魅惑のリラックスルーム③
リラックスルームにて、イルネスさんがいろいろとお世話を担当してくれるということが分かり、ある意味では安心ともいえる。
これが例えばルナさんだとかアリスだとかだった場合は、悪ふざけが来ないかと警戒してしまうし、イータやシータであるなら力加減を心配してしまうが、イルネスさんに関してはその辺りはまったく問題ない。手間をかけてしまって申し訳ないとは思うが、間違いなく「気にしないでくさい」と返ってくるので、また改めてお礼はすることにしよう。
「……あ~俺あんまりマッサージの種類とかは知らないんですが……」
「ではぁ、今回は~お疲れでしょうしぃ、疲労回復を目的としたマッサージはぁ、いかがでしょうかぁ?」
「疲労回復ですか? それはよさそうですが、そういうのもあるんですね」
「はいぃ。強く揉み解すのではなく、血行の促進やリンパを整えるのを主目的としたマッサージですぅ」
「では、それをお願いします」
「かしこまりましたぁ」
疲労回復を目的としたマッサージというのは、まさに今の状況に適していると言える。俺はイルネスさんに促されてマッサージベッドにうつ伏せに寝転ぶ。
「それではぁ、始めますねぇ」
その声と共にイルネスさんの手が俺の背に触れ、優しく撫でる様に手が動かされた。血行の促進と言っていたように、背中全体に流れを作るような動きで非常に優しい力加減だ。
言っていた通り揉み解したりということはしないのだが、それでもところどころに絶妙に力を込めてくれるので、もの凄く気持ちがいい。
痛気持ちいいとかではなく、ただただ極楽というべきかじんわりと体が温かくなるマッサージ。少し風呂に入っているような感覚に近く、なんとも眠たくなってくる心地良さである。
このまま眠ってしまいたいとも思うし、同時にこの気持ちいいマッサージの最中に眠ってしまうのは、それはそれで勿体ないような気もした。
「……こういう本格的なマッサージって初めてですけど、気持ちいいですね」
「気に入っていただけたようならぁ、なによりですぅ。次は~体を仰向けにしてくださいねぇ」
「あ、はい」
指示に従って仰向けになると、イルネスさんは再び肩辺りから優しく撫でる様にマッサージを続けてくれる。これもまた非常に気持ちいいのだが、これはこれで何というかうつ伏せだった時とは違って、変にドキドキする。
なんでだろう? イルネスさんがマッサージしている姿が見えるからだろうか? 普段より格段に薄着の状態で優しく体に触れられているので、イルネスさんの手の感触がよく分かるからかもしれない。
その上、イルネスさんもこうしてみるとそこそこの薄着であり、そこを気にし始めてしまうと変に意識してしまう。
とりあえず、変なところに血が集まったりしない様に天井に視線は向けておこう。現状の流れで足のマッサージに移行されると、非常に危険である。
「私はぁ、特に気にしませんがぁ?」
「な、なな、なんのことでしょうか?」
「くひひ、なんとなく~考えていることが分かりましたのでぇ」
「う、うぐっ……」
この世界にきてさんざん言われたことではあるが、俺は顔に出やすい。そして、イルネスさんほどの察しの良さが合いまったら、なにを考えているかなど手に取るようにわかるのかもしれない。
……なんか、どえらい羞恥プレイを受けた気分である。
ただ幸いなのは、イルネスさんはそういったことを弄ってきたりするような人ではなく、一言告げて微笑んだあとは特にその話題に触れたりすることはなくマッサージを続けてくれた。
「少し~顔に触れますねぇ」
「あ、はい」
そう断りを入れて、イルネスさんは俺の顔に触れてマッサージを続ける、なんかエステの広告とかで見る顔のマッサージである。コレもまた結構気持ちいい。
特に頬の上……目の下のあたりとか、解れている感じがしていい。
続けて頭のマッサージに移行したのか、それまでよりは少しだけ強めにマッサージをしてくれて、そのあとで優しく頭を撫でられた。
「……うん? 最後のはなんの効果が?」
「ただ~撫でたかっただけですぅ。お嫌でしたかぁ?」
「あ、いえ、そんなことはまったく。むしろ、心地よかったですし」
「それはよかったですぅ。ではぁ、もう少しだけぇ~」
優しく頭を撫でられながら聞こえてくるイルネスさんの声……なんとも凄い包容力というか、本当に気持ちがよく、マッサージも含めて癖になってしまいそうだ。
シリアス先輩「な、なんて恐ろしいやつだイルネス……ただ、マッサージしているだけで、この空気……こ、これからどうなるんだ……風呂もあるんだぞ……」




