だが、いうまでもなくアリスは恥ずかしがり屋であり、主にアリスの自爆……もとい、俺が原因ではあるが混浴に若干のトラウマもある。
だから、ここでは水着着用というルールを作ったのだろう。
後さらにここからは完全に俺の推測ではあるが、本当はもっと早くこの場所にはアリスが俺を誘ってくるつもりだったのではないだろうか?
アリスは伝えるのを忘れていたと言っていたが、本当は一緒に行く際にサプライズで見せようと思っていたので内緒にしていたと考えるとしっくりくる。
ではなぜ、家が出来てからいままでの間それなりの日数が経っているのに、俺が知らないままだったのかを考えると……アイツ、水着着用であっても尻込みしやがったな。海に行った際も肌の露出を極限まで減らしてた奴なのであり得る話である……う~ん、また今度俺の方から誘ってみるかな? アリスから誘いがかかるのを待ってたら、いつになるか分からないし……。
そんなことを考えていると、直後に耳を疑う言葉が聞こえてきた。
「それではぁ、私も準備をしますねぇ」
「……え? イルネスさんも?」
「はいぃ。お風呂でもぉ、いろいろと~お世話をさせていただきますぅ」
「……なるほど」
落ち着け、宮間快人。イルネスさんの言葉には他意はなく、俺がリラックスできるようにサポートするという意味だ。お世話という言葉に邪な想像をするな、人として最低だぞ。深呼吸をして頭をクリアにするんだ。変な事は考えない……変なことは考えない……よし、これで大丈夫…‥。
「――って、イルネスさん!? なにしてるんですか?」
「はいぃ? 着替えをしようかと思いましてぇ」
「え? いやいや、ここでですか?」
冷静になろうとしていたが、来ていた服を脱ごうとしているイルネスさんを見て、必死に冷静になったはずの頭は一瞬で沸騰した。
いったい何が起こっている!? り、理屈は分かる。イルネスさんは風呂場でも俺のことをサポートしてくれる。しかし、風呂場にいまのままの恰好では服が濡れて動きにくいだろうというのは……頭では理解できるが、状況に思考が追い付かない!?
「事前に下に水着を着ていますのでぇ、大丈夫ですよぉ」
「あ、ああ、そうなんですね。さすが、イルネスさんは準備がいいですね」
……いや、「だからよし!」とはならないんだけど!?
シリアス先輩「ぐあぁぁぁ、た、耐えろ……4月になりさえすれば……桜餡に切り替わるから……」
???「いや、だから大丈夫とはならないっすよね!?」
マキナ「……ホワイトチョコレートと桜餡……アリかも」
???「こっちはこっちで、食うこと前提に話進めてますし……」
 




