表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1450/2408

決勝レース④



 激戦の決勝レース、森林地帯を越えて街が見えてきた。辺境の街ということもあってか、大きな建物は時計塔のみで、チェックポイントは分かりやすい。

 ただ、ゴールである湖の方向的に、時計塔をポールの様にぐるっと右に回りつつ通過する形になる。


「……もう少し、前のブラックマスカットが曲がり始めたら、加速しますよ」

「うん、よろしく」

「高度は、いまの高さでよさそうですね」


 ここが勝負所であり、加速した中でしっかりとコントロールができるかが重要だ。集中しつつその時を待つ……蛇行しながら街の上空を飛びつつ、前を行くブラックマスカットに意識を集中する。

 そして、ブラックマスカットが大きく右カーブしつつ、チェックポイントを目指すのが見えた。


「快人さん! 行きますよ!」

「ああ、頼む!」


 ここで葵ちゃんが速度を操作、フライングボードが一気に加速する。大きく曲がっては駄目だ。このスピードで出来るだけ最短で曲がる。

 右を力いっぱい押しつつ、ところどころで進路の変化に合わせて方向を調整する。なんとかうまくコントロールできており、加速したフライングボードはブラックマスカットに並ぶ。


「なにっ、ここで、仕掛けてくるだって!? そのスピードで曲がり切るつもりか!?」


 さすがのブラックマスカットも、このリスクの高すぎる攻めは予想外だったみたいで驚いていた。確かに、このスピード……ほんの僅かにでも変な方向に動けばチェックポイントを通過できないだろう。

 ほぼ賭けのようなものだが、この角度なら……行けるはずだ!


 そんな願いが通じるように、フライングボードは予想外の動きをすることは無く、想定通りの角度でチェックポイントを通過する。

 そして同時にブラックマスカットを抜いて俺たちがトップに立った。


「よし、このまま行こう! 葵ちゃん、魔力は?」

「まだ大丈夫です。たぶん、一度私たちを抜いたブラックマスカットや、岩山地帯で仕掛けたスカーレットブルーも同じぐらいの魔力量のはず……このスピードで、なんとかギリギリゴールまで持つぐらいです」

「先輩たち、高度は少し下げます……あっ、2チームもスピード上げてきてます!」


 コントロールに気を使っているので後ろを見る余裕はないが、陽菜ちゃんの言葉通りなら2チームもスピードを上げてきたみたいだ。

 おそらくこれが最後の攻防だ。ここからゴールまでは、技術の勝負といっていい。いかにフライングボードをコントロールして、可能な限り真っ直ぐに飛ばせれるかが勝敗を分ける。


 ただ、いい感じだ。ゾーンに入ったとでも言うべきか、直感的な操作でかなりフライングボードをコントロールできている気がする。


「陽菜ちゃん、後ろはどう?」

「ちょっとずつ引き離せてます! 快人先輩の方が、小さい揺れで真っ直ぐ飛ばせてますよ!」

「快人さん、大変だと思いますが、このまま頑張ってください」

「ああ、葵ちゃんも魔力管理を、陽菜ちゃんは後方の様子の確認をよろしく」

「「はい!」」


 もうゴールに向けて高度の調整は終わっているので、陽菜ちゃんには後方の2チームを注視してもらって、俺は前だけを見てフライングボードをコントロールする。

 葵ちゃんの魔力管理も信頼しているので、間違いなくこのスピードを維持したままゴールまで行けるはずだ。


「ッ!? 快人先輩!! 右から風が吹きます!」

「……分かった!」


 陽菜ちゃんの叫びに呼応するように、瞬時に風に対抗するために右方向に強く操作する。これがまたタイミングも強さもドンピシャであり、逆に風のおかげで横揺れがほぼ無く真っ直ぐに飛行できた。

 我ながら上手くコントロールできたものだと誇りたいし、葵ちゃんの魔力管理や要所要所の状況判断もよかった。陽菜ちゃんの直感にも非常に助けられたので、本当に誰が欠けてもこの結果は無かっただろう。

 まさに三人で協力したからこその……。


『いま、1位がゴールを通過!! 決まりました!』


 俺たちのフライングボードがトップを譲ることなくゴールを飛び抜け、大きな歓声が沸き起こった。


「……やった」

「……やりましたね」

「やりましたよ! 先輩! 私たちの勝ちです!」


 ガバっと後ろから俺と葵ちゃんを両手で抱える様に陽菜ちゃんが飛びついてくる。顔を見るまでもなく、嬉しそうな笑顔が浮かんでいることを察することができた。

 こうして俺たちの初めてのフライングボード参加は、激戦の中で見事に優勝という最高の結果につながった。





シリアス先輩「ば、馬鹿な……私はシリアスの化身で……あっ、そそ、そうだ! 私はシリアスの化身でありつつ、シリアスを観測する者! そういうことだよな、全知の神!! な? そうだと言ってくれ!!」

マキナ「…………ソウダヨ」

シリアス先輩「違いそうな反応!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です!3話続けて読みました!快人さん達の周りの様子を伺いながらのレースが楽しかった! 力合わしてのレースは楽しい!そして優勝おめでとう! 次も楽しみに待ってます!
[良い点] 空飛ぶ競技で風が判るってチートなんだな… [一言] シリアスの化身なら激甘展開で砂糖の柱になってすき焼きの材料になるなんて身体はったギャグやるわけない ましてやその後すぐ復活するとなれば……
[良い点] こんぐらちゅれーしょん! 操作と風で加護の力働いてたとはいえ、いい結果である [一言] いえ、シリアス先輩はギャグの化身です
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ